異世界探索 【9】
青い空。
昨日、初めて来たときに見たのと同じように、今日も町は賑わっている。
お店の前で雑談をする女性達、足元を駆けて行く子供達。
暖かい太陽の匂いもするような気がしてくるほど、そこは幸せそうな空気に包まれていた。
アイリに手を引かれたままの俺は、その間をずんずんと進んでいく。
そんな町を抜けると、再び森の中に入っていく。
それから更に森の奥へ進む。
「ちょっと、暗くなってきてない? 大丈夫?」
周りは、気味が悪いほどでは無いけれど、暗くて寒いような雰囲気が漂っている。
コウモリでも飛び出してきそうな感じだ。
けれど何故だか、怖くはない。
「あとちょっとだから!」
俺の手を引っ張るアイリの力が強くなり、歩くスピードが早くなる。
どこまででも続いて行きそうな道を進んでいくと、急に明るくなり、視界が開けた。
「うっ……」
空からストンと落ちてくる光が目に飛び込んできて、視界がくらむ。
そこは木が切られ、ぽっかりと丸く空が見えていた。
緑の布に穴が開いたようだった。
「綺麗でしょ?」
「うん、ほんと、綺麗だ……」
地面に向かって真っ直ぐに降りた光が葉の縁に反射して、そこを白く光らせてた。
それに見とれていると、その縁の白く反射したところは、だんだんと光をなくしていく。
気づけば空も暗くなっていて、横に立つアイリの動きも、少し慎重になっていた。
「うそ……要、下がって……」
アイリの声が低くなる。
それと同時に震えていた。
「ど、どうしよう……私まだ、何も覚えてないのに……」
「アイリ、どうしたんだ?」
言われた通り後ろに下がりながら、アイリに向かって問いかける。
木が切られたところに丸く覗いている空には、紫色に近い不気味な雲が渦を巻いている。
「ドラゴンが来る……」
「え、ド、ド?」
目を見開いてアイリに向けた視線を空へ戻すと、先ほどぐるぐると渦巻いていた雲からは、ドラゴンが顔を覗かせていた。
嘘だと願いたい。
ドラゴンなんて、今は存在しない生き物な筈だったのでは?
そうだ、これは夢だ。
そう思って頬をつねってみても、ジーンと響く痛さが、現実だと言ってくるようだった。
「うそ、本物のドラゴン!?」
マジか、とアイリの方を見ると、アイリも慌てた様子でドラゴンを見つめていた。
アイリのお母さんが言っていたのは、これか。
俺にある程度の戦闘能力がないと、アイリを守ることができない。
だから心配していたのだ。
さっき通った、子供達や女性で賑わう町とは真逆の森の中。
「どうすんだっっ……!?」
そう聞こうとした瞬間、強い風が体全体にぶつかった。




