魔導師生活 【5】
緑が見える。
森か? 違う、寮だ。
大袈裟に表現するとなると、とてつもなく広い。
……ただ、広い。
「え……ここが、寮……」
想像していたような簡単なものではない。
もう、エレガント‼
エレガント?
何か、古くて味のある建物だけど、凄く優雅な雰囲気を放っているやつ。
「実際に魔導師同士で戦う闘技場もある」
「す、すげぇ」
目の前には、焦げ茶色の横に長い大きな建物。
あまり言葉の知識がない俺には説明が難しいかもしれない。
その建物の真ん中の場所は半円の形に切り取られたようになっていて、渡り廊下に続いている。
奥にも二つ同じような建物があるのが見えた。
左右にも、その三つの建物を挟むように同じ建物があって、右は横に長めの建物。
左側は少し短めなような気がする。
どの建物も三階建てだ。
「真ん中にある三つの建物は校舎のようなものだ。左右にあるのが寮になってる」
「なるほど」
「右にあるのが、認定された魔導師。左の寮は、見習い魔導士の寮」
うんうん、もう凄いってことはよくわかったから。
右側の寮から数人が出てきて、真ん中にある校舎だという建物に入っていった。
「で……その、異世界、つまり俺がいた世界から来て魔導師になったっていう奴はどこにいるんだ?」
「こっちだ」
シャープな声で言って、またスタスタと歩き出す。
向かったのは右側にある、認定された魔導師のいる寮だ。
その二階。
シャーロが、その魔導師がいるという部屋のドアをノックする。
男か女、どっちだろう。
普通に考えると、俺は男だとばかり考えてしまう。
「はい」
中から声が聞こえた。
あれ、少し声が高い。
男の娘かな?
分厚いドアが少し開き、ひょっこりと顔が覗く。
「えっ」
「あ、シャーロ。久しぶりです。それで、隣の人は」
少し眠そうに喋るが、何処か聞きやすい、落ち着いた声。
多分今の俺は、口が半開きだろう。
だって目の前に立っているのは、男の子でも男の娘でもなくて、女の子だから。
「要くんだよ。リサと同じで異世界から来て、魔導師認定された人間だ」
シャーロにリサと呼ばれた女の子は、驚いたように少しだけ目を見開く。
けれど、元からの眠そうなジト目のせいか、眉が上がっているだけのように見える。
「ほほう、要さんですか」
眠そうで、感情のあまり入らない無機質な声だ。
なぜかハマる。気に入った。
変わらないジト目のまま、右手を顎に当てて見回してくる。
「……要さん、一言も喋ってないです」
おそらく俺の口は、まだ半開きのまま。
いや、だって、女の子だなんて考えてなかったし!




