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俺の親友が異世界で最強枠になっちゃった話  作者: カトウアキ
第1章 朱雀編

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7話 ルメリアという少女

 私は生まれつき、身体が弱かった。


 それに比べて、私のママとパパは立派な冒険者で、巷では名の知れた強いコンビだった。


 当然、娘の私もその期待に応えなければならなく、小さい頃から魔素のコントロールの練習や剣術を学び、その度に周りから失望されてきた。


 私が弱いから、私がもっと強い子だったら、ママとパパはきっと振り向いてくれる。それだけを信じて、私は日々の練習を必死に受け入れてきた。


 でもある日、ママは仕事中にあっけなく死んでしまった。


 この世界を守るために戦って死んだのだと、当時ママと一緒に冒険に出ていた人から伝えられたのだ。


 私はまだ幼かったから、『じゃあなんであなたは生きているの……!』なんて酷い言葉を言ってしまった。


 でも、その人はそんな私を責めず、ただ一言、ママの遺言を私に伝え、去っていってしまった。


『……ルメリア。貴方は、強く生きなさい。貴方は強い子よ。ママは、貴方のこと……ちゃんと、分かっているからね……』


 この言葉を胸に、私は今日まで必死に足掻いて足掻いて生き続けてきた。


 そう、あの四大獣──朱雀と戦うまでは。


×××××××


 時は数日遡る。


 風の噂で、四大獣討伐の大部隊が結成されると聞きつけたルメリアは、その部隊に入るため、仕事でその手の話に詳しい友達のグローリアに相談していた。


「ねえルメリア。……本当に、入隊するの?」


「ええ、そのつもりよ。これは私の悲願だもの。ママを殺したアイツだけは、絶対仇を取ってやるんだから」


 酒場の雰囲気に呑まれ、炭酸しか飲んでいないが酔ったような口調で言うルメリア。


「はぁ。あのねえ、それで貴方が死んだら意味がないじゃない。いくら大部隊の組織でも、四大獣を倒すなんて無謀以外のなにものでもないわ。……あなたのお母様は、たしかに勇敢な冒険者だったと思うわ。でも、娘の貴方まで同じ目に遭ったら、お母様はなんて顔すればいいのよ」


 ビールを飲みながらも、冷静に返答するグローリア。


 グローリアの言っていることは、確かに正しい。

 でも、これは理屈で片付けられるほど簡単な問題ではないのだ。ママとを殺した元凶──北の国の玄武を、私は、なんとしてでも私の手で殺さなくちゃならない。


 私の手で四大獣を全て殺して、これ以上同じ目に遭う人を無くす。それが私の生きる理由だ。

 ママのためにも、私のためにも、今はそれ以外は考えられない。


「いいの。心配してくれて、ありがとね」


「……そう、わかったわ。……無理は、しないでね」


 少し震えた声でそう言ったグローリアだったが、すぐに表情を戻しニコッと笑うと、片手に持ったビールを一気飲みする。


 気持ちよさそうに「ぷはぁー!」と叫んだグローリアは、少しだけ間を置くと、渋々ながら、近日開催される四大獣討伐隊の試験が行われる会場を教えてくれた。


 日時は明日のお昼過ぎ。

 場所は、この酒場から馬車で1時間ほど走らせたところにある、サウリオン闘技場とのことだった。


 西の国──サウリオンが建国して間もなくに作られた、歴史の深い闘技場。

 直径百メートル以上の敷地に半円を描くようにドーム状の建物が立っていて、中の外周には客席がビッシリと並び、中央の様子を眺められるようになっている。


 ここでは、物好きによる人対人の決闘が夜な夜な行われていて、優勝した者は今後の将来が約束されるほどの金額が裏で支払われる──という噂がある。


 一方、表向きでは何かの行事や決め事に用いられることが多く、今回はこちらのパターンだろう。


 どちらにしても、私の進む先は決まった。


「ありがとう、グローリア! 早速準備してくるわね」


 急いで荷物をまとめ、ポケットから硬貨を数枚取り出し、机に置く。


「これ、グローリアの分も置いておくから! 教えてくれたお礼!」


「ったく……(せわ)しないわね、ありがと、受け取っておくわ」


 そう言ったグローリアの顔は曇っていて、行ってほしくない、そう伝えたいように感じた。

 でも、これは私の人生を賭けた戦い。気持ちは変わらない。


 心の中で、『ごめんグローリア。ちゃんと帰ってくるからね』と言い、私は酒場の扉を思い切り開け、外に出た。


 ──その直後。背後から、低い男の声が私の耳元で囁いた。


「お嬢ちゃん、ちょっと面、貸してくれねぇか」


 殺意のような、悪意のようなものがこもった、とても恐ろしい声色だった。

 危険を感じ、素早く距離を取る。

 警戒する中、ガタイのいいパンチパーマの男は、小ナイフを片手にニヤニヤとなにかを品定めするかのようにこちらを見つめてくる。


「そう怖がるなって。俺はアンドレってんだ。お嬢ちゃん、名前は?」


 お昼の日差しに輝いたナイフの刃を舐め回すように見ながら、アンドレは不気味な笑みを浮かべる。


「名乗る意味が分からないわね。真昼間からこんなところでナイフを振り回すような人に、教える義理なんてないわ」


「初対面から手厳しいなぁ、おい。女は愛嬌って言うだろ? ……ったく。女が廃るぜ、本当によ」


 持ち前の無精髭を軽く擦りながらナイフをポケットにしまったアンドレは、語尾に溜息をつけながらそう言った。


 見た目は三、四十歳くらいの中年で、彫りが深く、茶色の無精髭をふんだんに生やした特徴的な見た目をしている。


 身体全体にはお金がかかってそうな重鎧を身につけており、その見た目からして、恐らく冒険者、かつ役職はタンクだろうか。


 見たところ武器は先刻の小ナイフだけで、剣や盾などといったものは見受けられない。


 数メートル距離をとりながら観察していると、アンドレは「まぁいいや」と言い、続けて口を開いた。


「本題に入るがな、お嬢ちゃんに声をかけたのはほかでもねぇ。明日の件……お前さんも参加するんだろ。さっき話は聞かせてもらったぜ」


「そう……。あなたも参加するのね。だったら話が早いわ。私は今から準備があるの。先を急ぐわ、じゃあね」


「ちょちょちょちょ、ちょっと待てって。わかったわかった、わかったから。いいから、話を最後まで聞いてくれってお嬢ちゃん。……実は、耳寄りな話があってよ」


 動き始めた足を止め、少しだけ耳を傾けた。

 再びニヤッと笑ったアンドレは、身振り手振りを使って話し始めた。


「実はな……明日行われる、四大獣討伐隊の試験。実はこれ、囮らしくってな。俺が仕入れた情報によると、主催者のグレゴリーは秘密裏に少数精鋭で討伐隊を結成して、今夜決行するらしいぜ」


 とても信じられない情報だった。

 グレゴリーさんは西の国では有名な剣士で、街の治安や平和を守ってくれている存在だと認識している。

 

 実際に会ったことはないが、そんなことをしてなんのメリットがあるのか。それに、どうも胡散臭い気がする。

 

 信じるには情報が少なすぎるし、万が一そうだったとしても、いくらグレゴリーさんといえども少数精鋭であの四大獣に敵うとは到底思えない。


「信用できないわね。仮にそうだったとしても、あなたは私になにを言いたいの? まさか、それより先にこっちで討伐する、なんて言わないわよね」


「ほう……ケツの青そうな嬢ちゃんの割に、勘が鋭いじゃねぇの」


 癖なのか、再び無精髭を擦りながら意味深に言うアンドレ。


「その気持ち悪い言い回し、やめてほしいんだけど。それに私は、そんな無謀なことをするほど馬鹿じゃないわ。あなたも、そんなことを言っている暇があったらトレーニングでもしてなさいよ」


 大前提、あのグレゴリーさんがそんなことをするなんてあり得ない。というか、不可能だ、というのが私の結論だ。


 いままで数々の冒険者が四大獣に挑んでは殺されてきた。過去にはいまよりもっと大規模な討伐隊を組織して挑んだ例もあったのに、その度に返り討ちになってきたのだ。


 そのことを知らぬグレゴリーさんではないだろう。


「──ハッハッハッハッ! 面白いお嬢ちゃんだな、おい。でも、そんな悠長なこと言ってて本当にいいのか、って話よ。お前さん、母ちゃんが四大獣に殺されたってんじゃねぇか。仇を討つんだろ? このままだと、先越されちまうぞ」


 そう言い、ゆっくりと近づいてきたアンドレはすぐ目前で止まると、右手を差し出し、思いもよらないことを口にした。


「俺達と協力して、グレゴリー連中よりも先に、この国の四大獣──朱雀を倒しちまおうぜ」

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