魔導師生活 【1】
上を見上げると、さっきまでの分厚い雲はなくなって、何もなかったように青い空が広がっていた。
そこを、真っ白な雲が流れていく。
「せっかくのデートが台無しになっちゃったけど、有り難う」
「ううん、良いよ。ちょっとビックリしたけど」
俺はそう言って、苦笑いをする。
異世界なんて勿論初めて来たし、こんな事になるなんて想像もしていなかった。
「案外危険なんだよ」
アイリも苦笑いを返して、「帰ろうか」と立ち上がる。
「いっ……!」
しかしアイリは、膝を伸ばし終える前に、崩れるように倒れてしまった。
顔を少し歪めながら、足首を押さえている。
捻挫なのだろうか。
そうなら、きっとあのドラゴンに突き飛ばされたときか。
「大丈夫? 俺、おぶってくから……ほら」
アイリに背を向けると、その場にしゃがむ。
少し恥ずかしいけど、一応彼氏だからな。
有り難うと呟いたアイリは、ゆっくりと背中にまたがってきた。
「重いかも……」
「全然。それより、アイリは?」
「大丈夫……」
歩いてきた道を、記憶を辿りながら引き返す。
後ろから回されたアイリの腕が少し動くと、首に息がかかった。
ちょっ、近いっ……!
顔が赤くなるのを感じながら、ただ歩く。
周りは木が少なくなってきて、遠くの方に少しずつ木で作られた家が見え始めていた。
◆
「た、ただいま帰りました」
ぎこちなく挨拶をすると、奥のキッチンからアイリのお母さんが出てきた。
アイリをおぶる俺の姿を見ると、驚いたように目を見開く。
「おんぶなんかしちゃってぇ~」とでも言いたげに、少しニヤニヤしている。
「要くん、どうしたの? それにその格好‼ 素敵じゃない⁉」
今着ている服にも反応しているようだ。
恥ずかしい。
「あ、デート先でドラゴンが現れて……戦おうとしたアイリが突き飛ばされちゃって……」
それから、ついさっきあった出来事を話した。
「えぇ! 凄い! 要くんが本当の魔導師になったなんて!」
「いえいえ、そんなことより、アイリを……」
恥ずかしかったのもあるけど、アイリの方が心配だったから、苦笑いをしながらも部屋まで運ぶことにした。




