《過去編》 2-1.出逢いと別れと旅立ちと -1-
幼いディー達の住む田舎町に、三英雄が立ち寄った話。
その日、この小さな田舎町は朝からざわついてた。
アクティブコンダクターとしてゆうめーな『三英雄』の船が町に立ち寄ったから。
あ、アクティブコンダクターってゆーのはその、冒険者っつーか、賞金稼ぎつーか、そんなカンジの仕事をしてる人達のこと。
……なーんて言うと、柄の悪い犯罪者一歩手前みたいなのを想像するかも知れないけど、『三英雄』は全然違うんだ。
たくさん、人の為になる事をしてるし、弱い人には限りなく優しい。
週刊誌なんかにも良く載ってて、とっても格好いいんだ。
そーだ、『三英雄』のプロフィール、俺が教えてあげるよ。つっても、本とか新聞とかの受け売りだけどさ。
まず、リーダーのリョウヤ・ヒイラギ。
写真なんか見ると、すっごいガタイの良い人で、年も若いらしいんだけど武器とか乗り物の知識や扱いは完璧で、しかも格闘技もめちゃくちゃ強いんだって。
んで、二人目は女の人。
シェリル・ブラウエン。この人は、すっげ―――――――――美人! ……なんだけど、特技は「大食い」で、趣味が「アイドルのおっかけ」。なんだかなぁ。
でも、この人もそこら辺に居るような男なんかじゃ、全然かなわないくらいの武道の腕を持ってるんだって。
最後が、スタン・オーベルシュタイン。魔法使い。
人は彼のこと「獄炎の魔導士」とかって呼んでるらしい。何でも、炎の精霊魔法を使わせたらちょー一流ってやつなんだって。彼を怒らせた人はケシズミ(?)も残らない、なーんて怖い噂もあるくらい。
でも、写真みるとすっげーガキなんだ。身長なんか俺の方が高いんじゃないかなぁ……。
って、こんなとこかな。そんで、その有名人に俺も会いに来たんだ。
「やっぱり、帰ろうよ~」
こいつ、隣で情けない声出してるフレッドと一緒に。
「何でだよー。一番最初に会いに行こうって言い出したの、フレッドじゃないかー」
そう、言い出しっぺはフレッドだったんだ。
いつも引っ込み思案の、大人しいこいつが、朝っぱらから新聞もって部屋に飛び込んできたんだ。
「ねぇねぇ、ディー!! 『三英雄』に会いに行こうよ!!」
そん時俺はまだ半分居眠ってたから、何言ってるのか分かんなかった。昨日は牧師様を手伝って、遅くまで片付けをやってたし、フレッドが来たのはまだまだ全然早い時間だったし。
「……さん、えーゆー? なにそれ……くいもん?」
「もぅ! ちゃんと起きろよっ!
ディー、前に好きだって言ってただろ? 『三英雄』!!」
パジャマの襟を捕まれてがっくんがっくん揺さぶられる。
「ふわぁっ! は、はなせっ起きたってばっ!!」
「……あ、ゴメン。それよりコレ見てよっ!」
……のは良いけど、ぐらぐらする……。
って、何なんだよー、一体……え?
「……『さんえーゆー、まちにきたる!』?!
さんえーゆーって、あの三英雄?!」
この町のローカルなニュースしか載っていない典型的な地方紙の一面は全段ブチ抜きで、デカデカと文字が踊っている。
「……そうだよ、さっきから言ってるのに。鈍いなぁ、ディーは」
「すげぇ!! すっげぇよ!! 本物なんだよな?
こんな田舎に来るなんて、信じらんないよー!!」
『三英雄』ってのは、もー、スーパースターなんだ。
TVの中のアイドルとかなんかより、ずっとずっと上だもん。
「これ、今日なのか? なぁ、フレッド、今日の何時なんだよぉ?!」
「落ち着いてちゃんと記事読めよなー。
今日の午後2時、中央広場で簡単な挨拶があるらしいよ」
もう隅から隅まで読んでいるらしいフレッドが、『えっへん』って感じで教えてくれる。
「そっかー、2時かぁ~。2時だったら牧師様に言って出掛けられるよな?」
「うん。 ……実は、そう言うと思って僕とディーと二人で出掛けますって、もう牧師様には言ってあるんだっ」
な、何て手際の良い奴……。
そう言えば、フレッドって段取りとかするの得意だよな。
みんなの中でも一番、頭良いし。
「そんじゃあ……そーだなぁ。昼飯喰ったら出かけよっか?」
「そうだね」
……てな感じで、のんびり中央広場に来たんだけど。
甘かった。見渡す限り、人、人、人また人っ!! 俺達なんかまだチビだから、全然見えねーんでやんの…。下手したら、揉みくちゃにされちまいそうになる。
で、さっきのフレッドの弱音になる。
「もう、帰ろうよ、ディー……。こんなトコからじゃ全然見えないし、諦めようよ」
「やなこったっ!! 折角三英雄にあえるんだぞっ?
今日諦めたら、二度と無いかも知れないじゃないか!」
「だけど……挨拶してるみたいだけど、全然聞こえないし……」
はぁぁぁぁ。
確かに話し声みたいのは聞こえるんだけど、音量が小さすぎるし、人のざわめきが大きすぎるから何言ってるのか全然分からない。
結局。最後まで三英雄なんかちらっとも見えないし、挨拶の内容なんかちーっとも聞こえなかった。
すっかり人の引いた中央広場の、端っこにある水飲み場で俺達は途方に暮れていた。
「帰ろうよ、ディー。もうすぐ夕ご飯だよ?」
フレッドがすっかり落ち込んでる俺に話しかける。
「ねぇ、ディー……。そりゃあ会えなかったのは僕も残念だけどさぁ」
俺の顔、のぞき込んでくる。
「いい加減帰らないと、牧師様やみんなが心配するよ?」
…………。
「ディー?」
「よし、決めた!!」
「え?」
いきなり大声で言ったからかな、フレッドの奴ビックリしてる。
「三英雄の船、何処に泊まってるか分かるか?」
「え、えーと、……そうだなぁ。
三英雄の船はかなり大きかった筈だから町の空港には入らないだろうし。
たぶん東の荒れ地の方にそのまま泊まってるんじゃないかなぁ」
確かじゃないけど、と言いながらフレッドは結構自信ありそうだ。
「俺、行ってみるよ。三英雄の船を見に、さ」
「船を見にって……え、ええ~~~っ?!」
「そんな驚くなよ~。だって、せめて船ぐらい見て帰らないとさ。みんなに自慢できねーじゃん。
……その、お前にまで付いてこいなんて言わないしさ」
って言ったら、フレッドは急に怒り出す。
「何でそんな事言うのさっ。僕も、絶対一緒に行くからねっ!」
普段弱気なフレッドとは思えないくらいきっぱりと言い切る。
大人しい奴ほど、怒った時とかは怖いって言うけど、ホントだなって思っちまった。
「ディーは、いつもそうだっ! 何でも自分一人でしようとする! 僕たち、親友だろ?」
「……ゴメン。じゃあ、遅くなって牧師様に怒られるのも二人一緒な?」
「うんっ!」
俺達は肯き合うと、荒れ地目指して走り出した。




