異世界探索 【4】
「じゃあ、その間に、家の中を案内するよ」
そう言って歩いていく魔導士ちゃんの後を追って、二階へ続く階段を上っていく。
上ってすぐにある薄暗い廊下に、木でできた焦げ茶色のドアが並んでいる。
一番左の部屋まで行くと、順番に説明していってくれる。
お父さんとお母さんの寝室、お爺ちゃんの部屋、お祖母ちゃんの部屋。
今は散歩に行っているらしい。
「まだまだ元気なんだな」
そう言うと、「まーほーうーのー?」「はい、力です」
ホントに魔法とか、すげぇな、と思った。
そして。
「その次が、お父さん」
「ぐっ、お、お父さん……」
それを聞くと、自然と背筋が伸びる。
な、なんだ。
別に結婚する訳じゃないのに。
「娘さんを僕にくださいとか、言わないんだし、き、緊張する必要なんてっ……」
「要~? 心の声が漏れてる」
「えっ、嘘っ!?」
そう目を細めて覗き込んでくる魔導士ちゃんに、少しドキッとしてしまう。
お母さんと似た薄茶色の髪には少しウエーブがついていて、いかにもサラサラそうなそれは、揺れるたびに窓からの光を反射させていた。
「今、いると思うよ?」
ドアを三回ノックすると、部屋の中から心地の良い低音の返事が聞こえてくる。
「し、失礼します……」
「おう。お、君は……?」
壁の本棚にずらりと並べられた本。
それに囲まれた真っ黒なパイプ椅子に深く腰かけていた男性が、こちらを向いて目を細める。
少しばかりつり上がっていても優しさの伝わってくる目は、先ほど覗き込まれたときに見た魔導士ちゃんの目と似ていて、やはり親子なんだと感じる。
「初めまして、和泉 要と言います……」
「お父さんっ、私の彼氏だよ!」
自分の後ろからひょっこりと顔を出す魔導士ちゃんに、ざっくりと説明される。
すると、優しく穏やかそうなお父さんの目が見開かれる。
「君が要くんか!」
「は、はい、そうですけど……?」
「いやー、いっつもコイツの部屋からカナメカナメって聞こえてくるから、何だと思っていたけど、彼氏くんのことだったんだねぇ!」
また“いっつも”か!
隣に並んだ魔導士ちゃんを見れば、見たことのある照れ笑いを見せている。
「今日はパーティーだな! 色々と準備をするから、少し待っていなさい」
そう言って立ち上がり、「お母さーん!」と一階へ下りていってしまった。
「要、凄い歓迎されてるね」
笑窪のできた可愛い笑顔を向けてくる魔導士ちゃんにドキドキしながら、そうだねと返す。
「うん、良かったよ」
「へへっ、それって、結婚してくれても良いってコト?」
「えっ、そ、そのっ!」
結婚してくれても良い……それを否定できなかったのは、なぜだろう。
自分の頬の赤らみが更に濃くなったのは、気のせいではない。




