11話 パーティ結成
「まずは資金集めから始めるわ、気合い入れていくわよ!」
右手を大きく上げ、元気いっぱいに叫ぶルメリア。
「お、おう」
「おー」
朝特有の眠気には勝てず、温度感の差に若干の気まずさを覚える。
昨晩、夜中まで続いた作戦会議の議題としては、
一、資金繰りの方法
二、仲間集めの必要性
三、どうやってルメリアのパパを探すか
の三本立てで構成され、各々意見を出し合った。
資金繰りに関してはこの世界初心者の俺達が分かるはずもないため、ルメリア主導で方向性を決めた。
それはズバリ、依頼だ。街に蔓延る様々な依頼をこなし、報酬としてお金を頂く。まさに冒険者といった稼ぎ方だ。
この街にもかなりの依頼があるとのことで、まずはそこから始めようという話になった。
そして仲間集めに関しては、俺とルメリアは不要派、叶多は必要派に分かれ、結果的にじゃんけんで叶多がルメリアを負かし、必要派の勝ち星となった。
不要派の意見としては、「最強の叶多がいるから他はお荷物」や「これ以上バカが増えると困る」等の意見があり、
必要派の意見としては、「いるに越したことはない」や「みんな僕に頼りすぎだよ! 争いは苦手なんだよ、僕」という意見があった。
最後の、ルメリアの父親の捜索に関して。この議題を話し合うのが一番難しく、この旅の目的でもあるため、慎重に話し合わねばならなかった。
第一に、ルメリアの父親は行方不明で、行方を知る人物にも心当たりはない。
その上でどう探すかだが、西の国スワイトには、人探し専門の裏稼業人がいるらしく、その人をあたればもしかしたら──ということで、一旦の目的地が決まった。
ただ万が一、父親が死んでいる可能性も考慮しなければならないと思いつつも、ルメリアの顔を見てしまうとそんなこと言えないと思い留まる。
ルメリアの家庭環境は知らないが、俺の家庭環境もまあまあなものだとは自負している。だからこそ、ルメリアにも同じ気持ちを味わって欲しくないし、もし万が一のことがあっても、折れない心を持ってほしいのだ。
と、昨日のことを思い返しながら歩いていると。
「──着いたわよ」
ルメリアの声で我に返った俺は、頭上の看板に《総合案内所》と書いてある建物へ入った。
最初の街にあった総合案内所と中身は全体的に似たり寄ったりな作りになっており、天井を壊したことを思い出してバツが悪くなるが、あれは致し方なかったと頭を横に振り雑念を振り払う。
「こんにちは。あのー、依頼を受けたいんですけど、短時間で効率よく稼げる依頼ってあったりしますか?」
受付の女性に声をかけるルメリア。
そんな闇バイトみたいな依頼、そう簡単にあるわけないだろ、と突っ込みそうになるが、気持ちを抑える。
「えーっと……ちょっと確認致しますので、少々お待ち下さいね。ちなみに、失礼ですが魔素ランクは測られましたか? 基本的には、ランク以上の依頼は受けられない仕様となってまして」
「大丈夫ですよ、うちにはAランクが一人いますので」
「えっ、ルメリアAランクなのか!? なるほど、通りであんなに強いわけか──」
「しーっ!! うるさいわね! カナタさんのことに決まってるでしょ」
受付の人に聞こえないレベルの最上限の大きさで俺の言葉を遮ったルメリアは、俺の口を必死に押さえながら受付の女性との話を再開する。
「な、なんでもないです、すみません。こいつ、Zランクで調子乗ってるんですよ、忘れてください」
不器用すぎる愛想笑いをかまし、その場を乗り切ろうとするルメリア。
──コイツ、平気で嘘つきやがるなおい。俺達にもなんか隠してるんじゃないだろうな。こっわ。
と口に出そうとしたが、ルメリアの力が思っていたより強く、周りには「うーう、うーうーううううううううううう。うううううううううううううううううううううううう」としか聞き取ってもらえなかった。
「は、はあ。……では、そちらの男性の方がAランクということですね。準備して参りますので、そちらにかけてお待ち下さい」
入り口横に設置された腰掛け用の椅子に誘導され、しばしの待ち時間となった。
「ところでルメリア、叶多のAランクって、そんな安易に言っていいものなのかよ? 嘘がバレたりしたらまた追放ですなんてことにはならないよな」
「大丈夫よ。だってあなたも聞いてたでしょ? ベロニカさんの言葉。普通の人は、悪魔なんて言葉知らないわ。わざわざ、あそこで変に誤解を招くことを言う必要はないわ」
「そりゃそうだけどさ……。それに、下手にAランクとか言っちゃって、今の叶多の手に負えないやばい任務とかだったらどうするんだよ。それこそ本末転倒だぞ」
俺が心配しているのはそこだ。
ハインとの戦闘では暴発したりの騒ぎにはならなくて済んだが、叶多がいま、悪魔と呼ばれるキャパシティー以上の魔素が溢れ出ている状態なのだとしたら、いきなりAランク任務をするよりまずは低ランクから徐々に上げていく方が叶多の負担が少ない、ということだ。
黙って俺達の話を聞いていた叶多は、「まあまあ」と口論を続ける俺達をなだめ、続けて言った。
「悠君の言いたいことも分かるよ。多分、僕を心配してくれてるんだと思う。でも、僕頑張れるよ! とりあえずはルメリアさんでもこなせる依頼を一緒にやって、その間に僕が強くなっちゃえばいいんだよ」
「そ、それは……」
「ルメリアさんも、それでどう……ですか?」
「私は、それでもいいですけど……。実は私……剣はそれなりに自信あるけど、魔素はFランクなんですよね……。だから、あまり効率のいい任務を受けられなくって」
「そうなの!? 俺と同じレベルだったのか! 全然知らなかったよ」
「ユウなんかと一緒にしないでよね!! あなたはZ、私はF。この間にどれだけ差があると思ってるのよ。Zなんて聞いたことないもの。最底辺よ最底辺……でも」
語尾に少しだけ言葉が詰まったルメリアは、少しだけ考える素振りを見せ、続けた。
「でも、カナタさんがそれでいいなら、私もおともしますよ。カナタさんいてこそのこのグループですから!」
「ルメリアさん……ありがとうございます! 僕、頑張ります!」
場の空気は謎の一体感に包まれ、急な疎外感に頭を抱えてしまう。
ただまあ、叶多がいいならいっか。
というのが俺の結論だった。
「──お待たせ致しました、冒険者様」
裏から戻ってきた受付の女性が、申し訳なさそうな口調でカウンターに立ち、言った。
「もしかして……なかったですか? 依頼」
心配そうな顔で質問するルメリア。
「はい、申し訳ございません。ただいまCランク以上の任務は全て受注済となっておりまして、今現状受付可能な任務はDランクまでとなっております。……いかがされますか?」
三人で顔を合わせ、少し目配せする。ただ、最終決定権はこの地に詳しいルメリアがすると昨晩決めたため、俺達は頷くしかない。
「じゃあ、Dランクまでで貰えるお金が一番多い任務をお願いします。種類は問わないので、一番お金が貰えるやつで!」
「かしこまりました、いくつか候補を持ってきますので、その中から一つお選び下さい」
そう言い、再び裏に戻った受付の女性は、数十秒ほどですぐに戻ってきた。
白いA4くらいのサイズの紙を三枚カウンターに並べると、一つずつ内容を読み上げてくれた。
「左から順番に、討伐依頼、捜索依頼、雑用依頼となっております。どれもここ最近依頼されたものになりますので、受注者は誰もいない状態です」
書き方はシンプルで、一番上に討伐対象や内容にちなんだ写真が貼ってあり、その下に報酬金、期限が書いてある。捜索依頼と雑用依頼に関しては補足事項が細かく記載があり、少し面倒そうだ。
「ルメリアさん、どれにしますか?」
「うーん。見た感じ、討伐系にしては大したことない魔物だけど、かなり報酬が良いのよね……。よし、これにしましょ」
一切の迷いなく討伐依頼を指差したルメリアは、やる気の満ち溢れた顔で受付の女性に紙を渡した。
報酬は三十万Gと書いてあり、多いのか少ないのか全く分からないが、日本の基準でいくと相当高いといえる。
あとでお金の価値を聞いておかないとな、なんてことを思っていると、討伐依頼の紙を見た受付の女性が思わぬことを口にした。
「かしこまりました。ではこちらで受理しますので、代表者様のお名前と、今回複数名での任務になりますので、パーティ名を伺えますか?」
「えーっと。代表者はカナタさんで、パーティ名は……チームカナタ!」
いくらその場で決めたとはいえ、あまりのセンスの無さに呆れて苦笑する、俺と叶多だった。




