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俺の親友が異世界で最強枠になっちゃった話  作者: カトウアキ
第1章 朱雀編

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5話 救出作戦

 叶多を救出する為には、まずは最優先でベロニカの拘束魔法を解かなければならない。

 しかし俺の最弱魔素では到底敵わないため、ルメリアに共闘を申し出るか、話で解決するしかない。

 

 共闘を選択した場合、ルメリアは間違いなく快諾し、あのときの力を存分に振るってくれるだろう。しかしそうなった場合、俺達は今後この街にいられなくなるかもしれない。それは俺達の望むところではないし、ルメリアにもわるい。

 

 話での解決を選択した場合は、俺次第ではあるが、成功した場合のメリットがより大きい。

 どちらを選ぶかは明白だ。


 俺はあくまで平然を装いつつ言った。


「ベロニカさん。叶多を連れていって、どうするんですか?」


「悪魔は原則、打ち首です」


 分かってはいたが、あまりの直球な回答に思わず固唾を呑む。

 しかし俺とて半端な覚悟で臨んではいない。


「でもそれって、ここ南の国の英雄にする処罰なのかな? だって俺達、あの四大獣の朱雀を倒したんですよ、昨晩」


 その言葉に一瞬反応が遅れたベロニカだったが、すぐに我に返り、今日一驚いた声で叫んだ。


「……あ、あの朱雀を……倒したですって!? ……いえ、有り得ないわ、そんなこと。嘘をつくなら、もう少しまともな嘘をつくのね」


 明らかに動揺を隠せていないベロニカ。

 一瞬だけ手に揺らぎが見えたが、叶多が解放された気配はない。


 あの洞窟で四大獣というワードを聞いたときから疑問には思っていたが、どうやら、この世界における四大獣とはよほどのものらしい。

 揺さぶりをかけてみたのは正解だったといえる。

 しかし、悪魔の力をもってしても四大獣を倒したことを信じてもらえないとなると、いよいよ危ないか。


「そうだよな? ルメリア」


 目を合わせ、『話を合わせろ』と必死に訴えかける。


 ルメリアは顔をしかめ何度も考えるように頭を動かしたが、すぐに折れたのか溜息と共に言った。


「え……ええ、そうよ。私は昨晩、朱雀討伐のために一人で家を出たわ。でも、悔しいけど私の実力では四大獣になんて敵うわけなかった。全て、カナタさんのおかげよ。致命傷を治してくれたのも、あの朱雀を倒したのも」


 静まり返る室内。

 まるで信じていないのか、もしくはその逆で、呆気に取られて声も出ないのか。

 

 ベロニカの返答を待ったが、それよりも先に、異変は起きた。

 突如として室内のなにもない所から、武装した兵士二人と、金髪で長髪の男が現れたのだ。

 

「遅れてしまい申し訳ない。これは、どういう状況で?」


 金髪男が話すと、ベロニカは数歩後ろに下がり、驚いた声で言った。


「ハ、ハイン様。なぜ貴方様がこのような所に……」


「いやね、いつもの巡回ついでにふらっと立ち寄ったら、案内所が緊急事態だなんのって騒がしくってね。様子を見に来たってわけさ」


 金髪男──ハインは、長い前髪をかき上げながらそう言った。


 腰あたりまで伸ばした長い金髪に、ブルーの瞳。身長もこの中の誰よりも高く、立ち振る舞いや言葉遣いもどこか品があり、抜け目のない人、という印象だ。


 ハインの言葉を受け納得したのか、ベロニカは、「ありがとうございます」と一言いい、続けた。


「魔素鑑定の際に悪魔が出たので、身柄を拘束していたところです」


「悪魔……か。数年振りかな、その名を聞くのは。いいよ、僕が連れて行こう。ベロニカさんは拘束を解いて」


 笑顔でそう言い放ち、ベロニカは安心したように両手を下ろし拘束を解いた。

 同時に、叶多を縛る透明な手も消え、叶多はそのまま地面に倒れ込んだ。


「──叶多!!」


 すぐに叶多の側まで駆け寄り、無事を確かめる。

 心臓は動いているし、呼吸もしている。しかし、意識がない。

 締め付けられていたせいか顔色も良くなく、決して無事とはいえない状態だ。


 拘束魔法からの救出は達成できた為、すぐにでも叶多を連れてこの場から去りたいが、新たな三人の刺客の登場によって全てが台無しになった──というかむしろ状況は悪くなったか。


 特に、武装もせず飄々とした姿の金髪ロン毛は、その見た目に反して他を寄せ付けない圧倒的な威圧感がある。持ち前の力強い瞳に捕まってしまえば、逃がしてはくれない。一瞬でそう思えてしまうほどの恐ろしい雰囲気だ。


 左右で剣を構える重武装の兵士は、見た目こそ恐ろしいが真ん中の金髪ロン毛のインパクトに比べたらモブ同然に思える。

 

「その人は?」


「はい。同じく魔素鑑定を受けた者です。もっとも、魔素力は最低ランクでしたが。たしか……コウ……いや、ユウさん、でしたっけ」


 ハインの質問に正直に答えたベロニカ。

 初対面相手に、最低ランクと押し付けて名前までうろ覚えときた。失礼極まりない。

 叶多をこんな目に遭わせた分も合わせてぶん殴ってやりたいが、そんなことをできるような雰囲気でもない。


「そうか、ユウ君というのか。君はその悪魔と友達なのかい? だとしたら残念だが、申し訳ない。しかし悪魔は悪魔だ。私が掟に則って対処する。そこをどいてくれるかな」


 同情でもしているのか、少し声を弱らせて言ったハインは、数秒待ったが、俺がどく気がないこと察して、やれやれとジェスチャーをすると右手を身体の前に出した。


「三つ数えるよ。その間に悪魔から離れたら、君には手出ししない。どかないというなら……。わかるね」


 そう言った途端、ハインの目つきが変わった。

 獲物を狩るときの鷹のような細く鋭い目つきが、俺を捉えて離さない。


「三……」


 すぐにカウントダウンが始まった。猶予は三秒と短いものだったが、その中でこの状況を打破する手段を思い浮かばなければ、俺と叶多の異世界人生は終了だ。


「ニ……」


 なにか方法はないだろうか。カウントダウンを強要するような奴に話し合いは無駄だろうし、かといって実力で敵う相手でもない。ましてや俺はZランクの烙印を押された、いわば最弱候補だ。この場で勝てる相手などいるはずもない。


「一……」


 もうルメリアに頼るしかないか。ルメリアのあの剣技なら、この金髪ロン毛相手でも上手くやれるかもしれない。

 その間に、俺は叶多を背負って先に逃げよう。ルメリアとはあとで合流だ。

 

 そう決めた俺は、すぐさま大声でルメリアを呼んだ。


「ルメリア! この金髪ロン毛と戦ってくれ! 俺は叶多を連れて外へ出る!」


 しかし、ルメリアから返ってきたのは沈黙だった。

 

 そして、タイムリミットが過ぎた。


「零……」


 ハインは一度大きく溜息をつき、手を下ろす。


「君には残念だよ。でも、その娘の判断は賢明だったと思うよ。僕のことを知っていれば、みんなそうなる」


「なんでだよルメリア! 叶多のことが必要だって、そう言ってただろ!」


 理解できない。あれほど叶多が必要と散々言っておいて、この場に及んで見捨てるというのか。

 叶多に命を救われておいて、逆の立場になったら危険は冒せないとでもいうのか。


「……ごめん、なさい」


 全てを諦めたような精気のない声で、一言謝ったルメリア。


 ──もう、俺がやるしかない。


 ゆっくりと立ち上がり、拳を強く握った。


 叶多を守る。その一心で、俺はハインに突っ込んでいった。

 ハインはなにもせず、ただ視線だけは逸らさず俺を捉え続ける。


 あと最後の一歩で、拳が届く。右腕を思い切り引き、足を前に出したのと同時に、ハインの顔面目掛けて力任せに拳を放った。

 

 殴られた側がどうなるかは、当時の母親を見ていたら嫌でも分かる。母親は、父親によるDVで顔中アザだらけになり、ある日から外へ出歩かなくなった。


 暴力からはなにも生まれない。当時小学生だった俺は、家庭環境の悪さから、日頃からそう思うようになった。そしてふと気づいた日から、戦隊系のアニメやバトル漫画が見れなくなってしまった。


 そして今の俺がやろうとしていることは、父親と一緒だ。どんな理由であれ、人を殴ろうとした時点でそれは人として大切なものを失うことと同義だ。父親のことをとやかく言う資格など、もうない。


 それでも──!!


 手に、確かな手応えを感じた。同時に、反動で強い痛みを感じる。


 思っているよりめちゃくちゃ痛い。殴る側が手加減でもしない限り、殴られる側も殴る側もどちらも無傷でいられるわけがない。


「──君の力はそれだけかい?」


 左頬に小さくめり込んだ拳をものともせず笑顔でそう言い放ったハイン。


「……って、どっちが悪魔だよ。こっちは腕がもげそうなくらい痛いってのに」


「僕は日頃から鍛えてるからね。こんなパンチで痛みを感じるほど、やわじゃないよ」


 もう一度笑ってみせたハインは、拳をめり込ませたままゆっくりと前に進み、俺との距離はほぼ零距離になった。


 何をされるか分からない恐怖と、圧倒的な威圧感に、思わず拳を離した。


「やっぱり、弱者とは愚かだね。絶対的な強者を前に、成す術を持たない。君が守ろうとしたその悪魔も、君みたいな弱者が従者でさぞ残念だろうさ」


 鼻につく言い回しに、湧き上がる苛立ちは倍増する。


「弱者弱者ってうるさいんだよ。俺は守られる存在でもないし、悪魔の従者でもない。対等な友達だ。それに俺は、これから強くなるつもりだ。お前なんて一瞬で追い抜いてやるよ」


「ほう……期待してるよ。もっとも、生きて帰れたら、だけどね」

 

 言い終わった、次の瞬間。

 突然、俺の身体が宙に浮き、続いて激しい高速横回転をしながら一直線にぶっ飛ぶ。同時に、倒れて動かなかった叶多を巻き込み、俺と叶多は奥の壁へと激突した。


 衝撃で砕けた白い壁の破片が、身体の上に次々と覆い被さる。あまりの痛さに耐えられず、声にならない声が出る。


「──ユウ! カナタさん!」


 柄にもなく心配するルメリアだったが、身体中が痛くてまともに声が出せない。


 意識も朦朧とし始める中、一歩も動かずに俺を吹き飛ばしてみせたハインは、表情一つ変えず、冷酷無比にこちらを見つめる。

 

「……君たち。二人まとめてやっちゃって」


 両隣の兵士にそう告げたハインは、最後に一瞬だけ俺の顔を見ると、すぐに後ろに下がった。


 命令された二人の兵士は、すぐに立ち上がると、左手で何かを持つポーズをし、右手で何かを引く動作をとった。


 ──弓矢だ。


 直感でそう悟った俺は、見えない弓矢から逃げるべく身体を動かそうとするが、足に瓦礫が落ちて立ち上がれないし、万が一俺だけが動けても叶多を助けることができない。


 みんなの言う悪魔の力を使おうにも、当の叶多が気を失っている上に、そもそも魔素の放出方法など教わってないし知るわけがないのだ。


 あれこれ考えている間に、準備ができたのか「ハイン様、お声を」と片方の兵士がゴーサインを求めた。


「よし。──放て」


 瞬間、二人の兵士は、同時に右手を離した。


 二本の見えない矢は、ただでさえ短い距離を一瞬で駆け抜け、風圧が追いつく頃には、俺と叶多の胸あたりに大きな風穴が空いていた。


 この先どうなるかは明白だった。そう気づいた瞬間、急激な寒気に襲われ、次第に息が絶え絶えになっていく。


 そして。


 ──俺は、死んだ。

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