異世界人 【9】
「まず移動の仕方ですが……」
場所は校庭。
遊具はなく、茶色い地面の回りに、ただととのえられた短い草が生えているだけだ。
生徒は全員1列に並んで、その前に先生が立って指導している。
「目を閉じて、行きたい場所を思い浮かべてください。やってみてください?」
全員が目を閉じる。
静かな時間が響いた。
俺は勿論、自分の家の部屋を思い浮かべる。
「着地するのは想像したまんまのところですから、クッションになるようなものも思い浮かべると良いかもしれません」
となると、ベッドかな。
早くもとの世界に帰りたい。
移動する合図は、いろいろと言葉を唱えたりするっぽいけど……
「今から言うことはまだやってはいけませんよ。では想像したら、そこの場所に行きたいと強く念じるんです」
なんだ、念じるだけか。
簡単じゃないか?
「……さて、じゃあ今想像していた場所はひとまず置いておいて、目を開けてください」
念じろ念じろ……
俺は目を閉じたままで、想像した自分の部屋のベッドを思い浮かべながら念じようとする。
これで成功すれば、帰れるのだ。
なのに。
「一度ためしに移動してみましょうか。まだ目は閉じないで。さあ次はこの学校にある大きな森、そこの一角にある……要くん、どうしたの? 目を開けていいのよ?」
飛べ飛べ飛べ……
……ん、森……?
余計な言葉が入ってきた。
俺の想像のなかは、一面緑に変わる。
森でいっぱいになる。
「か、要くん! まさか移動しようとしているんじゃ……!」
先生が慌てている様子が伝わってくるが、手遅れのようだ。
そのまま、俺は落ちていった。




