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第55話 離れたくない(SIDE IROHA → IBUKI)

「私、一颯さんが他の女性とゲームやっているのが嫌なんだと……思います」


 昨日の菜月さんの時もそうだし、さっきの女性のお客さんの時もそうだったけど、ものすごくモヤモヤとした気持ちになった。

 一颯さんが他の人と遊んでいるのを見ているだけで、嫌という気持ちに近い感覚。


 「そっかぁ……」


 自分が感じたことを郁奈さんに説明すると、微笑んでいた。


 「……郁奈さん、私は変なのでしょうか?」

 「ううん、そんなことは思わないよ、むしろそれが当たり前じゃないかな」


 否定されると思っていたが、郁奈さんの返答を聞いて胸を撫で下ろす。


 「彩葉ちゃんもそうなっちゃったかぁ……姉としては嬉しくもあり、悲しくもあるんだけどねぇ〜」


 郁奈さんは腕を組みながら独り言を言いながら、頷いていた。


 「そんな彩葉ちゃんに朗報なんだけどさ」


 すぐに郁奈さんは私の顔を見ていた。

 含みのある顔をしているようにも見えてしまう。


 「何と藤阪家には私と一颯しかいません」

 「ご両親が旅行にいかれたんですか?」

 「急遽、海外支部に行く用事ができたとかで今朝から行っちゃったんだよね、なぜかママも一緒に」


 私は郁奈さんの話すことを無言で何度も頷く。


 「それに菜月が今日は夜通しで恋バナしたいとか言ってきているんだよね〜」

 「もしかして菜月さんが来られるとか?」


 私の言葉に郁奈さんは左右に指を振っていた。


 「何も無ければ、それでもよかったんだけどね〜、彩葉ちゃん、手出してくれる」


 言われた通り、手を差し出すと郁奈さんはバッグの中から何かを取り出し、私の手の上に何かを置いた。

 どこかで見たことのあるマスコットキャラのキーホルダーのついた鍵だった。


 「……郁奈さんこれは?」

 「今日は菜月の家に行くから、念の為渡しとこうと思って」


 ウインクしながら話す郁奈さんに対し、私はと言うと……


 「だ、ダメですよ!」


 と、周りのことを考えずに大声で叫んでいた。


 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 「彩葉おかえり……」


 郁奈さんと別れて、教室に戻ってくると一颯さんがグッタリとした顔をしていた。

 

 「ご、ごめんなさい……!」

 「……いや、彩葉が謝ることじゃないから、悪いのはあの自由奔放な姉だ」


 一颯さんはため息混じりに答えていた。

 昼を過ぎたからかお客さんの数はまばらだった。

 先ほどまでいた校門前に人がごった返していたので、そちらに行っているのかもしれない。


 「一颯さん、今のうちにお昼に行ったほうがいいかもしれません」

 「たしかに……彩葉はどうするんだ?」

 「私は……郁奈さんに色々とごちそうになったので」


 鍵を受け取った後、郁奈さんはお腹すいたと言い始め、一緒に食べ歩いていた。

 よく考えてみればかなりの金額を出してもらったが平気だったのだろうか……。


 「わかった……今のうちに食べてくる」

 「はい! 私はここにいますのでゆっくり休んできてくださいね!」


 一颯さんは親指を立てなが教室から出て行った。

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 「この時間をもちまして、学園祭終了となります! 2日間おつかれさまでした!」


 夕方近くになって、学園祭の終了を告げる校内放送が聞こえると、教室内外から拍手の音や「お疲れ様」といった声が聞こえてきた。


 「疲れたあああああ! ってか2日間早過ぎだろ!」

 「ホントだよな、あれだけ準備に時間かけたのに終わる時は一瞬だな」

 「ってか、こっちの対応で忘れてたが女の子に声かけてねーぞ!」

 

 自分の教室でも惜しむ声やクラスメイトたちを労う声が聞こえていた。


 「……ははは、藤阪、おつかれ」


 ブースの椅子の背もたれに全体重を乗せていると、天王寺が隣の椅子に座り出した。


 「せっかく作った店内BGMが全然使われなかったぜ……」


 初日もそうだが、2日目もクラスメイトたちから不評だったようで、泣く泣くBGMを差し替えていた。

 たしか昨日の夜は寝ずにBGMリストを作ったとか言っていたが……強く生きろ天王寺。


 「一颯さん、天王寺さんもお疲れ様でした」


 天王寺と話していると彩葉がやってきて声をかけてきた。

 終わった直後からクラスメイトたち全員に労いの言葉をかけているようだった。


 「彩葉もお疲れ、何かあっという間だったな」

 「……本当にそうですね」


 彩葉はもの悲しそうな顔をしながら教室内を見渡していた。


 教室では何人かが片付けを始めているようだった。

 明日も片付け日になっているので今日しなくてもいいけれども、早い時間に終わらせて帰りたいという声もあったとか。


 「さてと、こっちもさっさと片付けするか」


 勢いをつけて立ち上がると、使用したプロジェクターやスクリーンなどの片付けにはいっていった。


 

 

 「この後夜祭を行いますので、時間のある方は体育館までお越しください!」


 片付けをしていると、後夜祭開催の放送が入った。

 楽しみにしていたクラスメイトたちは一目散に体育館へと向かっていった。


 「お、後夜祭はじまるみたいだし、藤阪も行こうぜ!」

 「その前に借りてきた機材返してくるから、先に行っててくれ」

 「おっけー!」


 天王寺は敬礼のポーズをすると、他のクラスメイトたちに続いて教室を出ていった。


 「これさえ戻せば、明日はそこまでやることもないし、早く帰れるかな」


 借りてきた機材をダンボールに収納すると教室を出て、機材を管理している部屋へと持っていった。

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 「……あれ、彩葉?」


 借りてきた機材を返却して教室に戻ると、窓側で彩葉が1人で佇んでいた。

 外はすっかりと日が沈んでいるため、教室内はほぼ真っ暗だった。

 

 「一颯さん……」

 

 俺の声に気づいた彩葉は、こちらを見ていた。

 

 「てっきり先に後夜祭の方に行ったかと思ってたよ」


 彩葉の傍に近づいてやっと彼女が顔がはっきりと見えた。

 今日もバタバタしていたので、疲れているようにも受け取れる。

 

 「とりあえず、後夜祭行ってみようぜ、なんかビンゴ大会があって景品が豪華だっ——」


 彼女に声をかけつつ、歩き出そうとすると、裾を引っ張られた。

 もちろん引っ張ったのは彩葉だ。


 「……どうしたんだ?」


 すぐに彩葉を見ると、下を向いた状態だった。


 「一颯さん……」


 か細い声で俺の名前を呼ぶ彩葉。

 ゆっくりと顔をあげると……。


 「……このまま一颯さんと2人でいたいです」


 彼女の言葉に一瞬頭の中が真っ白になる。

 ど、どういうことなんだ!?

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コミュ障ぼっち、最強剣客として無自覚にバズる〜最弱魔物を真っ二つにしただけなのにバズってしまいました。え、実はS級モンスター? いやいやご冗談を〜
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