第2話 デカ過ぎんだろ…
「どうすっかな」
辺りを見渡すが周りは、森が続くのみ。
「歩くしかないか」
俺は意を決して、一歩を踏み出した。
「うわっ……」
裸足の裏に、湿った土の感触がまとわりつく。
小石や枝を踏むたびに、足の裏がチクチクした。
「保育園児のガキに戻った気分」
数分歩くが景色は変わり映えのしないものだった。足の感覚に未だなれない。
それから数分。歌いながら歩いた。、
「見つけたたたらった太陽、睨みつけってー!」
何もない。歩けど歩けど、景色は変わらない。
いい加減、裸足で歩く感覚にも慣れて──。
「…ん?」
鼻をつく、妙な臭い。足が止まる。
「うわ、くっさ!何これ、動物園の匂いがする!」
反射的に鼻を押さえる。
なんだ、この臭い。
目を凝らして、臭いのする方を見る。
木々の隙間。
何かがいる。
「あれは…熊?いやでも…デカ過ぎんだろ…」
黒い毛に覆われた、巨大な何か。
四つん這いの状態でも、横幅だけで二メートル近くありそうだ。
そいつは俺に背を向け、一心不乱に赤黒い肉片を貪っていた。
「あれにバレたら確実にこの世とさよなら、バイバイだな」
熊らしき化け物から目を離さないまま、ゆっくりと後ずさる。
一歩。二歩。三歩──。
パキッ。
「…あ」
足元で、小枝が折れた。
熊の動きが止まる。
「…」
ゆっくりと、それはこちらを振り向いた。
目が合う。
「いや、待て。まだ慌てる時間じゃない。ほら、動物愛護の人も熊は優しいとか言ってたし──
次の瞬間。
「グオオオオオッ!」
熊が地面を蹴った。
「クソ!!!」
全力で逃げた。
「うおおおおおおっ!」
木々をかき分け、ひたすら走る。
裸足が痛いとか、枝が顔に当たるとか、そんなことを気にしている余裕はない。
ドドドドドドドッ!
背後から地面を叩く轟音が迫ってくる。
必死に走る。だが、音はどんどん近づいてくる。
恐る恐る後ろを振り返った。
「ッ!」
熊は目と鼻の先だった。
「やっばッ!!」
慌てて前を向く。
その瞬間。目の前いっぱいに、一本の大木が映った。
「あ」
バゴッ!
額に強烈な衝撃。視界がぐるりと回転し、俺の意識は、そこで途切れた。
「…」
木の根元に倒れた佑磨へ、巨大な熊がゆっくりと近づいていく。
返り血に濡れた鼻先を動かし、佑磨の匂いを嗅ぐ。
そして、大きく口を開いた。
鋭い牙が、無防備な頭へと迫る。
その時だった。
「…!」
熊の動きが止まる。本能が警鐘を鳴らした。
どこからか凄まじい殺気が向けられている。
「グルル……」
熊は低く唸った。
だが、次の瞬間には踵を返し、逃げるように森の奥へと消えていった。
あとに残されたのは、気を失った佑磨だけだった。
「うわああああああっ!?」
跳ね起きる。
「って、あれ?」
周りを見渡すも、熊の姿はない。
「どこ行ったんだ?あの熊…いてッ!」
木に激突した衝撃で頭が痛む。
額を押さえながら、大木にもたれかかる。
「はぁ、マジで死ぬかと思った」
「…」
自分の手を見る。
握る。開く。もう一度、握る。ちゃんと動く。
異世界に来たと気づいた時は、ついに頭がおかしくなったのかと思った。
「痛い」
ズキズキと痛む額。土まみれの足。全力疾走したせいで、未だに激しく脈打つ心臓。全部、本物だ。
俺は本当に異世界に来てしまったのだと、改めて実感した。
その時だった。
「…ん?」
目の前の空間が、ゆらりと揺らいだ。
「…え?」
淡い青白い光が宙に集まっていく。
光は線となり、線は四角形を描き──やがて、一枚の半透明な板を形作った。
「うわぁ…」
俺は、それに見覚えがあった。
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向野 佑磨 level.1
年齢:18歳
職業:魔法使い
ステータス
HP:15/15
MP:10/10
攻撃:2
防御:3
素早さ:1
力:2
知力:2
運:12
スキル
{火}ファイア 【MP5】
ユニークスキル
縺ェ繧薙□縺薙
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「マジかよ!これってステータスじゃん!」
一気にテンションが跳ね上がった。
俺は興奮したまま、恐る恐る画面へ指を伸ばす。
しかし
「お?」
指がすり抜けた。感触がない。
目の前に確かに存在しているのに、触ることはできないらしい。
試しにスマホを操作するように2本の指を閉じる。すると画面はスッと縮小し、そのまま消えた。
「おぉ!」
今度は指を広げる。
パッ。
再び画面が現れる。
「…スッゲぇ!なんか、本当にゲームの世界に来たみたいだぜ。テンション上がるなぁ〜」
改めて画面へ目を向ける。
「攻撃力2て。金丸が投げてる日の中日みたいな攻撃力」
次に、その下に表示された文字を見て、胸が少しだけ高鳴った。
【職業:魔法使い】
さらに下へ視線を移す。
スキル {火}ファイア 【MP5】
「マジ?魔法使えんの?」
俺は勢いよく立ち上がった。
右手を前へ突き出す。
「よ〜し!いくぞ…!」
息を吸う。
「【ファイア】!」
ボッ。
親指の先ほどしかない小さな炎が灯った。
「…」
数秒見つめる。
「なんだよこれ!チャッカマンかよ!!!」
慌ててステータスを見る。MPは10から5に減っていた。
「なんだよこのコスパ最悪の魔法は!」
もう一度ステータス画面を見る。
「はぁ…異世界転移したなら、もうちょっとこう…チートとかさぁ…」
ため息をつきながら画面を眺めていると、一番下の項目が目に留まった。
「…ん?」
【ユニークスキル】縺ェ繧薙□縺薙
表示されているのは、文字化けしたような意味不明の文字列。
「なにこの鬱ゲーのホラー演出みたいな文字。絶対、なんかヤバいやつじゃん」
「…まあ、いいや」
今考えても分からないものは分からない。
俺はステータス画面を閉じた。
途端に、視界いっぱいに森が戻ってくる。
静かだ。
さっきの熊が、またいつ戻ってくるかも分からない。
深く息を吸う。まずは、人を探そう。できれば服と靴も欲しい。
「よーし!」
俺は周囲を警戒しながら、再び森の中を歩き始めた。
向野 佑磨 level.1
年齢:18歳
EXP 0 / 5
職業:魔法使い
ステータス
HP:15/15
MP:5/10 (‐5)
攻撃:2
防御:3
素早さ:1
力:2
知力:2
運:12
スキル
{火}ファイア 【MP5】
ユニークスキル
縺ェ繧薙□縺薙




