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第5話 見た目のギャップ

 「藤阪さんおはようございます!」


 次の日の朝、教室に入り自分の席へと向かっている途中で姫島さんに声をかけられた。


 「おはよう」


 机の上にカバンを置きながら挨拶を交わす。

 

 「そうだ見てくださいよ!」


 そう言って姫島さんは俺にスマホを勢いよく見せてきた。

 彼女のスマホの画面には『機神』の画面が映っていた。


 「どうしたの?」

 「これです、これを見てください!」


 姫島さんは興奮気味に画面の一部分を指さしていた。

 それだけならいいんだけど、なぜか……


 「ひ、姫島さん……顔が近いって!」


 なぜか顔までこちらに近づけていた。


 「おいおい、昨日の新カップルこのままキスまでするんじゃないか?」

 「朝からなんてけしから……うらやましい!」


 気がつけば周りがざわついているんだけど、何で!?

 どうみても朝から教室でそんなことするなんて今時のギャルゲーでもないだろ!


 「これ見てくださいよ! 今朝、電車の中でドロップしたんですよ!」


 姫島さんは爪で画面を叩く。

 そこにあったのは使用しているキャラクターの持っている武器だろうか。

 

 「もしかして……機界デウスエクス?」

 「そうです! この前のバージョンアップで追加されたやつです」


 彼女が手に入れたのは両手杖だが、本当に存在するのかと言われてるぐらいのドロップ率だと言われている。


 「これすごいんですよ、回復魔法の回復量も倍になって、武器の特性で回復魔法は最後になるみたいなんです!」


 興奮気味に手に入れた武器の説明をしていく姫島さん。

 昨晩の写真の説明を聞いてた時の記憶が蘇ってくる。


 「聞く限りだと、完全に回復キャラ専用だよね? 姫島さん回復キャラ持ってる?」


 『機神』はDPOと違って、ガチャで操作するキャラを手に入れていくタイプのゲームだ。

 そのせいか、強い武器を手に入れてもそれが装備できるキャラがいなければ意味がない。


 「今映ってるキャラがそうですよ」

 「……たしかによく見たら回復キャラっぽいだな」


 機界デウスエクスを持っているのは青と白の長いローブを身に纏った女性キャラだった。

 どことなくイリスに姿が似ているような……。


 「DPOの時はずっと回復特化だったので『機神』ではアタッカーのキャラを使いたかったのに……」


 姫島さんはため息混じりにぼやいていた。

 これだけ強い武器が手に入ったら使わないと勿体無いと思う気持ちはわからなくもない。

 

 「当分の間、回復キャラを操作してアタッカー用の武器が手に入ったら切り替えるとか……?」

 「そうなんですけどこの武器、回復魔法以外だと効果発揮できないんですよ」

 「それならちょうどいいかもしれない」


 そう言って俺はブレザーの内ポケからスマホを取り出してから、彼女に画面を見せた。


 「あれ、このキャラクターって……」

 「そうなんだよね……」


 俺がメインで使っているのは偶然にも攻撃特化のキャラだった。

 DPOのダークナイトのようにHP消費して攻撃力をあげるのではなく、防御が低い代わりに攻撃を特化させているキャラだった。

 そのため、常に回復アイテムを使いながら戦わないと簡単にやられてしまうので回復キャラが近くにいると安心できるのである。


 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 

 「試しにこのボス行ってみようか?」


 昼休みになり、クラスメイトたちは食堂へと急ぐ中、俺と姫島さんは教室に残り、向き合うような形で討伐対象のボスを画面に映し、目の前の姫島さんに見せていた。

 

 「いいですね! この前ソロで行って勝てなかったので助かります!」

 「それじゃ、パーティ申請をだしてと……」


 すぐに『IROHAさんが仲間になりました』と画面に表示された。

 

 「藤阪さんのプレイヤーネーム『いぶいぶ』って可愛らしいですね!」


 画面を見ながら姫島さんが微笑んでいた。


 「キャラクターと名前が一緒じゃない時はだいたいこの名前だな」

 

 RPGとかでこちらの名前を呼ぶ時は他の名前にするけど。

 DPOで使っていたアッシュやノインはその一例だ。


 「私なんか、名前をローマ字にしただけですから……藤阪さんみたいに変えてもいいかもしれないですね」

 「……例えば?」

 「藤阪さんが『いぶいぶ』なら私は『いろいろ』とかでしょうか?」

 「いや、こっちに合わせる必要ないとおもうけど!?」


 俺の言葉に姫島さんはふふっと笑っていた。


 「さてと、それじゃクエスト行きますか」

 「はいっ!」


 俺のキャラが先導しつつ、後ろで姫島さんが回復を常にしていきながら進めいくこと数分。

 目的であるボスへと辿り着いた。


 「作戦はさっき言った通り、敵の攻撃を俺に集中させるスキル使ってから攻撃するから姫島さんは回復をお願い」

 

 俺が伝えると、姫島さんは目を大きく開けてこちらを見ていた。


 「姫島さん?」

 「え、あ……はい! 回復してればいいんですね!」


 慌てた様子でそう答えた姫島さんは自分のスマホをじっと見ていた。


 ボス戦が始まり、俺が伝えた通りに着々とボスにダメージを与えていく。

 それを繰り返すこと数分。

 

 「あ、倒れましたね!」


 お互いの画面には前のめりに倒れるボスの姿が映し出されていた。

 その後すぐに華やかな色で書かれた」QUEST CLEARの文字。


 「ターンの最後に回復してくれるのはでかいなぁ」

 「藤阪さんも指示が的確で助かりましたよ!」


 互いに褒めあっていくと、何かを思い出したように姫島さんは「あっ!」と声をあげる。


 「そうだ、DPOの時、アッシュさんと一緒にやっていたことがあるんですよ」


 そう言って姫島さんは手を挙げる。


 「DPOのボスを倒した時にしぐさでハイタッチしていたんです、よかったら一緒にしませんか?」

 

 いつからやり始めたか忘れたが、イリスとボスを倒した時のやりとりになっていた。

 まさかリアルでもやることになるとは……。


 「おっけー!」


 答えつつ、俺も手を挙げると姫島さんが俺の手を叩いていく。

 それなりの勢いがあったのでパチンという音が教室中に響いていった。


 「っと、喉乾いたから飲み物買ってくるよ」


 カバンの中から財布を取り出してから席を立つが姫島さんは何か考え事をしているのか、返事が返ってくることはなかった。

 俺は気にすることなく教室から出ていった。


 「……指示がアッシュさんそっくりなのは気のせい?」


 その途中で彼女が何か呟いていた気がするが、俺の耳に入ることはなかった。

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コミュ障ぼっち、最強剣客として無自覚にバズる〜最弱魔物を真っ二つにしただけなのにバズってしまいました。え、実はS級モンスター? いやいやご冗談を〜
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