第7話 デートですか? いいえ、おでかけです
「藤阪藤阪さん、付き合ってください!」
「え”!?」
放課後、帰ろうとしていると姫島さんから声をかけられた。
彼女から出た言葉に俺は変な声が出てしまっていた。
「まさか教室内で堂々と告白か!?」
「ってかあの2人付き合ってたんじゃねーの?!」
「ってことは俺にチャンス到来ってことぉ!?」
「それはないな」
姫島さんからそんな言葉が出れば、当然のことながら教室に残っていた連中もざわめき始めるわけで……。
やっぱり俺も男なので、姫島さんのような人に告白されるのはやぶさかではない。
「ま、まあ……姫島さんがよければ」
「本当ですか! ありがとうございます!」
姫島さんが喜びの声をあげると、何故か始まる教室内での拍手喝采。
その中には応援する声もあれば、嗚咽混じりの声もあったりもするのか……?
「欲しいものがあったんですけど、1人じゃわからなかったので……藤阪さんが一緒なら心強いです!」
「……もしかして付き合ってって一緒に店に来て欲しいってこと?」
「え? そう言いませんでしたか?」
姫島さんは首を傾げていた。
そんな姫島さんと俺の会話を聞いたクラスメイトたちはさっきまでのお祝いムードはどこへいったのか、一気に静まり返っていた。
中には喜ぶ声もちらほら聞こえていた。
「……ちなみにどこに行くの?」
「隣の駅にある大型家電量販店です!」
「ってことはあそこか」
彼女が言っているのは都内の中心部を走る路線や駅名を歌詞にいれて、嫌でも店舗がどこにあるのかわかる大型量販店のことだ。
ちなみに俺たちが住んでいるのは都心ではなく離れた郊外なので、歌詞の中には入っていない。
「俺も見たいものがあったし、ちょうどいいかもな」
そう告げてから鞄を持ち、姫島さんと一緒に教室から出ようとする。
「がんばれよ藤阪!」
「一度で挫けるなよ!」
「べ、別に羨ましいなんておもってないからな!」
残っていたクラスメイトたちに応援されることに……。
何故かフラれたわけでもないのに悲しい気分になってきたんだけど。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ちなみに何を探しているの?」
目的の家電量販店の中に入り、エスカレーター前のフロア案内を見ながら彼女に問いかける。
「スマホ用コントローラーです!」
姫島さんはそう話すと、スマホを取り出して画面をこちらに見せていた。
画面にはスマホと直接繋げるコントローラーが映し出されていた。
「『機神』やっている時にタップだと誤入力することが多々あったので正確に入力できるのが欲しかったんです!」
「でも、コマンド入力だからそこまでシビアなタイミングは求められてないから気にしなくてもいいような」
俺たちがやっていたDPOのようなアクションゲームではタイミングがシビアでミスができないため、やり込むなら遅延の少ないコントローラーやマウス、キーボードが必須だったが
『機神』の戦闘はコマンド入力式のゲームのため、シビアなタイミングは求められてはいない。
ついでに言うと、彼女の場合手に入れた武器のスキルがあるのでタイミングを考えなくても問題ない。
「それだけじゃないんですよ、このコントローラーだと通常のボタン以外にマクロボタンがあって、好きなように設定できるんですよ! 1つは回復魔法にしてもう1個に補助を設定しておけばすごく楽になるじゃないですか!」
姫島さんは早口でこちらにグイっと身を寄せていた。
最近わかったことだが、彼女は興奮気味になるとこうなるようだ。
「わ、わかった! そうしてもらえるとこっちも攻撃しやすくなるから助かるね! それじゃ売ってるフロアに行こう!」
俺はタジタジになりながら、フロア案内を確認するとスマホコーナーは2階にあることがわかったので、すぐにエスカレーターに乗っていった。
「もしかしてこれかな?」
エスカレーターで2階に到着したすぐの場所がスマホコーナーになっていた。
手前には各キャリアごとにスマホ本体が展示されており、ケースやモバイルバッテリーなどの周辺機器はその奥となっていた。
そこへ向かうと、姫島さんが探していた商品があり、手にとって見せる。
「そうです! よかったぁ!」
商品を手に取ると、ホッとする姫島さん。
よくよく見ると、これが最後の1個だった。
「それじゃ、買ってきますね!」
嬉しそうな表情を浮かべながら、姫島さんはレジへと向かっていった。
ゲームグッズを嬉しそうに買いに行く女子は身近にいなかったので彼女の姿が新鮮というか、不思議にも思えてくる。
——一颯も一緒に買おうよ! 一緒にやれば絶対に楽しいから!
そんな姫島さんの姿を見て、脳裏に過去の映像が流れる。
絶対に戻ることのない……良き日の思い出。
「藤阪さん……?」
名前を呼ばれ、我に返る。
目の前には店名が描かれた紙袋を持った姫島さんが立っていた。
「ボーッとしていたようですが、大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫……」
姫島さんは心配そうな顔で俺を見ていた。
変に心配をかけるのも申し訳ないので、何もない感じに装う。
「姫島さん、他に買い物はある? なければちょっとみたいところがあるんだけど時間平気?」
「大丈夫ですよ! 藤阪さんが行きたいところがあれば、お付き合いしますよ!」
姫島さんは満面な笑顔で答えていた。
「ありがとう、えっとあのコーナーはどこだっけかな」
俺はエレベーターの前にある案内を指差しながら確認していった。




