異世界探索 【5】
残りの部屋も、彼女がササッと紹介してくれた。
お父さんの隣はお母さんの部屋。
その向かい側に、書斎と彼女の部屋などがあるのだと。
「ここを上れば、物置小屋みたいなところがあるんだ。小さい頃は、よくここで遊んでたの」
そう言って、まだ上へと続く短めの階段を指差す。
見上げると、チラッと見える天窓から光が差し込んで誇りが舞っているのも見えつつあるが、なんだか楽しそうなところだと思った。
小学校くらいのときの俺なら、真っ先に上って遊んでいたことだろう。
大きなリビングに、上から吊るされた、飾らないけれど綺麗な灯り。
二階にはそれぞれの部屋や書斎があって、窓から入る光に照らされる廊下。
それに物置小屋まである。
俺的に、あまりに理想過ぎて感動していると、下から綺麗な高音の声が自分達を呼ぶのがわかった。
「要くーん、いらっしゃい!」
呼ばれた一階へと階段を下りると、またまた驚きで目が見開く。
木でできた焦げ茶色の大きな机には、これでもかと思うほどの大きさのパイと、ワイングラスに注がれたジュースやらが並べられていた。
そんな机の中央には、これまた大きすぎると言えるくらいのケーキが。それも三段。
パイもあるのにケーキもあるのか。
甘いものばかりじゃないか太るぞ!
と突っ込む隙もなく、綺麗に飾られたそれに、ただただ圧倒されていた。
「す、ごい……」
隣では彼女が、「ケーキだぁ!」と目を輝かせている。
「今晩はご馳走。沢山食べなさいな!」
「はぁーい!」
歓迎されている俺よりも真っ先に手を挙げてケーキに駆け寄っていく彼女の姿に笑いながら、その後に続いて席につく。
相変わらず広い机は、四人では寂しいような気もする。
まぁこの家には、あとお婆さんとお爺さんがいるらしいのだが。(散歩中らしいな)
「いただきます」
胸の高さのところで手を合わせると、甘い香りをいっぱいに放つアップルパイを口に運ぶ。
パイの中に入った林檎はすぐにとろけて、口の中で広がっていく。
「んっ! 凄い美味しい!」
「喜んでもらえて、何より」
目の前に座る魔導士ちゃんの両親と顔を合わせる。
ふわりと微笑む魔導士ちゃんのお母さんを見ると、何だかくすぐったい気にもなった。
「私のお母さんね、いつも料理に、美味しくなーれって魔法をかけてるんだよ」
目を輝かせながら、ずいっと顔を近付けてくる。
俺の母親もそんな事を言っていたけど、ここだと本物の魔法をかけてるってことになるのか。
「魔導士ちゃんの家のご両親、凄く綺麗で優しい方だね」
「えへへっ、そうでしょ?」
甘いアップルパイを食べながら魔導士ちゃんに微笑むと、それ以上に口いっぱいにアップルパイを詰め込んだ魔導士ちゃんが、ふんわりと微笑み返してくる。
そんな笑顔を見ると、いつも胸が高鳴るのだ。
彼女いない歴、二十三年。
どうやら俺は、本格的に人を好きになったらしい。
楽しそうにケーキも頬張る魔導士ちゃんを見ながら、自然と俺の頬も緩んでいたのだった。




