第6話 曲で思い出す過去のこと
「先日の抜き打ちテストの結果を返すぞ」
入学式から数日後、突如抜き打ちテストが行われた。
俺の通う高校は進学校に入るので、学力に力を入れているらしく、入学まで勉学に努めているかを定期的に行うらしい。
この学校受験のためにしか勉強してこなかった俺からすれば勘弁してほしいところだ。
「ちなみに今回の成績優秀者は姫島だ」
「おーっ!!」
担任が告げると教室内は一斉にざわめき始め、クラスメイトほぼ全員が一斉にこちらを向いた。
もちろん見ているのは俺ではなく隣の姫島さんだ。
「それじゃ返していくぞ、まずは安堂……」
次々に呼ばれていくクラスメイト達、受け取った際に浮かべる顔で結果の良し悪しがすぐにわかった。
「次、藤阪」
名前を呼ばれたのでテスト用紙を取りにいく。
常に勉強よりも趣味に時間を費やしているため結果は散々だってことは言うまでもない。
「次、姫島」
肩をガックリと落としながら席に向かう俺とすれ違う姫島さんは活き活きとして見えた。
そりゃ、成績優秀者となれば今の俺のようにガックリとすることもないしな。
「……ほんとギリギリだな」
席に戻ってから改めてテストの結果を見ると、赤点とは言わないがギリギリのところだった。
1問でも間違えてれば赤点コースまっしぐらだったろう。
「藤阪さんはどうだったんですか?」
テスト用紙を眺めているうちに、姫島さんが席についていた。
彼女が持っているテスト用紙へと目を向けると、三桁の数字が書かれていた。
「……人間って窮地に陥ると笑ってしまうんだなって思い知らされる点数だよ」
笑いのネタになればいいと思い、姫島さんにテスト結果を見せると、真面目な表情で俺のテスト用紙を見ていた。
「計算式とか考え方は間違ってなさそうですから、次は大丈夫だとおもいますよ!」
俺の意図とは正反対に姫島さんは褒めてくれた。
たしかに嬉しいけど……思っていたことと正反対な返しに俺は何も答えることができなくなってしまっていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「姫島さんって普段からどんな曲聴くの?」
「あのドラマみてる? 主演の俳優がイケメンで——」
昼休み、昼食と飲み物を買ってから教室に戻った俺を出迎えたのは、姫島さんを囲っている女子集団だった。
別に彼女に話しかけるのはいいけど、頼むから俺の席を巻き込まないでほしいんだけどな……。
ちなみに質問攻めを受けている、姫島さんは内容に興味がないのか集団とスマホを交互に見ていた。
「席座りたいんだけどいいかな?」
女子集団に声をかけると、俺の顔を見て一瞬嫌そうな顔を見せ、すぐに散っていった。
そこまで露骨にしなくても……。
「おかえりなさい」
席に座ると姫島さんが声をかけてきた。
女子集団に囲まれている時と表情が違って見えたのは気のせいだろうか。
「藤阪さんって普段どんな曲聞きます?」
「……基本的にゲームの曲しか聞かないかな」
俺はスマホの音楽再生アプリを開き、プレイリストを姫島さんに見せる。
ゲームの曲だが、たまに歌付きの曲も入っている。
ほとんどがゲームの主題歌や挿入歌だが。
「あ、DPOの曲も入っているんですね」
姫島さんは嬉しそうな顔で俺のスマホの画面を細い指で指している。
「サービス終了後にサブスクで聞けるようになったんだよ」
「そうなんですか!?」
目を大きく開き大きな声を上げる姫島さん。
突然、大きな声がしたからか周りから視線を感じる……。
「私、タンコー洞窟とか、悪魔准将モデン戦の曲が好きなんですよ!」
挙げたきた選曲を聴いて耳を疑ってしまう。
姫島さんのことだから、神秘的なBGMのキレーナ遺跡とか聴いていて落ち着けるセジャク住宅地などを挙げると思っていた。
ちなみに姫島さんが上げたのは激しいロック系の曲だ。
「……だからあの時、テンション高かったのか」
イベントとかでタンコー洞窟に行った際、その場から離れようとしなかったことを思い出す。
「私もそのサブスク利用できますか!?」
いつものようにこちらへ身を乗り出す姫島さん。
シャンプーなのかコンディショナーからなのか、心地よい匂いが鼻を通じて入り込んでくる。
「できるんじゃないかな、ちょっとスマホ貸して?」
姫島さんからスマホを受け取ると、アプリを開いて確認していく。
彼女も俺と同じ会社のスマホなので、特別なことをしなければ自動的に入っているはず。
「使えそうだね、タップすれば聞けると思うよ」
スマホを返すと、姫島さんはカバンからワイヤレスイヤホンを取り出して耳につけると、画面に表示されたプレイリストをタップする。
「ホントだ……聞けました!」
顔を見れば嬉しいのがわかるぐらいの表情で彼女はこっちを見ていた。
ちなみにスマホの画面にはDPOのメインタイトルのアートワークと『THEME:タンコー洞窟』と書かれた曲名。
「……よほど好きなんだな」
聴くことに専念しているのか、姫島さんは俺の声は聞こえていないようだった。
その間に買ってきた昼食を食べていった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
そして、昼休みは終わって午後最初の授業にて……。
「……姫島さん」
小声で彼女の名前を呼ぶと姫島さんは不思議そうな顔でこちらを見ていた。
「どうしました?」
「……鼻歌」
小声でそう告げると、彼女はハッとした顔をしていた。
昼休み中、好きな曲を聴き続けていたせいか、頭の中でも曲が流れ続けているのだろう。
気持ちはわからなくもないけど。
ちなみに彼女は午後の授業ずっと好きな曲を口ずさんでいたのだった。




