オンライン 【7】
「え、ちょっと、どこ行くの?」
集合場所だった広場から、もうだいぶ歩いてきた。
「よし、じゃあここで一回休憩しよ」
それから魔導士ちゃんが足を止めたのは、人気も少なくなってきた場所にあるコンビニの前だった。
そこで少し早めの昼飯を食べてから、500ミリリットルの水を買う。
休憩が終わると、再び魔導士ちゃんに連れられて、また歩き出した。
「人も少なくなってきちゃったし、どこに行くの?」
俺の手を引きながら、少し前を歩く魔導士ちゃんに訪ねる。
「もう着いたよ!」
不意に前からかけられたら言葉に、疲れて下を向いていた顔が上がる。
連れてこられたのは、人の全く通らなさそうな橋の下だった。
地面に大きな丸い石ころが転がっていて日陰になっているそこは、大きな蜘蛛の巣まで張っている。
「ふー、もう一回休憩!」
そう言っておでこに手を当てた魔導士ちゃんは、ふとこっちを見てから呟く。
「要、いきなりでも来れるじゃないですか。えっと、服も……かっこいい……」
「あ、有り難う……」
俺は仰いでいた手を止め、魔導士ちゃんの方へ顔を向ける。
先程は勢いで引っ張られたりしたせいでよく見ていなかったけれど、彼女はオンラインゲームのアバターとは全く違う服装で、薄い青色のワンピースを着ていた。
膝の位置まで長いそれは涼しそうで、清楚な雰囲気まで漂わせている。
視線に気付いたのか、少し頬を赤らめたのがわかった。
「こっ、これ……どう、かな」
「えっ……」
服の感想を求められるなんて考えてもいなかったことだ。
頭上では一台トラックが通って行ったのか、重い音が頭に響く。
「えっと……そのワンピースの色、俺、好きだよ」
「ふへへ、有り難う」
そう言うと、魔導士ちゃんは、赤らんだ頬を更に赤らめた。
女子って、褒めただけで、こうも変わるのか?
魔導士ちゃんの可愛らしい表情が、笑いでくしゃっと歪む。
「……それより、何でこんな所に?」
目の前には、橋で陰った川に、そこに浮くアルミ缶がある。
周りには足首まである草が生えていて、雨で濡れたのか、水滴をつけていた。
一瞬、とてつもなくデート場所選びのセンスが悪い奴かと疑ってしまいそうになったのだが。
「こういう人が少ない所の方が良いの」
「へぇ……」
それもちょっと、どうかと思ったのだが_____
「異世界に行くにはね」
「……え?」
いきなりで理解のできなかったまま、思わず聞き返してしまう。
「もう! 昨日メールで言ったでしょ、魔導士だって」
え、あれ、本当だったのか!?
しかも、「異世界に行くにはね」って、サラッとそんなこと言われてもっ!
「だって私、異世界の人間だもの」
本当に魔導士だったなんて。
更に、異世界の人間だなんて。
でも俺は、この二日にして、魔導士ちゃんのことを好きになっていた。
うるさいくらいに高鳴っている心臓が、それを明らかにしている。
「……それで、今日は?」
「うん、要を、みんなに紹介しに行くんだよ!」
こうして、ご両親へ挨拶に伺うこととなりました。




