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8

 手綱をひいて、馬を止める。即座に背から飛びおりると、もどかしげに手綱を手近な場所にくくりつけた。

 物音を聞きつけたのだろう、慌ただしく戸を開けてでてきた父親の姿に、シィシアンはジェライドが戻ってはいないことを知る。

 それはグレイルも同じであった。戸を開け放したまま、大きく肩をおとしている。


「──見つからないか。こどもの足だ、そう遠くにいけるはずがないんだが」

「探査の魔法が効かない。意図的にか、無意識にか、ジェイのやつが撹乱してるんだ」


 あの後、シィシアンはすぐさま地系魔法を使い、ジェライドの居場所を探った。

 しかし、いつもならすぐに返る反応が、今日にかぎって現れない。仕方なくシィシアンは思いあたる場所を手当たり次第に探してまわった。

 まず思いついたのが、あの森であった。すぐさま馬首を丘へとむけたが、姿はどこにもない。次いでウォルデスへむかう街道を駆けたが、普段なら考えられないほど人通りの絶えた道には、弟の影すらなかった。


 そうこうしている間に、陽はまさに西の大地に没しようとしていた。

 空が銅色に染まり、東から夜が迫っている。


 もう、時間がないのだ。

 シィシアンは己の無力さに歯噛みした。グレイルもまた息子の言葉に小さく同意を示す。


「……あの子の、ジェライドの持つ力が本当なら、なにほどもないことだ」


 まして、気持ちが昂ぶっていて、今のジェライドにはまともな思考もないだろう。むきだしの感情は無意識に力を使い、自分の意思に沿うように仕向ける。自分にはできない、才能がないのだという抑制がない分、それは本来のあり方に近いはずだ。

 ならば、二人にどうこうできる次元にはなかった。


「俺が、家であんな話、しなければよかったんだ。もっとあいつに注意払っておくべきだったッ」


 こぶしをきつく額にあて、悔やむシィシアンの肩をグレイルがそっと叩く。


「多分、あの話を聞かれてしまったんだろう──だとすれば、それを責められるべきは私であっておまえではないよ。動転していたとはいえ、息子一人の気配にも気づかないなんて、騎士として……なにより、父親として失格だ」

「父さま……」


 自嘲ぎみに響いた声音に、シィシアンは顔をあげた。

 だが、言うべきなにかをみつけられない。


「だが、まだまにあう。なにも起ってはいない。あの子が危険に晒される可能性は高いが、決まってるわけではない。早く、みつけてやらなくては──」


 私もでよう、と晴れない表情の中にも強い思いがのぞく。薄い色の瞳が西の方角に挑むようにむけられ、暮れゆく空の色を映して染まる。


「あぁ。悔やむのは、あ、と……──ッ!」


 不自然に途切れた言葉の先は、飲みこまれた息に、掻き消える。

 馬へととって返そうとしたシィシアンの動きが急に止まり、同時に丘の、そのむこうの森をばっと振り仰いだ。グレイルも絶句して、目を驚愕に見開く。二人は声もなく、ただ立ち尽くして見つめていた。



 強大な、闇の気配が、爆発的にたちのぼる瞬間を。



 王都中にいる魔法使い・神職者ならば、誰もが察知したであろう、今まで遭遇したこともない濃い闇だった。

 ねっとりとした密度を持った真っ黒な煙のようなモノが、丘のむこうで蠢き、やがて視界から消え失せた。

 だが、魔法使いならずとも敏感な人ならば、その存在を無視し得ない、濃厚な気配と言いようのない圧迫感だけは残った。


「──っだ、あれ、は……」


 震える声帯から、グレイルが無理矢理それだけ絞りだす。無意識にだろう、粟立った二の腕をさすっている。


「……ド、だ」


 ぽつりと呟いて、唐突に駆けだそうとした長男の腕を、反射的にグレイルは捉えた。


「なんだってッ?」

「ジェライドだ! あの森の闇族は、あいつを器として狙ってた」


 早くいってやらないと、と腕を振り払おうとするシィシアンを、グレイルは強い力で押さえた。


「冷静になれっ、あの闇におまえ一人がいってなにができるんだ! 助けるどころか、やられて終わりだ!」

「だったら、見捨てるっていうのか!」


 シィシアンが射かけるまなざしをグレイルに投げた。強い光を宿した瞳に、それでもグレイルは怯まない。掴んだ手を離すことなく、おちつかせるように、ゆっくり言い聞かせる。


「助ける方法を探すんだ。きっと、なにかある」

「なにを悠長にっ。そんなことをしてる間に、完全にとりこまれる。そうなったら、もう手はないんだ! 不完全でもあれが王都の結界を破って街におりたら、多くの人が巻き添えに──」


 父親の胸倉を掴む勢いで言い募っていたシィシアンが、弾かれたように顔をあげた。今はまだ昼間の色を残した大気の彼方へ目を細める。

 気づいたグレイルもその視線の先を追った。

 最初は点であったそれは、瞬く間に二人の元へと近づいてきた。よくみ見ると、一羽の鳥だ。遮るもののない空から、真っ直ぐこちらへとむかって飛んでくる。


「……神殿の、使いだ」


 見覚えのある鳥の姿に、シィシアンはさっと腕をあげた。鳥は声一つたてず、すーっとおりてくるとその腕にとまる。

 シィシアンが腕をひきよせて羽に触れると、それは一枚の巻かれた手紙へと姿を変えた。彼は躊躇いもなく封を解き、書面へと目を走らせた。

 今は拘束していた手を離し、息子の様子を見守っていたグレイルが声をかける。


「神殿は、なんと言ってきた? あの闇の出現は当然気づいてるだろう」

「──ああ」


 長く息を吐いて、


「火精召喚、炎」


 シィシアンは口の中で小さく呪文を唱えた。次の瞬間、手にした紙が焼失する。


「王宮への緊急召集状だ。王都中の魔法使い及び騎兵隊員が呼ばれてる。完全に日が暮れる前に速やかにこいって、さッ」


 言い捨て、シィシアンは唇を噛んだ。

 今は王宮へいくよりも、ジェライドを優先させるべきだと心が叫ぶ。

 だが、一人ではどうにもできないことも、わかりすぎるほどにわかってはいた。

 まして、これはあの闇の顕現に対する召集であることは間違いがない。悩むまでもない。自分は王宮へいって助けを求めるべきなのだと、ジェライドを助けるにはそれが最善だと、シィシアンは理解していた。

 シィシアンは懐に手をいれ、腕輪をとりだした。視線を金色の輝きにおとし、ぐっと強く握り締めた。目を閉じ、大きく肺に空気を送りこむ。


「シィシアン……」


 不安げにグレイルが息子の名を呼んだ。それにふっと目を開けたシィシアンは、父親にむかって軽く口の端をあげてみせる。


「大丈夫、わかってる。どうするのが、一番いいかなんて……悪かったよ。無茶を言ったりして」

「おまえが、一番あの子を可愛がってくれていたんだ、当然だ」


 気にしていない、とグレイルは首を横に振った。

 父親の態度に一瞬、目元を緩めたシィシアンだったが、すぐに表情を改めると、丘の稜線を睨んだ。


「急ごう。あれが完全に覚醒しないうちに……太陽の名残が闇の侵食を抑えてる、今のうちに方法を見つけださないと」


 長衣を翻して、シィシアンは繋いであった馬へとむかった。手綱を解いて、その背へ飛び乗る。一足先にと駆けだした息子の後を、グレイルもすぐさま追う。

 轡を並べた二人は王宮へと、人気の途絶えた街道をまっすぐ、馬を全力で走らせていった。





 

「二人とも大儀だった──と言いたいところだが、」


 まだ、なにもはじまってすらおらぬ。


 響いた低く張りのある声に、父子は揃って一層深く頭をさげた。


「よい、頭を上げよ。ことは一刻を争うのだ。余計な儀礼など、無用」


 かけられた言葉に、二人はおそれおおいといった体で顔をあげる。目前に延びる、磨きあげられ輝く階段を視線が伝い、更にその奥へとたどりつく。

 特に造りが凝っているわけでも、黄金で飾られているわけでもない。

 けれど、一際の存在感で、どっしりと玉座はそこにあった。座するのは冴えた金髪に、曇りのない銀青色の瞳という王家の特色を持つ、壮年の男性だ。

 彼こそが、当代王レオニス。

 民の心をよく知り、よく施す賢王と名高い、このアルクネアの中心をなす人物であった。






 緊急事態ゆえに、王宮まで騎馬を許された魔法使い、騎兵隊員が続々と前庭に集まる中、グレイルとシィシアンだけは王城への門を潜るなり、侍従によって城内へと導かれた。疑問を挟む余地もなくとおされたのが、この謁見の間だ。

 人払いのされた室内には、宰相並びに騎兵隊長が玉座の両脇に控え、大神官、魔法院首席ほか各長階級が顔を揃えていた。


 そうそうたる顔ぶれに言葉を失う親子が呆然と立ち尽くしていたところへ、王が神眼の巫女を従えてはいってきた。

 近くへ、と呼ばれるにいたって、二人の緊張感は一気に高まった。

 普段、王と接することなどありはしない。姿を見ることも末席に近い場所から、眺めるというのに等しい。このような場面を予想しえなかったグレイルとシィシアンが恐縮して王の前に膝を折った時、かけられた第一声がさきほどの科白だった。


「話は大神官と巫女より聞いた」


 顔をあげた二人に頷き、重く発せられた内容にグレイルとシィシアンは身を固くする。

 だが、微かなその動きを気にすることなく、王は先を続けた。


「なんとしても、あれが都におりることは食い止めなければならない。許せば甚大な被害がでる。――皆も知ってのとおり、今、王都の守護は脆い。いずれ戻るとはいえ、現時点であれほどの闇に晒されては今夜一晩どころか、一刻も持つまい。そこで、急ぎ神殿に記録をあたらせた」


 王の言葉を受けて、大神官が合図を送る。それに従って、一人の神官長が数歩前に進み出た。


「王都西北に位置する彼の森の形成は、初代陛下の治世十三年と記されておりました。大方の闇族を魔法と剣の力によって排したのち、大陸北のサタルディーア砂漠より突如現われいでた彼の闇は、長年の闇族との戦いで疲弊しきった人臣の心を、血肉を喰らい、その身の闇を深め、瞬く間に王都へと達しました。あまりの強大さに、地上にまだ神々の息吹が充分満ちておらず、兵力もおちていた当時の状態では打ち払うことができず、剣により力を削ぎ、体を滅ぼして、魔法使い数人がかりで地系結界によって封じこめたとあります。森はその後誕生したものです」


 とうとうと求められた記録を語り、恭しく一礼して神官長は元の位置へとさがった。それを待って、主席魔法使いが王へ発言を求めた。


「力を削がれてなお、あれだけの気配を持つ闇です。簡単にはいかぬでしょう……しかしながら、建国当時とは異なり今は大陸に精霊が満ち、我らの長年の技の研鑽により、魔力は確実に向上しております。動きを封じ、火系魔法により鍛えあげられた剣をもってして闇の核たる部分を貫けば、霧散させることが可能となりましょう」

「だが、なまなかな剣ではそれも儚い抵抗となろう。あの闇に対抗しうる強力な魔法刀があるというのか?」

「動きを封じると簡単に言いますが、同時にあの少年の身体から闇をひき離さなければならないのですよ? 巫女の話が真実であれば、我々はあのこどもを失うわけにはいかないのです」


 魔法使いの言葉に騎兵隊長、大神官から声があがる。

 だが、魔法使いは大神官の言い分にことさら眼光を強くした。


「それくらい考えていないとお思いか? 第一『失うわけにはいかぬ』などとは、今さら……当時、我らの言葉に耳を傾けなかったのは神殿ではないか」

「それはっ……意見の相違はいたしかたのないことだったと思いますが? 前例のない現象だったのです。我々としても、まさか──」

「今は、それを争う場ではない」


 穏やかだが、他者をひれ伏させる威厳を持った声に、舌戦に突入しようかという二人がはっと口を噤んだ。頭を垂れ、非礼を詫びる。


「まずは民の命を守ることを第一とすべきだ。もちろん、その内には今回不幸にして闇に晒されたその少年も含まれよう」


 集まった一人ひとりにまなざしをむけながら、王は室内を見回した。視線を受けた者たちは礼をとり、了承を返す。その様子に王は軽く首肯すると、侍従の名を呼んだ。


「さきほどの魔法使いの話でもあったが必要なのは、動きの束縛と媒体よりの切り離し、そして闇をも滅する剣。束縛には上級魔法使いが数人必要だろう。すべては無理だが、ここにいる者を幾名かだそう」


 できるか、という問いに魔法使い全員が力強く答える。


「頼んだぞ──更に切り離しに際しては、巫女に案があるという」


 目で促され、うしろに控えていた巫女が静かに口を開いた。


「まずは闇に呑まれた彼の意識を呼び覚ますことです。それができなければ、先はありませんわ。心は闇に喰らわれ、残るのは器としての身体のみでしょう。けれど、意識が目覚めれば器と闇との結びつきは自然弱まります。そこを切り離すのです──魔法使い」

「──はっ」


 まっすぐに自分に向けられた呼びかけに、シィシアンはわずかに喉を鳴らすと短く答え、自身もまた巫女へと迷いのない視線を投げた。


「あの子へ昨日さしあげた腕輪、持っていますね? 気配を感じます」

「はい。弟が、おとしていきました」

「身につけていたら、また違っていたでしょうに……それが闇の駆逐の助けとなるでしょう。あの子の腕へ、それを。できるのは上級魔法使いであり、彼の信頼を得ている貴方だけでしょう。貴方は水系魔法が得意であるとか。水の浄化の力を利用して、彼の身の内から闇を追うのです。けして火系魔法を使ってはなりません。闇に侵されたあの子ごと、灼いてしまいますよ」

「────」


 巫女の言葉を受けとって、シィシアンが深く頭をさげた。

 二人のやりとりをしかつめらしく見守っていた王が『陛下』との侍従の呼びかけに、すっと立ちあがった。つられるように、一同の視線が玉座へと戻る。


「剣は、これを」


 そう言って、侍従が丁重にさしだした一振りの剣を手にとった。


「創国以来伝わる、わが国の宝刀を使うがよい」

「陛下!」


 己へと差さしむけられた剣の柄に、グレイルは目を瞠った。と同時に、幾人かが咎める色の声をあげた。


 それは王国の創始より代々王家に受け継がれてきた、魔力を宿した剣であった。国のはじめには多くの闇族を払い、唯一闇を滅ぼす力を持つ火系魔法によって今日まで鍛えあげられてきた、国の宝というべき代物である。


 闇族に対抗するには、魔法を施した剣でないかぎりいくら名高い刀工が鍛えたものであっても歯がたたない。また、剣の威力は施された魔力に比例するのだ。

 それらの点において、国の第一級魔法使いが代々修繕・強化を施してきた宝刀以上の剣は存在しなかった。


 だが、だからこそ一臣下にすぎない騎士に貸与することを、まわりはよしとしなかった。宝刀とは王のみが行使することを許されたもの。その権利を一時として臣下に譲るなど、考えられない所業であった。


「お待ちください、陛下! なにも宝刀でなくとも、ほかにも鍛えられた剣はございましょう」


 止めにはいった大神官を、王は一瞥した。


「これ以上のか?」

「それは……」


 返された問いに、大神官は押し黙る。


「ならば、これしかあるまい。この者が信を受けるに値せぬというならば、ほかに誰かある者は?」


 見渡す王に沈黙が答えた。

 反対する理由はそこではないのだ、と反駁する声すらもあがらない。それほどに王の態度からは有無を言わせぬものが感じられた。


「本来ならば、国の一大事、余がいくべきなのだ」

「それはなりませんッ」

「わかっておる。今、余になにかあったらこの国は大きく傾くだろう。跡継ぎたる王子はまだ幼い。国を支えきれまい。助けとなるべき二柱の内の一つ、御使いが世代交代を迎えた今、結界には綻びが生じておるのだ。そんな危険は冒せぬ」


 多くの国民には秘されている事実がそこにあった。


 人々が知らず平穏な毎日を送る今、世界を守る結界は御柱のひき継ぎによって揺らいでいた。

 天より使わされし龍は、不老不死の生き物ではない。

 人より遥かに長い寿命を持ってはいたが、何百年かに一度、それは訪れた。老いた龍は自らの生命とひき換えに、後継たる卵を産む。そうして卵が孵り、御柱の役目は次代へとひき継がれていくのだ。

 

 ただ引継ぎの際、一時的に弱まる力に結界は不安定になる。

 今回は運悪く、新月に時期が重なってしまった。次代たる御使いは孵ったばかりで、後半年もすれば安定する力も、まだ弱い。

 だからこそ、今年の新月は王都へ守りが固められていた。

 その今、国はもう一つの強固たる柱を失うわけにはいかないのだ。


「ならば、これを貸し与えることが暴挙とは思わぬ。あの闇が守りの弱まった王都へ侵入すれば、例え二柱が無事とはいえ多くの犠牲がでるだろう。天におられる神のほかに、地上で民の命以上に敬うべきものを余は知らぬ」


 威厳に満ちた声が、反論を許さぬ力強い口調で断言する。

 臣下たちが圧倒される中、レオニスは玉座を離れると短い階段をおりた。グレイルの前に立ち、剣をさしだす。


「これをもって、闇を払え。民を守る騎兵隊として──父親として、あの子を救うのだ」

「──命に換えましても」


 剣を両手で押しいただき、グレイルは深く頭をさげた。

 こちらも深く頷いて宝刀を預けた王が壇上へ戻る。立ったままぐるりとあたりへ視線を巡らせた。


「日は暮れた。余の治世でもっとも危険な夜となろう。ほかの者も頼んだぞ。国を、民を、闇から守れ」

「は!」


 一同がいっせいに礼をとる。


 王の指示によって早急に数人の魔法使いと騎兵が選びだされ、グレイルとシィシアンと共に森へと使わされることとなった。

 主席魔法使いと王宮に残ることになった魔法使いたちによって、移動の魔方陣が敷かれる。

 その内にシィシアンたちがはいった。王ほかの高官たちに見守られる中、選抜隊が部屋からかき消える。

 

 彼らを見送った王は小さく息を吐くと、傍らに立った巫女へ声をかけた。


「彼らは……、闇に呑まれたこどもは無事で帰るだろうか」


 同じような年ごろのこどもを持つ、一人の親としての言葉であった。それに娘のような年の巫女はふわりと柔らかく微笑んだ。


「大丈夫ですわ。あの子は力を抑制できる理性を持った子です、見かけは幼くても強い芯を持っています。それに大地の愛し子ですもの、守ってくださいますわ」


 例え月は昇らずとも、存在が消えるわけではない。守りが弱まっても、なくなるわけではない。

 巫女はそう、北西の方角を静かに見つめた。


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