第5話 オール・ハイル・ノエェェェルゥゥゥ!!!
「あ゛あ゛、いってぇ」
ひどく身体が痛む。
「自爆魔法とかマジかよ…!マジで…クソ!」
全身を襲う激痛に顔をしかめながら、なんとか身体を起こす。
「はぁ…マジで、爆発オチなんて頼るから評価低いんだよこの作品」
遠くからノエルがものすごい勢いで走ってきた。
「すごい音がしましたけど……って、怪我してるじ
ゃないですか!? 大丈夫ですか!?」
「…今のマーベル映画くらいの身体の状態」
「つまり…」
「全然大丈夫じゃないってこと」
そこで俺の意識は途切れた。
パチパチッ。
薪の爆ぜる音が聞こえる。
ゆっくりと目を開けると、すぐ近くで焚き火が燃えていた。
「あ、起きました?」
視線を向けると、ノエルが心配そうに俺の顔を覗き込んでいる。
「あ、あぁ…痛ッ!」
身体を起こそうとした瞬間、全身に鋭い痛みが走った。
「あ、ダメですよ動いちゃ、すごい怪我だったんですからね」
それでもゆっくり身体を起こし、背中を木に預ける。
ノエルが首を傾げた。
「それで……一体、何があったんですか?」
「…新しく覚えた魔法を使ったら、威力が高すぎてこうなったんだよ」
「魔法……?」
ノエルは不思議そうな顔をした。
「なんですか、それ?」
「…え?」
今度は俺が首を傾げた。
「魔法、知らないの?」
「はい。何かの薬ですか?」
「魔法っていうのは…まあ…見せた方が早いか」
俺はステータスを開いた。
半透明の青い板が、目の前に浮かび上がる。
「な、なんですかそれ!?」
ノエルが勢いよく身を乗り出した。
「あ、ステータスも知らない感じ?」
「ステータス!? なんですかそれ!?」
目をキラキラさせている。
俺はとりあえず無視して表示を確認した。
MPは4まで回復していた。
これなら使える。
俺は右手を前へ突き出す。
「【ウォーター】」
チョロチョロチョロ…。
手のひらから、細い水が流れ落ちた。
「…」
「…」
パチパチと、焚き火の音だけが響く。
だが次の瞬間。
「す、すごい!」
ノエルが目を輝かせた。
「手から水が出ましたよ! すごい! どうなってるんですか!?」
「ちょ、待っ──
興奮したノエルに両肩を掴まれ、激しく揺さぶられる。
「いたたたたたたたッ!!」
「あっ! す、すみません!」
ノエルは慌てて手を離した。
しばらく沈黙が流れる。
やがてノエルが恐る恐る尋ねてきた。
「それで……その『魔法』を使ったせいで、怪我を?」
「そういうこと」
「へぇ……!」
それでもノエルの目は輝いたままだった。
「他には何ができるんですか!?」
「火を出したり、爆発させたり」
「えぇっ!? すごい!」
いちいちリアクションがデカい。
俺はふと、気になっていたことを口にした。
「この世界って、魔法ないの?」
「さぁ……? 少なくとも私は初めて見ました」
「そっか」
「佑磨さん、さっきの青い板みたいなのはなんですか?」
「あぁ、あれは俺の能力とかを数字で見られるやつ」
「すごいです!」
「……読者も『はよ王国行けや』って思ってるだろ
うからさっさと寝るぞ」
「はい!」
というわけでアルセリア王国の門の前までやってきた。
目の前には、巨大な石造りの城壁が左右どこまでも続いている。
その中央にそびえる大門は、見上げるだけで首が痛くなるほどデカい。
「うっわぁ…」
「どうしたんですか?」
「異世界って感じ」
「異世界?」
俺たちは門へ向かって歩き出す。
門の前には長い列ができていた。
荷物を積んだ荷馬車。
商人らしき男。
剣や槍を持った冒険者らしき連中。
いかにもファンタジー世界の城門前といった光景だ。
俺は周囲を見回す。
「なあ、ケモ耳娘とかいないの?」
「獣人族のことですか?」
「そうそう」
「いるわけないじゃないですか。戦争中ですよ?」
「…戦争中?」
「えぇ!? それも知らないんですか!?」
ノエルが信じられないものを見るような目を向けてくる。
「説明よろしくぅ」
「はぁ…分かりました」
「ここから設定説明だから、俺が要約するところまで流し見してくれ」
「誰に言ってるんですか?」
ノエルは怪訝そうな顔をしながらも説明を始めた。
「数年前、魔人族が人族の領土へ侵攻してきたことで、戦争が始まったんです」
「へぇ」
「現在も国境付近では戦闘が続いています」
「でもさ」
俺は首を傾げる。
「魔人族と戦争してるなら、獣人族は別に関係なくね?」
「大昔、人族の領土拡大が原因で大戦争になって、それ以来、人族との外交は禁止されています」
「へー。つまり、めっちゃ簡単に言うと人間族はめっちゃ嫌われてるってことか」
「…ものすごく雑ですが、そういうことです」
「次!」
門番の声が響いた。
「あ、俺たちだ」
俺たちは門番の前へ進む。
銀色の鎧を身につけた門番が、まずノエルを見る。
「身分証を」
「身分証?」
「はい」
ノエルは小さなカードを取り出した。
「は?」
門番はそれを確認すると、すぐに返す。
「問題ない」
そして俺を見る。
「そっちの男も身分証を」
「…」
門番の眉間に皺が寄る。
「お前、持ってないのか?」
「…」
さらに門番の視線が、俺の全身へ移動する。
「というか、お前…なんだその服」
「服?」
「それ…血か?」
自分の服を見る。
昨日の怪我で染み付いた血が乾き、赤黒くカピカピになっていた。
しかも、微妙に生臭い。
「…………………笑」
俺は、門番に笑いかけた。
檻に入ってどれほど経ったのだろうか。
まさか、異世界に来て早々、檻に入ることになると
は。
「今日は、やたら場面が変わるなぁ」
周囲は灰色の石壁。
出口は鉄格子ただ一つ。
俺はその場に寝転がる。
「て言うか、身分証とか。変な所でリアリティを出すなよ。『異世界人です!』『そうですか! 入国どうぞ!』くらいのノリでいいじゃん。『なろう』だぞ? ここ」
天井を見上げぼーっとしていた。
すると突然、鉄格子の向こうから足音が聞こえてきた。
「…ん?」
ノエルと兵士がこちらへ歩いてくる。
「ノ、ノエルちゃ〜ん……!」
「出ろ」
兵士が鍵を開けた。
と言う事で、俺は檻の外に出ることになった。
「はぁ全く、身分証すら持ってないってどう言うことですか!」
「本当に申し訳ない」
「それに、その格好!」
「ああ…」
血まみれの現代服。
ノエルは紙袋を俺へ押し付けた。
「とりあえず、これに着替えてください」
「何これ?」
「服です!早くそれに着替えてください!」
「Yes, my lord」
近くの路地裏へ入り、渡された服へ着替える。
白いシャツ。
その上から革製のベスト。
丈夫そうな茶色のズボンに、編み上げのブーツ。
俺は自分の姿を見下ろした。
「おお……」
一気に異世界人っぽくなった。
「ありがとう、ノエルちゃん」
「後でお金返してもらいますから」
「( ; ; )」
「どう言う顔ですか、それ」
ノエルは呆れたように歩き出した。
俺もその後を追う。
「で、どこ行くの?」
「冒険者ギルドです」
「お、ついに来た。異世界転移主人公御用達施設!」
「私もお金がないので、依頼を受けに行きます」
「へぇ」
ノエルが振り返る。
「あなたも行くんですよ?」
「え?」
「服代、返してください」
「…」
「返してくださいね?」
「…はい」
向野 佑磨 LEVEL.2
年齢:18歳
EXP:0 / 10
職業:魔法使い
HP:15 / 18
MP:10/ 13
攻撃:3
防御:4
素早さ:2
力:3
知力:4
運:12
【スキル】
{火}ファイア【MP5】
{爆}ブラスト【MP7】
{水}ウォーター【MP3】
ユニークスキル
縺ェ繧薙□縺薙




