異世界探索 【6】
「あら、魔導士ちゃんって何?」
魔導士ちゃんとの会話ではしゃいでいると、向かいで俺達の話を聞いていたらしいお母さんが訪ねてきて、視線を戻す。
「彼女に、魔導士ちゃんって呼んでと言われたので」
そう答えると、お母さんの隣でケーキを食べていたお父さんもこちらを向く。
「彼氏なのに、名前を教えていないのかい?」
「うん、ごめんなさい。異世界の人間だってわかったら、嫌われちゃうかと思って」
すると、魔導士ちゃんが体ごとこちらを向く。
「私、本名は、クラム・アイリって言うの」
「クラム?」
「ううん、アイリって呼んで!」
アイリはそう言うと、ニカッと笑う。
良い名前だなと思いながら、アップルパイの甘さをリセットするように、ほろ苦いチョコレートケーキを口に運んだ。
相変わらずスイーツなのに変わりはないが、チョコレートケーキに使われたビターチョコレートのお陰で、少しくどさは薄れた。
そんなやり取りを見て微笑ましくなったのか、アイリのお母さんが、追加でパイ作ったらしいパイを運んでくる。
こんなにいっぱいスイーツが出るとは思ってもいなかったけど、甘党なほうで良かった。
もし甘党じゃなかったら、アップルパイとケーキを少しだけ食べたんでも、気持ち悪くなっていたかもしれない。
「そう言えばアイリ。異世界の人間だってわかったら嫌われちゃうかと思ったって、どういうこと?」
パイを運んできた満面の笑みのまま、隣に座るアイリに問いかけている。
「あはは……要はね、異世界の人間じゃないんだよ。何て言ったら良いのかなぁ、私もよくわからないけど、この世界から見た異世界に住んでる」
「異世界……って、それじゃあ不安よ! アイリ、良いの? 要くんと結婚して」
えっ、いつの間にか、というか何か結婚の話になってる⁉
というか、不安⁉
「要くん、経験値とレベルはいくつあるの? 異世界からってことは、戦った経験も無いんでしょう?」
少し前のめりになりながら聞いてくるお母さんを、アイリがまぁまぁと落ち着けている。
「大丈夫だって。ほら、これでも私だって魔導士なんだから。見習いだけど」
両手を腰に当てて胸をそらしたかと思うと、チロッと舌を出した。
ここの世界の人と結婚するには、どうも経験値やレベルがないと、親の方が不安らしい。
ちゃんとお嫁さんを守れる人の方が安心できるのだとか。
それなら俺も、経験とかを集めなきゃいけないのかな?
って、なんだ俺、結婚する気満々じゃないか。




