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俺の親友が異世界で最強枠になっちゃった話  作者: カトウアキ
第2章 白虎編

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21/23

21話 特訓開始

「来たる明後日の白虎討伐戦……なんとしてでも、僕たち四人で見事完遂してみせよう」


 転移魔法で草原で暇している叶多達と合流し、全員で簡単な挨拶だけ済ました俺達は、ハインの持ってきた情報をもとに白虎討伐戦の作戦会議を行うことになった。


 内容としては、グレゴリーという先導者を筆頭に組織された四大獣討伐隊が一週間以内に白虎討伐に乗り出るという情報を仕入れたハインが、俺達にそこに混じるよう提案してきたが、

 

 それを聞いたルメリアは「グレゴリーさんは闇の行商人と繋がっているわ」となんの根拠もないことを言い放ったため、急遽二日後までに特訓を行い俺達四人で白虎討伐に臨むことになった。


「事情が事情だし、短い期間の特訓に関しては同意だけど、どういう組み合わせで教えることになるのかしら。もしかして私がユウに教えるなんて言わないわよね? それだけは絶対に御免よ」


 俺がルメリアになにをしたんだよ、と思うほどの嫌われっぷりだが、いつもの調子で逆に安心してしまう自分もいる。


「珍しく鋭いじゃないか、ルメリア。でも僕を恨むのはお門違いってやつだよ、考えたのはほかでもないユウだからね」


「なに考えてるのよユウ……。私はカナタに強化系の魔法を教えるから、あなたはハインに剣術を教えてもらえばいいじゃない。それの何がダメだっていうのよ」


「あのなぁ……俺だってルメリアに教えてもらいたいわけじゃないんだよ。ったく、少し考えれば分かるだろ」


 どれだけロジカルに説明したところで納得するとは思えないが、このパーティの要はどこまでいってもやはり叶多なのだ。


 俺は大きく溜息をつき、ものわかりの悪いルメリアにも分かるように懇切丁寧に伝える。


「このパーティの主軸はあくまで叶多だ。その叶多を主戦力に置く場合、魔法に一番捉われない戦い方ができるのはハインしかいない。そしたら必然的に、白虎戦に於ける俺達の役割は裏方……つまり援護なんだよ。二人が前線で戦闘してる最中に、俺達が首突っ込んでも足手纏いになるだけだろ。だから叶多はハインについて、ルメリアは消去法で俺になるんだよ。そりゃ不服だろうけどな」


 叶多の名前を出されると弱いのか、酸っぱい顔をして顔をしかめるルメリア。

 

 まったくどう説得したものか、と頭を悩ませていると、突然両手を叩き大きな音を出した金髪騎士が、間に割り込み話を強制終了させた。


「──とにかく今は少しでも時間が惜しい。僕たちは向こうの川辺の方でやるから、君たちはここでやっているといいよ。次の集合は、夜七時に今朝泊まった宿屋にしよう。それじゃ」


「……ゆ、悠君、ルメリアさん、お互い頑張って強くなろうね! 気をつけてね……!」


 ハインから鋭い視線を感じた叶多は、長い後ろ髪を追うように早足で去っていった。


 取り残された俺とルメリアは、しばらく無言を貫いたが、数秒後、ルメリアが口を開く。


「……やっぱり、カナタは自分の心配はしないのね。強い人よ」


「俺達も負けちゃいられないぜ。明日中には連携を完璧にしておかなきゃいけないんだ。二人の足引っ張らないように頑張ろうぜ」


「あなたに言われると、すごいムカつくのよね……まあいいわ、私たちもやりましょう。言っとくけど、手加減はしないわよ」


「もちろん。受けて立つ」


 こうして俺とルメリア、叶多とハインの二日間の修行が始まった。


×××××××


「カナタ、君は魔素量だけは膨大みたいだけど、コントロールや魔法の使い方、剣術その他全てに於いてまるで素人だよ。これじゃあただの頭でっかちだ。先人方が幾度となく敗北してきたあの白虎になど勝てるわけがない」


 川沿いの開けた場所まで移動した叶多とハインは、早速剣を交えての特訓を始めていた。


 しかし流石は護衛騎士か、純粋な剣捌きでは叶多では足元にも及ばず、頭でっかちと評される始末。


 剣を床に突き刺して身体を前のめりにした叶多。

 辛辣な言葉を投げたハインに限界まで顔を近づけ、真剣な眼差しを向けて言った。


「そのために、今こうやってあなたと剣を交えているんです! ……教えてください! 僕に、白虎に立ち向かうための剣術を!」


 真に争いを好まない叶多の心の内には、「なんで自分が力を授かったんだろう」、「悠君の方がふさわしい」という劣等感にも似た感情を常に抱えていた。


 しかし。その己の迷いこそが、何度も悠やルメリアを窮地に追いやることになっている原因だと気がついたのだ。


 元の世界でもこの異世界でも、悠君に守ってもらっていてばかりの人生だった。でも、これは悠君でもルメリアさんでもない、僕が授かった力だ。

 

 ──今度こそ、僕がみんなを守ってみせるんだ。


 熱意に負けたのか、苦そうな顔をしたハインは「分かった分かった」と言いながら数歩下がり、


「もちろん、僕としても四大獣の討伐は思うところがあってね。是非ともカナタに僕の剣術と魔法の全てを伝授してもいいと思っているよ。……ただ」


「……ただ?」


 なにやら意味ありげな接続詞をつけたハイン。

 復唱した叶多は、前屈みの体勢を戻し、神妙な面持ちで続きの言葉を待った。


 数秒の沈黙ののちにハインが言い放った言葉は、叶多の今後の人生を狂わすかもしれない決断を迫るものだった。


「─────────────────」


「……分かりました。それが、悠君たちの為だって言うなら……たとえ結果的に二人を裏切ることになっても……それでも僕は、やりきってみせます!」


「思っていたより良い回答がもらえて嬉しいよ。それじゃあ、僕の全てをもって、君に僕の力の全てを伝授しよう。二日間でね」


 そこから始まった、二日間にわたる苛烈を極めた特訓を見事耐え忍んだ叶多は、のちにこの異世界中に名を轟かせ”悪魔のカナタ”と恐れられることになるのだが、それを知るものはまだこの世界に“一人”しかいない。

  

×××××××


 草原に取り残された俺とルメリアは、川沿いまで特訓しに行った二人に負けないように同じく修行に励むのであった。


「ところでユウ。あなたは、魔素をどの程度まで扱えるの? Zランクなんていままで会ったことがないから分からないのよ」


「お察しの通りからっきしだけどなにか。何度も試してみてるけど、簡単な魔法はおろか魔素のま文字も出てこねぇよ」


「やっぱりそう……」


「なんだよ」


 早速諦めるのかよ、と自分の弱さとルメリアの非情さに突っ込みそうになるが、俺を凝視し続けたルメリアは、顎に手を当てて、考えを口にした。


「私、考えてたんだけど……。私の魔法で、ユウに魔法を無理やり使わせるのはどうかなって思って」


「無理やりって、俺のこと改造でもするつもりなのかよ」


「なに言ってるのよ、バカなの? 私の魔法で、あなたに魔素をあげたらどうかって言ってるのよ。試したことないし、成功するかは正直博打だけど……やってみる?」


「ものは試しって言うしな。やれることは全てやってみよう」


「分かったわ。それじゃあユウは、とりあえずそこで立っててちょうだい。あ。あと、あそこの石ころを手に持っていてほしいわ。私が魔法を使ったら、握りつぶしてみてほしいの」


「分かった」


 ルメリアの言う通り、その辺に転がっている手のひらサイズより少し大きい石ころを拾うと、所定の位置につき、魔法を使うタイミングまで待った。


 すぐに「いくわよ」と確認の合図がきて、俺は「いつでも」と短く返事をする。


「強化魔法!」


 背後から、何度か聞いたことのある魔法名が叫ばれ、ルメリアの声と共にそれは俺の身体に纏わりつく。

 しかしその感覚は一瞬だけで、すぐに蒸発するように身体から抜けていってしまう。


「「……………………」」


「──な、なにも起きないけど」


「もっと手のひらに魔素を集中させるのよ……ほら、腕から手に血液が循環するのを想像して、同じように魔素も手先に送るのよ」


 そそくさと近づいてきたルメリアは、俺の懐にさりげなく潜り込むと、腕を掴み、ブンブン振り回した。


 あまりの粗雑な対応に怒りを露わにしていい場面ではあるが、思春期かつ女の子耐性の皆無な俺にとって、この状況で冷静になれるほどの心の安寧は持ち合わせていない。


 俺はルメリアの手を振り払うようにして言った。


「……や、やめろよ! 集中できないだろ!」


「いや集中しなさいよ! 誰のためにやってると思ってるのよ!」


 残念ながら腕を掴む力は更に強くなり、非力な俺の力では敵わなくなってしまった。

 

 諦めた俺は、小さな溜息を一つこぼし、再び集中するために目を瞑り、雑念を振り払い己を律する。


 しかし。


「……あああぁぁああ! 駄目だ駄目だ! びくともしないってこの石ころ野郎」


「実験失敗、ね。やっぱり、正攻法で強くなるしかないみたい」


 期待していたのか、その反動で落胆するルメリア。

 厳しい顔をした赤髪の剣士は、両手で頬を大きく叩き喝を入れると、溜息を喉元に隠しながら言った。


「一から剣術を叩き込むから、ほら、切り替えていくわよ。そんなに落ち込まないの。ユウが落ち込んだりなんてしたら、それはもうユウじゃないわ。見ず知らずの他人も同然よ」


「別に落ち込んでるわけじゃねえよ。俺が弱いことなんて、俺が一番分かってんだ。今更そんなことでクヨクヨしてられるかよ」


「その調子なら当分大丈夫そうね。いいわ、早く私たちも特訓を始めましょ。ただでさえ元々強い二人のことだわ、こんな茶番をしている内に、みるみる強くなってっちゃうわよ」


 そう言い、軽やかな手つきで抜刀するルメリア。

 俺も鞘からシャープソードを抜き、ルメリアと剣の間合いを調整して、剣先を合わせる。


「準備はいい? 手加減なしでいくわよ」


「おう! 二日間みっちりしごいてくれ!」


 周囲に生えた立派な木から、一枚の緑色の葉が落ちる。その葉は、春の暖かい風と共に空中を漂い、やがて俺の足元へ落ちた。


 それを合図に、俺とルメリアは勢いよく地面を蹴った。

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