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俺の親友が異世界で最強枠になっちゃった話  作者: カトウアキ
第2章 白虎編

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18話 エニグマの存在

「ハインさん……追ってきてたんですね」


 緊迫する雰囲気の中、固唾を呑んだ叶多は慎重に言葉を投げた。


「君は、君自身の異常性にもっと早く気づくべきだよ」


「それは、僕が悪魔だから……ですか」


「ああそうだよ、悪魔の存在は一般には知られていないからね。もっとも、知ったところで彼らに対抗する術はない。だからこの国、スワイトを守る存在である僕たち護衛騎士が、秘密裏に処理するのさ」


 上から目線で髪をかき上げたハインは、俺達一人一人に鋭い視線を浴びせてから、「錬成魔法」と呟き、前回と同じく剣を錬成した。


 あれはただの剣ではなく、チェンソーにも変形できる器用な武器だ。他の形態を見たわけではないが、チェンソー以外にも多様な武器に変化できると考えた方がいいだろう。


 しかし今の俺達には絶賛成長中の最強の親友がいる。いくらハインとはいえ、タイマンで勝てるわけがなかろう。


「この前ボコボコにしたこと、もう忘れたのかよ。俺達もそこまで馬鹿じゃない、同じ手はくわないぜ」


 俺は警戒しつつ煽り口調で挑発を試みたが、相手に刺さることはなく逆に跳ね返ってきてしまう。


「君にやられた記憶はないんだけどなあ。その減らず口、一度殺したくらいじゃ治らないみたいだね。少しだけ期待していたんだけど……やっぱり僕の勘違いだったみたいだ」


 勝手に期待して勝手に失望するなよ、と突っ込みたくなる衝動を抑える。

 

 叶多の方を向いたハインは、続けて言った。


「この一週間、君たち三人のことを調べさせてもらったよ。出生リストから冒険者番号まで、くまなく調べたつもりなんだけど……どうしてか、カナタとユウ……君たち二人の情報だけは、なにも得ることができなかった。こんなことは初めてだよ。一体どういうことなのか、説明してくれるかな」


 ピンときていないルメリアが頭を斜めに捻るが、俺と叶多はその理由をすぐに悟った。


 しかし、異世界人に「俺達は異世界から来たんだ」なんてことを簡単に口走ってしまったら、どんな拷問尋問を受けるか分かったものじゃない。


 ルメリアは信用しているが、それでも彼女にも未だに言えていないのだ。この場で更にややこしくする理由も意味もないだろう。


 俺はあくまで平静を保ちつつ、質問攻めの護衛騎士に突っかかる。


「あんたに説明する義理がどこにあるんだよ。人の親友を悪魔呼ばわりして殺そうとしておいて、仮に知ってても今更教えるわけないだろ。叶多も、コイツに余計なこと言わなくていいからな」


 ハインの持つ剣に警戒しつつ、無言で頷く叶多。


「僕はカナタに聞いてるんだけどね……君はこの子の保護者かなにかなのかい? ……それに、一緒に行動してるそこのルメリアにも、今の様子を見る限りだとなにも伝えていないみたいじゃないか。命を預ける仲間として、それはどうかと思うよ」


 ハインから視線を逸らして俺の方を向くルメリア。


 せっかく築けた関係値をこんなところで失いたくない気持ちは勿論ある。言ってしまえば楽になるかもしれない。

 ただ、やっぱり俺達が異世界人だと暴露するにはリスクが高すぎるのだ。


 いずれルメリアには別の形できちんと言う予定だし、ルメリアがそれで態度を変えて敵になる、なんてことを思っているわけでもない。


 しかし今ではない、それだけは確かだ。


 俺は心の内でルメリアに「ごめん、話はいつかちゃんとするから」と呟き、戦闘態勢に移行しようとした。

 が、突然、錬成魔法を解き剣を霧散させたハインが両手を叩いて動こうとした俺を止めさせた。


「──とまあ、お喋りはこの辺で」


 なんのことかと様子を窺っていると、ハインは服のポケットからなにやら黒い球体を取り出し、手のひらに乗っけて俺達に見えるように広げる。


 数センチほどの大きさの、真っ黒い球状の物体。石のようにゴツゴツしているわけでもなく、ビー玉のようにカラフルなものでもない。


「これに見覚えは?」


「──あ!!」


 急に大声を出した叶多は、目を見開いて黒い球体をまじまじと見ると、「やっぱり同じだ」と呟き、同じくポケットから黒い物体を取り出す。


「僕も、同じの持ってます。拾ったんです」


「ほう、どこで?」


「えーっと……この前依頼で牧場に行ったときに見つけたんです。も、もしかしてハインさんの物でしたか!? だとしたらすみません、返します!」


 叶多はそう言い慌てて手を差し出したが、


「いや、いいよ。……しかし、君が持っているとはね。誰かが意図してるとしか思えない偶然だ」

 

 意味深な言葉と共に叶多の手を軽く払ったハインは、考える素振りをした後、再び口を開く。


「君たち、僕に協力する気はないかい?」


 髪をかき上げたハインは、屈託のない笑顔でそう言い放った。


「は?」と俺。

「え?」と叶多。

「何言ってるの?」とルメリア。


 さっぱり意味が分からないが、理由を聞かないことには話が始まらない。

 適当なことを言ったら叶多が魔法でとっちめるぞ、と考えながら口を開こうとした──が、先に口を開いたのはルメリアだった。


「国の護衛騎士が簡単に敵を受け入れていいのかしらね。残念ながら裏があるようにしか思えないわ。そんなにその黒い石が重要?」

 

「まあ、当たらずとも遠からずってところだよ。僕がここに来たのはたしかにこの黒い球体を探すためだ。君たちと遭遇したのは半分偶然だね」


 黒い球体を見つめながら話すハインに、叶多が質問をする。


「それじゃあハインさんは、この黒い球体を探していたら僕たちとばったり会ったから、ついでに攻撃してきたってことですか?」


「そういうことになるね」


 堂々とした口振りで言ったハイン。


 しかし仮にそうだったとして、俺達に協力を求める意味が全く分からない。

 それを持っているだけで、敵である俺達に協力を要請するほどの代物とでもいうのだろうか。


「そんな胡散臭い申し出、断るしかないだろ。どんな理由があって俺達に協力しろって言うのか、その訳を聞かない限りは、ルメリアの言った通り裏があるようにしか聞こえない」

 

 想定外の返しだったのか、困った顔をしたハインは、少ししてから口を開いた。


「ここから先は、他言無用でお願いしたいんだけど、いいかな」


「分かった」


 首を縦に振ると、「ありがとう」と一言いったハインは言葉を続ける。


「ここ最近、魔物や色んな動物たちが凶暴化する事例が数多くあってね。その現場には毎回、この黒い球体……僕たちはエニグマって呼んでるんだけど、それが必ず落ちている。解析に回した結果、どうやらこのエニグマには、四大獣の一部が使用されていることが分かった」


「……四大獣の、一部……」


 なにやら引っかかるところがあるのか、ルメリアは顔をしかめた。


「思い当たる節があるような顔だね」


 不服そうに頷いたルメリアは、思い出すようにしながら口を開く。


「……カナタが倒したゴーレムも、牧場で追い返したイノシシも、普通じゃあり得ないくらいの強さだった。もしかしたら、そのエニグマが関係しているのかも……」


 たしかに、坑道で戦闘になったゴーレムは倒したと思ったら急に覚醒して強くなったし、イノシシに関しても、ルメリアの一撃をくらっても動いていたほどだ。


 この話から察するに、ハインはエニグマを広めた元凶を探しているところに俺達とばったり出会(でくわ)した。

 しかし俺達がエニグマの犯人じゃないと分かったから、エニグマの犯人を見つけるために協力を要請してきた、ということだろうか。


「君たちが朱雀を討伐したことはベロニカさんから聞いたよ。あのあと見に行ったけど、まさか本当だったとはね。その力を見込んで……っていうのもおかしいけど、君たちにもエニグマの出どろこを探って欲しいんだ。ちなみに、断る権利はないよ」


 やっぱりそういうことか、と納得。

 ハインは、追われる身である俺達を脅しているのだ。

 エニグマの件に協力するならひとまずは逃しておいてやる。

 協力しないならこの場で捕まえる、と。


「それに、ルメリア……君には、四大獣を討伐しなくてはならない動機があるはずだ。この件を追っていけば、必ず君の求める答えが見つかるだろう。父親の失踪も、母親の死も」


 その言葉で血相を変えたルメリアは、ハインを睨むように一瞥する。


 父親が失踪していたことは聞いていたが、母親が死んでいたことに関してはルメリアの口からは一切出てこなかった。


 四大獣に母親が殺されていたとなると、ルメリアの旅の目的は、単に父親の捜索だけでなく、母親の仇──つまり四大獣の朱雀を除いた残り三匹の討伐、ということになる。


「……分かったわ。そこまで言うなら協力するわ。カナタとユウには、あとでちゃんと説明する。……隠していてごめんなさい」


 なんで最初から言ってくれなかったんだ、と言いかけたが、この場で問い詰めても意味はない。


「ルメリアがそう言うなら、俺達も協力することにするよ。ただし、条件がある」


「聞こうか」


 ハインは溜息をつきつつ言った。


 俺はその場で深呼吸してから、この場にいる全員が凍りつくことを言い放った。


「──少しの間でいい。ハインも、俺達と一緒に行動して欲しい」

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