第4話 ボンっ
気絶した少女を日陰まで運び、木にもたれさせる。
俺もその隣に腰を下ろし、服の裾で顔を拭った。
「うーわ最悪ー」
べっとりと血がついた。
ただでさえ黒かった寝巻きが、ところどころ赤黒く染まった。
「はぁ」
ため息をつきながら、改めて少女を見る。
白いブラウスに紺色のスカート。胸元には小さなリボンが結ばれ、腰には革のベルト。足元は膝下まで
ある編み上げのブーツ。
「…ザ、なろうヒロインってかーんじ」
しばらくすると、
「ん…」
少女のまぶたが、ゆっくりと開いた。
「大丈夫かい?アンタ」
少女はぼんやりと辺りを見回し、身体を起こす。
そして、俺の顔を見た。
「あ、あなたは……?」
「どうも。化け物です」
「あっ!」
少女の顔色が変わる。
「す、すみません! 助けていただいたのに、私、酷いことを……!」
慌てて頭を下げた。
「別にいいよ。気にしてないし」
「お名前、聞いてもよろしいですか?」
「名前?俺は向井佑磨。よろしく」
「ゆうま?不思議な名前ですね」
「そう言うアンタは?」
少女は姿勢を正すと、胸に手を当てた。
「私は、ノエル・オディウム・アモール・ミゼリコルディアと申します」
「のえる・おでゅ…なんて?」
「ノエル・オディウム・アモール・ミゼリコルディアです」
「ノエル・オデュウム・あm…。キスショットの本名くらい長いな。お前の父親はとち狂ってんのか。読者が、そんなバカ長い名前覚えられるわけないだろ」
「…ノエルでいいです」
「ノエルちゃんね。よろしく」
「よろしくお願いします」
「はい。よろしくお願いします」
ノエルがぺこりと頭を下げる。
「ところで、佑磨さん」
「ん?」
「珍しい格好をされていますね。どちらから来られたんですか?」
自分の格好を見る。血まみれの寝巻き。確かに、この世界じゃ珍しいどころの話じゃないな。
「日本って所から来たんだ」
「にほん…?」
ノエルが首を傾げる。
「聞いたことのない国ですね」
「そりゃそうだろ。別の世界だし」
「?」
ノエルは、不思議そうな顔をした。
「えっと…では、佑磨さんもアルセリア王国へ向かわれているのですか?」
「アルセリア王国?」
「え?」
「なにそれ?」
ノエルが目を丸くする。
「ご存じないんですか?」
「まったく」
「人類唯一の国ですよ?」
「知らない。教えてよろしくノエルちゃん」
ノエルは少し困ったような顔をしたあと、説明を始めた。
「いいですか? アルセリア王国というのは、この大陸の西部に位置する、人間族唯一の国家です。王都アルセリアを中心に、多くの街や村が存在しています」
「へぇ…」
王国。王都。人間族。
単語の一つ一つが、俺の中二心を刺激してくる。
「なんか、ますます異世界って感じしてきたな。ちょっとワクワクしてきた」
「ワクワク…?」
「あぁ、こっちの話だから気にしないで」
「私は用事があって、そのアルセリア王国へ向かっているところなんです」
「へぇ。じゃあ俺もついて行っていい?」
「え?」
ノエルが露骨に困った顔をした。
「…途中までなら」
「どうも」
ノエルがふと空を見上げる。
「もう日が暮れそうですね」
言われて俺も空を見る。いつの間にか、空は赤く染まっていた。
「今日はここで休みましょう。私、焚き火に使えそうな木を集めてきます。佑磨さんは、休んでいてくだ
さい」
そう言い残し、ノエルは森の奥へ消えていった。
1人取り残される俺。
その場に倒れ込む。
「あー…ドーパミンが足りない」
ここまで携帯を触らないのは、いつぶりだろう。ドーパミンが足りなくて死にそう。
「なんか、なんか、暇を潰せるもの…。あ、ステータスとかどうなったんだろ。ゴブリン倒したしレベル上がったら」
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向野 佑磨 Level.2
年齢:18歳
職業:魔法使い
ステータス
HP:18/18(+3)
MP:11/13(+3)
攻撃:3(+1)
防御:4(+1)
素早さ:2(+1)
力:3(+1)
知力:4
運:12
スキル
{火}ファイア 【MP5】
{爆}ブラスト【MP7】 NEW
{水}ウォーター【MP3】 NEW
ユニークスキル
縺ェ繧薙□縺薙
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「レベル上がってる!」
Level.1からLevel.2。
しかも──
「魔法、増えてんじゃん!」
新しく追加されているのは二つ。
【ブラスト】と【ウォーター】。
「今回は新魔法お披露目回ってことね?」
さらに、さっきゴブリンとの戦いで空っぽになったはずのMPが、いつの間にか11まで回復している。
「MPって自然回復するんだな」
どれくらいの速度かは分からないが、これはありがたい。
「よ~し、暇だし使ってみっか、新魔法」
暇つぶしも兼ねて、ちょうどいい。
俺は立ち上がり、手のひらを前に向けた。
「まずは安全そうな方から…【ウォーター】!」
手のひらが青白く光る。
「おおっ!」
チョロチョロチョロ…。
「…………?」
手のひらから、細い水が流れ落ちた。
チョロチョロチョロ…。
「なんだこれ!ジジイの残尿の方がまだ出るぞ!!!」
やがて水は止まった。
地面に、小さな水たまりだけが残る。
「…」
何だったんだ、今の。
「まぁいい。次だ次」
ウォーターがハズレだっただけだ。もう一つある。名前からして、明らかに強そうな魔法が。
「よし」
俺は適当な木に狙いを定め、右手を突き出した。
「【ブラスト】!」
ドォォォンッ!!!
「ぎゃあああああああああああああッ!!?」
凄まじい衝撃が全身をぶん殴り、俺の身体が宙を舞った。
向野 佑磨 LEVEL.2
年齢:18歳
EXP:0 / 10
職業:魔法使い
HP:10 / 18(‐8)
MP:0 / 13(-10)
攻撃:3
防御:4
素早さ:2
力:3
知力:4
運:12
【スキル】
{火}ファイア【MP5】
{爆}ブラスト【MP7】
{水}ウォーター【MP3】
ユニークスキル
縺ェ繧薙□縺薙




