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treasure seeker  作者: 草葉 影野
《過去編》03 光も差さない場所で。
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《過去編》 3 誰かの声が、聞こえる……

過去編の暗いめ担当? 登場しましたという話。すいません、次からライトの子供の頃の話です。

  もう何日、お日様を見てないだろう?

  もう何日、風の声を聞いてないんだろう?


 ここ、ずっと、検査が続いている。

 昨日まではお姉ちゃんも一緒だったけど、今朝からはボク一人になった。


 早く終わらないかな?

 早く、外に出たい。


 この部屋は、明かりは点いているのに、どうしてかな? 暗いんだもん。

 研究員の人達も、みんな同じ手術用の白衣を着て、だまって作業を続けてる。

 誰も、何も、喋らない。

 まるで機械みたいに、唯、作業を一つひとつこなしていくだけ。



『この被検体だけが、何故精霊との契約もなしに精霊魔法を使用出来るのかは、未だに解明不能なのか?』

『―――依然、不明です。糸口すらまだ。まぁ、まず、答えは出ないでしょう』

『まるで人の形をした入れ物に、“才能”と言う名の泉が湧いているようですよ』

『全くだ。未だに術刀とのシンクロ系数は天井知らずと来てる』

『そろそろ壊れかかってる姉と違って安定剤が全く不要なのはいいが、ここまで来ると我々の最高傑作と言っても気味が悪い……』



 終わらない検査中、ブザーの音が鳴り始めた。


 研究員の人達が、急にざわざわし始める。

 緊急放送が聞こえる。

 あちこちに跳ね返ってて、良く、聞こえないけど。

 何を言ってるかは、分かる。



 そう。



『実験体が脱走した。“処理者”の出動を要請する』

 って、言ってる筈。


 だって、“処理者”っていうのは、ボクの事だから。

 もうすぐ、ボクはこの検査の部屋から出されると思う。



 実験体を「処理」するために。





 手足を堅いベッドに縛り付けてた皮のベルトが外される。

 クラインって言う名前の、一番偉そうな人が、とってもイヤそうな顔でボクに装置を渡す。

 腕時計のお化けみたいなそれを、ボクはまだベルトの跡が残ってる手首に巻き付ける。


 そして、ボクは名前を呼ぶ。


「行くよ、こくりゅー」


 そうすると、ボクの友達が装置から出てきてくれる。

“こくりゅー”は、術刀っていう強い武器の、意識。


『気分はどうだ、カイリ』

「あんまり、よくない。だって、一週間くらいお日様みてないし」

『……そうか。お前はまだ、5歳だというのに』

「いいよ。もう。早く、終わらせなくちゃ」



   *  *  *



 床が、冷たいな。

 廊下は、ひんやりしてる。

 ぺたぺた、音をたてながら歩いていく。


 ボクには、「彼」が何処にいても、分かる。

 匂いみたいに“気”が、伝わってくるっていうのかな?

 他の人は、そんなの分からないって言うんだけど。

 だからボクは、迷うこともなく「彼」の所へ行ける。


『そろそろ近いな』

「うん。」


 ……その角を曲がると、居る。

 さっきまで聞こえていた銃声がやんでる。

 撤退したのかな。―――――それとも。


 べちょり、べちょり。


 独特の音が聞こえる。

 さっきから感じてる「彼」の“気”の大きさだと、かなり体の大きなヒトの筈。

 気の大きさと個体の大きさは、必ずしも比例する訳じゃ、ないけれど。

 今まで、大体がそうだったから。


 でも。

「彼」は、違ってた。


 自衛班のバラバラになった体をくちゃくちゃと音を立てて食べているその姿は、殆ど普通の人間と変わりがなかった。


 -ダレダ オマエハ-


 頭の中に直接声が響いた。


「……ボクは、カイリ。

 たぶん、君の後に造られた実験体だよ」


 -ナニヲ シニキタ?-


「君を、“処理”しに。

 君が外に出て動いてると、たくさん困る人がいるんだって。

 だから、“処理”しなくちゃいけないんだって」


 -オマエミテェナ ガキニ、

  オレガ コロセルカッ!

  オマエモ コイツラミタイニ クッテヤル!-


「―――――ボクだってっ!

 好きで、こんな事、してるんじゃないってば……。

 元居た所に帰ってくれるんだったら、それで良いって…………」


 -ダレガ、アンナ トコロニ モドルカッ

  「かんせいたい」ノ オマエニハ ワカンネェンダロ?

  アソコガ、ドーユー バショナノカ ナンテヨォ。

  ダイタイ オレガ ナニカ ワルイコト シタカ?-


「自衛班の人達、食べちゃったじゃないか」


 -『だれ』ガ ソンナ フウニ シタンダ?!

  オレガ タノンダノカッ?!

  『だれ』カガ カッテニ ソウシタンダローガヨォッ!!-


『カイリ、あまり話すな』

「で、でも……」


 -オレ ダッテ コノヨニ ウマレタンダッ

  オレダッテ“イノチ”ダ!

  オマエモ オレモ オナジ“イノチ”ジャ ネェノカッ!!!-


 痛い。


 そう思った瞬間、こくりゅーが飛び出していた。


「あ、こくりゅ……」


 こくりゅーが、「彼」の胸を貫いていた。

 白く変化した血がボクを濡らす。

 慌てて駆け寄ったけど、「彼」はもう事切れていた。


「こくりゅー! どうしてっ!?」


 少し後ろにいるこくりゅーを振り返った。


『あれ以上話しても、お前に苦痛をもたらすだけだ。

 お前自身が割り切ったと、切り離していると思っている本当のお前自身を、更に傷つけるだけだ』

「……そんなこと、ないよ。」

『だとしたら、今お前が流す涙の理由はなんだ?』


 ―――――!


 ボクは、泣いていた。


『お前は、優しすぎる。悲しいくらいに、優しすぎるのだ。

 私は―――お前を護る為なら、何をも省みない。

 例えそれが、お前の望まぬ事でも、だ』


 こくりゅーの言葉が痛かった。


 ボクが「かんせいたい」じゃなかったら、ボクも「彼」みたいに殺されていたのかな。

 何が違うんだろう。

 ボクも「彼」も、同じように造られた人形なのに。

「彼」の言うように、何も違わない同じ“イノチ”なのに。


 ボクは、いつまで同じ“イノチ”を、狩り続けなくちゃいけないんだろう。



 たすけて、誰か……。

 もう殺さないでいいよって、言って―――――。



『カ、カイリッ?! しっかりしろッ!! カイリ――――!!』


 こくりゅーの声が遠くに聞こえる。

 気が遠くなる。



『待ってて……』



 誰?



『絶対逢いに行くから、それまで待ってて』




 君は誰?



 いつも聞こえる、優しい声。

 君は、一体誰? 何処にいるの?


 逢いたいな、君に。

 逢えるかな? いつかは。


 ボクが、押しつぶされない内に。

 ボクが、壊れてしまう前に―――――。

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