異世界探索 【10】
「うっ……」
少し後ろの方まで飛ばされた体。
地面に叩かれて腰を軽く打ってしまった。
それほど痛みはない。
「だから、下がってって言ったのにー!」
「でも、女の子一人で戦わせるわけにはいかないでしょ!」
「いや私、これでも魔導士だからっ」
本来なら中二病に聞こえるはずのそれが、とっても真面目に聞こえる。
ドラゴンの頭は、雲の間から完全に出てきてしまっていた。
真っ黒い皮膚は鎧のように固そうで、それにおおわれた長い首の背には、鋭い針のようなものがついている。
「嘘だろ、こんなの倒すのか⁉」
「倒せるかは、わかんない!」
げっ。
今、少し開いたドラゴンの口から赤い炎のようなものが見えたのは、気のせいか。
「ひゃっ!」
「気のせいじゃなかった⁉」
ドラゴンの口から結構本気で吹き出される炎に、戦おうとしていたアイリが飛ばされる。
これはヤバイぞ、と動けないでいると、後ろでシュインッと軽やかな金属音が聞こえた。
振り返ると、アイリの手には、アイリと同じくらいの大きさのオノが握られていた。
もう既に汚れてしまった手を振り上げて、アイリがドラゴンに切りかかって行く。
「ちょ、マジ⁉」
流石の俺でもビックリした。
アイリが振ったオノは、ドラゴンのお腹に刺さる。
「くっ……えっ!?」
食い込んだと思ったそれは浅く、すぐに飛ばされてしまう。
後ろに転がっていって立てないでいるアイリを、前足を大きく上げたドラゴンが襲おうとする。
全長は、どうだろう。
十メートルくらいある木は、余裕で越している。
もしかしたら三十はあるかもしれないと考えた。
「あっ!」
考えている間にも、ドラゴンはアイリに迫っていく。
気づくと俺の体は、アイリに迫るドラゴンの方へ、自然と踏み出していた。




