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treasure seeker  作者: 草葉 影野
現在編.02 出逢い ポンコツ遺跡荒らし編
29/89

2-12 事の顛末。

また新しい仲間が増えました、という話。

 船に戻ったライトを待っていたのは、客人として滞在している“自称”トレジャーハンターの今後の身の振り方。


「あ、あのさ……もし良かったら、この船に乗せてくれないかな?」


 まさか、黒装の魔女の言葉を真に受けてるんじゃないだろうな。

 その時の事を思い出し、俺の顔は酷い(しか)めっ面になったらしい。


「ライト、顔々」


 シェーラが苦笑しながら注意してくる。


「やっぱ、ダメかな?」


 上目遣いに俺の表情をチラ見しつつ、様子を窺っている。


「―――――理由は?」

「えッ?!」

「理由も無しに、船に乗せる事は出来ない。それなりの理由があるなら、聞いてから俺が判断する。

 ―――タダメシ喰いを増やす訳にもいかないんでな」


 アイシャはその場にいるこの船の乗組員をぐるりと見渡した。

 ライト。

 言わずと知れた“黄金の調停者”でこの船の主。若き英雄でもある。

 シェーラ。

 妖精族の女の子。ライトの活動のサポート役。聞いた所によると、怪我を治す能力があるらしい。

 ケルベロス。

 この船の頭脳。お説教臭いらしいけど居なくちゃ絶対に困る。

 去月。

 ……全身完全黒尽くめの超アヤシイ奴。出たり入ったりしてる。でもご飯はメチャクチャおいしかった。

 しまった。アタシ、出来ることあるっけ? 腕が立つ訳でもない。料理だって殆どしたこと無い。洗濯や掃除も苦手。本職と定めたトレジャーハンターだって、賢者さん曰く“迂闊(うかつ)で残念”なんて評価。


「で、でも……賢者のオバサンが言ってたからッ!

 今からは幸せになれるように、探したいの……『何か』を!!」

『フッ……どうやらこの船には「何かを探す者」が集うらしい。

 ―――良いのではないか? 何も出来ないと言うなら、雑用でもやって貰えば構わないだろう』


 なんと、アイシャにとって思いがけない方向から援護射撃が来た。

 去月だ。


「雑用、ねぇ……。今でも何とかなってるしなぁ。シェーラはどう思う?」

「わ、私は、別に構わないわよ……? その、二人とも出ちゃうと、私一人じゃままならないコトだって、いっぱいあるし……」


 歯切れは悪いが、珍しくシェーラも賛成のようだ。


『ライトにしても、今でこそ英雄だが、そもそもこの船に乗り込んですぐはまだ小さな子供だったのだ。どうせ出来る事などほぼゼロで、雑用から始めた筈だぞ。“誓約”さえ守るなら、問題なかろう』

「せいやくって何?」


 去月が言った言葉の意味をライトに確かめる。しかし、当の本人はバツが悪そうに頭を掻いていて。


「―――――あーもー、これだから、俺の事情を知ってる奴が居るのは困るんだよなぁ。

 は~、しょうがない。一回しか言わないぞ?

『知っての通り、宇宙は弱肉強食の厳しい世界だ。幾ら仲間だと言っても、いつもいつも助けてやれるとは限らない。俺達に出来るのは精々、自分の身の守り方を教えてやれるくらいだ。

 それから、この船では“働かざる者喰うべからず”がモットーだ。自分の食い扶持(ぶち)は自分で稼ぐか、それが出来なきゃ船内で何か仕事を見付けろ。

 ゲストじゃない者が遊んでいるなら、俺は即刻叩き出す』

 この条件を呑むなら、ティンカーフィッシュ(この船)にクルー登録してもいい。

 ―――どうだ?」


 ライトの言葉に、拳を握り締めて頷く。


「う、うん! アタシ、頑張るから!! 迷惑掛けないように頑張るから!!」


 決意を込めて宣言したというのに、何故かライトは突然吹き出した。


「……え? 何? アタシ、ヘンなコト言った?」

「いや、違う違う。アイシャが言った言葉が、シェーラがこの船に乗る時に言った言葉そのまんまだったからさ。つい、ね」

「え、わ、私、そんな風に言ったんだっけ?! は、恥ずかしぃ……」

『それを言うなら、お前が言った言葉も似たような物だったがな? ライト』


 シェーラは真っ赤になって顔を両手で覆い、ケルベロスからはツッコミが入る。


「はいはい。最初の言葉なんて、そうそうバリエーションないっつーの。似てくるのも当然ってな。

 てか、いい加減そんな昔の事は忘れろよな~。メモリ容量の無駄だぞ」

『フン。大きなお世話だ。それにこの間忍者の里で滞在中に大規模なデータの圧縮を行ったから、まだまだ空きがある!』

「は? 何だそれ、いつの間に?!」


 ライトには初耳だ。


『何だ、あれは独断だったのか?』


 さも意外そうに去月が聞いた。ケルベロスは憤懣(ふんまん)やるかたない様子で返す。


『別に、いちいち許可を得るような事でもあるまい。危うくスクラップになるかも知れなかったのだぞ?! 何らかの成果でも無ければ、行った甲斐(かい)がないではないか!!』

「あのー、少しも話が見えないんですけどォ。去月、もしかして、お前の仕業?」

『私はケルベロスに頼まれてセク課の……いや、そちらの専門家へ仲介しただけだ』


 去月もあくまで淡々と説明する。


「お前ら、いつの間にそんな仲良くなってる訳? つーか、俺の事助けてくれた人もそうだけど……ケルベロス、最近ちょっと手懐(てなず)けられ過ぎじゃないか?」

『手懐けるとは失礼な! そもそもお前の態度が悪すぎるのが原因だろうが!!!』



「あーぁ、また始まっちゃった~」

「何が?」


 やれやれと言った様子で遠巻きにライト達を眺めながら、シェーラがため息をついていた。

 新入りほやほやのアイシャが不思議そうに話しかける。


「えっとね、ライトとケルベロスのケンカ……って言うか、コミュニケーションって所なのかなぁ?

 何だかんだ言って、仲は良いしね」

「ふぅ~ん。あ、アレか、ケンカするほど仲が良いってヤツ???」

「そうかもね。……私はまだ、あそこには行けないのかも」


 シェーラは何だか寂しそうに二人と一匹? を見つめている。


「え、でも……シェーラってこの船に乗ったの、去月……さん、よりも先だったんだよね?」

「うーん。半年くらい、早かったかなぁ。実はそれまで生まれた森から出た事なんてなかったから、ティンカーフィッシュ(ここ)での生活に慣れるまで時間掛かったのよね~」

「森からいきなし宇宙船じゃあね~。

 てゆーかアタシもさー、妖精なんてココ来て初めて見たからびっくりしちゃった。

 ドールが動いてる!! って思ったもんなー」


 そう。妖精種はあまりにも閉鎖的で希少な為、彼らをモデルとしたファションドール……所謂“着せかえ人形”が発売され、人気が出て(ちまた)に溢れかえり、女児向けの定番玩具となってしまった現在では、そちらの方が余程見掛ける事が多い、という事態になっている。


「まぁ、そのお陰で服とか助かってるんだけど……。何処行っても、ドールに間違われちゃうんだよね~。

 そう言えば、ガンフじいちゃんにも最初お人形だって思われたっけ」


 しみじみと思い出に浸っているシェーラだが、彼女が口にしたのはごくフツーの一般人、アイシャにとってはかなり驚愕の名前だった。


「ガンフ??? ん? ガンフって、まさか、あのガンフ・ウル・グルンザ?!」


 驚きのせいか目を丸くしているアイシャに、シェーラは小首をかしげていて。


「え、うーん。確かそんな名前だったかな~、あのおじいちゃん?」

「ちょちょちょちょ、ちょっと待って!! ガンフ・ウル・グルンザって言ったらこの宇宙でも一,二を争う名工よ?! アタシでも名前知ってるくらい超有名人なんだから!!

 ―――賢者のオバサンといい、名工ガンフといい、おまけに忍者って……ライトって、思ってたよりすっごい知り合いばっかりね!!

 も、もしかして、シェーラも実は何かスゴかったりして???」

「私は別に、何にも無いよ? ライトと出会ったのだって、ホントに偶然だったんだもん」

「へー、そうなんだ~。それ聞きたい! そういやさっき、去月さんが言ってたよね?

『この船には何かを探す者がつどう』って。シェーラは何を探してんの?」


 妙に興味津々なアイシャにせがまれて、シェーラはそう遠くもない思い出を話し始める―――。

次からまた過去編になります……。暫くお付き合いください。

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