表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
treasure seeker  作者: 草葉 影野
現在編.01 出逢い 忍者の里にて~去月編
11/89

1-9  新しい相棒

えーと、本気で言ってます? な話。

 お館様との面会が叶ったのは、あれから三日後の事だった。

 前回と同じように、カクヤ君に庵まで連れて行って貰うと、今回はクロサワさんではなく去月(さりづき)が立っていた。


「あ、……元気?」


 何となく間抜けな挨拶をしてしまった。しかし、何と言って声を掛けた物か、思いつかなくて。


『フッ。普段も面白い男なんだな』


 などと、真っ黒尽くめの見るからに怪しげな(やから)に返されてもなぁ。


「そうだ、一つ聞いても良いか?」

『何だ?』

「―――ソレって、仕事着なのか?」


 相変わらずの生身も見えない黒装束の事を聞いてみる。


『まあな。しかし今ではあまり使わないタイプの物だ』


 いきなり妙な質問だったかと口にしてから思いもしたけど、あっさり(こころよ)く答えてくれるなんて、意外とこの去月ってヤツ、見た目より(……って、顔は分からないけど)取っつきやすい、イイ人なのかも知れない。


『さ、お館様がお待ちだ。早く中へ入るがいい』


 俺は深く頷くと、靴を脱いでお館様の待つ部屋の中へと入っていった。




 二度目の対面は、とてもうち解けた物だった。

 何というか、亡くなった兄弟の話を親戚のお爺さんから聞いているといった感じ、だろうか?

 実際の所、俺自身親戚とかってものに縁がないからちょっと違うかも知れないけれど。

 思い出話が一段落した頃、お館様が突然切り出した。


「さてさて……、のうエルズワース殿。折り入って話があるのじゃが」

「……な、なんでしょう?」


 それまでの和んだ雰囲気から一転、妙に改まった感じで話しかけられて、思わず俺も抜いていた肩の力を戻して居住まいを正した。


「実はのぅ、お主に頼みたい事があってのぅ」

「―――俺に出来る事なら。無茶やって助けていただいたご恩もありますしね」

「ふむ、そう言うてくれるなら、こちらも気を揉むこともないかの……。

 頼みというのは、ほれ、さっきも会ぅたじゃろう? 去月の事なのじゃがな」


 今も庵の前で警護しているであろう、黒尽くめの男を思い出す。


「え、ええ。その去月……さんが、何か?」

「お主の旅に、去月を同行させてはくれんか?」


 ……。


 ……。


 ……。


「―――――は?」


 咄嗟(とっさ)にお館様が言ってる意味が掴めない。


「いや~、その、無理に、とは言わんが。やはり、ダメかのぅ……」


「あ、いや、そのっ、ダメとか無理とか、……って、そーゆー問題なんですかッ?!」


 慌てまくる俺を後目(しりめ)に、ご老人は至って飄々としたもので。


「そーゆー問題じゃよ?」

「いや、でもだって確か、”ツキモチ”ってゆーのは、お館様直属のエリート戦闘集団なんだってリョウヤから聞いた事有りますよ?!

 そ、そんな立場に居るヒトを、俺なんかの旅に、ど、同行だなんてっ?!」

「”ツキモリ”じゃよ、エルズワース殿。

 アレは月護(ツキモリ)の中でも一番年若くてのぅ、もう少し外の世界を見せて置いてやりたいんじゃよ。

 とは言え、ポンと放り出す訳にもいかんし……そう思っておった所に丁度お主が来てくれたんで、正に『渡りに船』というヤツじゃ。

 ―――やはり、ダメかの?」


 なんだかノリが軽い? 俺は、今まで持っていた『忍者組織最高責任者』というイメージが、ガラガラと音を立てて崩れていくのを感じた。

 脱力している俺にお構いなく、お館様はさっさと説明を始める。


「まぁ、こちらの任務もやらせんと変に勘ぐる者も居るじゃろう。それにアレはその実力で『月護』にまで登りつめた男じゃから、アレにしか出来ん仕事も少なくはない。

 そんな訳で、常にお主にべったり張り付いたりはせん。

 己の身は己で護る事の出来る腕を持っておる男じゃ。それは手合わせしたお主ならば、充分分かると思うがの」


 それはこの身をもって確認している。

 ……でも、なぁ―――――。


「それからのぅ、タダで居候させろとは幾ら(ワシ)でも言えんのでな。

 アヤツを介してという条件は付くが、我ら忍者組織の収集した情報を提供しよう。

 また、もし他では用意出来んような『特殊』な物品が必要な場合、同じ条件で貸与もしよう。

 どうかな? お主にとっても決して悪くない条件ではないかな?」


 忍者組織が収集した情報は、俺のようなしがないフリーのアクティブコンダクターにとっては……―――否、例えそれが銀河連邦や大国の情報機関のエージェントであったとしても、かなり魅力的だ。

 心が揺らぐ。

 ただ、一つ気がかりなのは、置いて行った事を、恐らく根に持っているであろうシェーラの事だ。

 俺一人で出掛けた上に、得体の知れない男を連れ帰ったとなったら、当分は機嫌が悪いままに違いない。

 が、この際だ。何かと便利になるのに越したことはない。

 それに、俺自身忍者組織と良い意味で関わりが持てるのなら、願ったり叶ったりだ。

 ……最悪『監視』なのかも知れないが、俺なんぞを監視した所でって話だ。


「まぁ、エルズワース殿の都合も有るじゃろうから、すぐに答えを出せなどとは、儂としても言えんでな。

 ゆっくり考えてから返事を出して下されば……」

「いえ、大丈夫です―――同行の件、お受けします」


 今度はお館様の方が驚いていた。


 そりゃそうだろう。仕事の相棒とは、自分の命を預けるも同然。そんな簡単に決めてしまうだなんて、普通は思わないだろう。


「本当に、良いのかね? そんな簡単に決めてしまって?」

「ええ。構いません。腕が立つのは分かってますしね」


 驚きはほんの一時のものだった。やっぱり侮れない、このご老体は……。


「まだお主には、アレがどんな男かも良く分かっておらぬのに?」


 試しているのかとも思えるような、淡々とした声で問われる。でも、もう決めた事だ。

 俺は何時だって、自分の選択に自信と責任を持ってきた筈だ。


「まぁ、取っつきにくい人物では無いようですから。

 お館様の話では、若い人らしいし、話も合うかも知れないですしね」


 へらり、と軽く笑みを見せると、お館様はゴーカイに笑い出した。


「ふぉっふぉっふぉっふぉっ!!!」


 はははっ、バカだとか思われたかな? やっぱり……。


「いやいや、そんな顔をするでない。やはりお主は、宇宙の大海原が似合う男じゃのぅ。

 エルズワース殿、決してその感覚を濁らせてはいかんぞ?」


 ……言われた意味がどうにもピンとこないんだけど、一応頷いておく。

 何だか忍者って思考が哲学的だよなーって思う。

 そりゃー、まぁ? 俺は完全に動物的と言うか野性的な勘で動いてるから、そう感じるだけかも知れないけれど。


「それでは、そうじゃのう……。

 去月の方の準備もある事じゃし、もう2~3日ほど滞在して貰うことになると思うんじゃが、宜しいかな?」

「はい。俺の方は少しも。結構メシ旨いし、空気も良いしでのんびりさせて貰ってますんで」

「この忍者組織の本星でそこまでリラックス出来るとは、大した大物じゃよ、お主は。

 普通、外から来た人間は体の変調を訴えるなど、何処かおかしくなるのが殆どなのじゃが。

 では、帰りは去月に案内させるとしようかの」


 それはつまり……他にも誰か、ここに来ている人物が『複数』居るって事だ。

 それも、この星ではない他の星の出身の人間が―――――。

 何となく気になった。


 お館様が去月を呼んでいる。

 現れた俺の新しい相棒予定の男は、相変わらず闇に溶け込みそうな黒尽くめだ。



 否。

 彼の人は、恐らく闇には紛れないだろう。

 闇の中であっても、彼の人は彼の人のまま、保っているだろう

 闇に埋没するのではなく、闇自体が彼の人を愛しているのだから。



『どうした?』


 ぼんやりとした思考に沈んでいた俺を引き戻したのは、当の黒尽くめ男だった。


「あ、い、いや……すまん。じゃ、行こうか」


 二人連れだって庵を後にした。


「―――アンタは、俺と一緒でも良いのか?」


 いくら最高責任者からの命令とは言え、本人はどう思っているんだろうかと、聞いてみる。


『お館様の勅命(ちょくめい)だからな。とは言え、『黄金の調停者』との旅なら武者修行にもうってつけだ。

 それに、お前のような奴となら楽しくやれるだろう』


 と、覆面の奥で微笑まれた様な気がして、嬉しくなった。


『それより、済まない。私の方の事情で出発が遅れてしまって』


 い、意外と律儀なヤツだな。


「構わないよ。お館様にも言ったけど、ここの生活結構満喫してるから。

 だけど、変にリアルな夢を見るのだけは困ってるんだけどね」


 部屋を移ったその日の夜、それ以外にも一度見てる。

 どちらも妙に生々しくて、本当に夢だったのかどうか俺は今もって判断しかねてる。


『夢?』

「ああ。それでなくてもここに来た事が有るような、妙な既視感っていうのか?

 そんな感じがあって記憶があやふやになってるのに……。

 もしかして、これがお館様の言っていた体の変調ってヤツだろうか?」

『かも知れん。でも、それぐらいで済んでいるならまだ良い方だろう。

 非道い時には精神が破綻する者も居ると言う話だ』

「……何でだ? 結構良い所だと思うんだけどな。

 自然は多くて空気も良いし、メシだって旨いし?」


 そんな怖い場所だとは、俺はどうしても思えない。


『―――お前が見ている所だけが全てではない。

 別の角度から見れば、もっと汚い所や醜い所も多分に持ち合わせている。

 だがそれはここに限らず、図体が大きくなりすぎた組織には大なり小なり必ず存在する。

 まるで、必要悪とでも言うかのように―――――。』


 それまで、あまり感情の揺らぎを見せなかったこの男が、その言葉だけは吐き捨てるように言ったのが気になった。

 もしかして、触れられたくない事だったのかも知れない。


「……すまん」

『何故謝る?』

「え、あー、その、……何となく」

『仕方がないだろう。必要悪とはよく言った物で、「必要」だから存在を許される。

 それに、そんな所でしか生きられないモノがいるのだから』



 ズキン。また、胸の奥が痛む。何だって言うんだ?



「あ、そうだ。何て呼べば良い?」


 そう言えば、まだきちんと聞いていなかった事を思い出した。


『カ クヤから聞いていないのか? ”去月”だ。”さりづき”と呼んでくれればいい」

「そうか。じゃ、俺は『ライト』って呼んでくれ。これからヨロシク、去月」

『ああ、こちらこそ宜しく頼む』


 その後、かっきり三日後に俺は新しい相棒となった去月を連れ、見事に復活したティンカー・フィッシュで忍者組織本星から旅立ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ