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第53話 怒涛の学園祭……?(SIDE IROHA)

「一颯、もう1戦!」

 「……一体どれだけ対戦すれば気が済むんだ」


 学園祭初日も午後に突入し、私たちのクラスにはそれなりにお客さんも訪れていた。

 どれぐらい売り上げが出ているのか、計算していないけどお客さんの数からしてそれなりあるとは思う。

 けれども今、そんなことはどうでもよく思えるぐらいの状況に遭遇している。


 「あの子、藤阪の知り合いなのか? 結構可愛いんだけど!」

 「チクショウ! 藤阪のやつ姫島さん以外にもゲームができる女がいるなんてうらやま!」

 「もしかして『アケロク』強くなれば俺もあの子と遊べたりする?!」


 菜月さんが来てから、一颯さんはずっと彼女と対戦をしていた。

 ルールとしては次に『アケロク』希望のお客が来たら交代するのだが、今のところそのようなお客はいないので『アケロク』ブースは彼女が独占していた。

 次第に2人の対戦を観に来るお客までで始める始末。

 企画した側からすれば喜ばしい限りだけど……。


 ——出来ることなら私が今の菜月さんの居場所にいたかった。


 「なんで!? 今のは絶対に喰らったでしょ!」

 

 店内では菜月さんが負けたことで嘆く声が聞こえていた。


 「……さすがにもう疲れ——」

 「——まだまだ私はやれるわよ!」

 「……おまえ普段からそんなこと言わないだろ」


 肩をガックリと落とす一颯さんに対して、2人の対戦を目当てに来ていた人は歓声を上げていた。

 

 「ってか気がつけばすごい人だな、道理でさっきから飲み物の注文が多いわけだぜ」

 「もしかして姫島さんこれを見越して飲み物をたくさん買ってきてたのか!」

 「おーい! そろそろお菓子の在庫切れてきてるぞー! ってかスティク系のお菓子の注文多すぎじゃね!?」


 バックヤードの方から嬉しい悲鳴が聞こえているが……これが計算通りならどれほどよかっただろうか。

 今考えうる一番の大誤算は、目の前の状況なんだけれども。


 「うぎゃああああ負けたあああ! けど私はまだまだ舞える!」

 「……頼むからそろそろ羽を休めてくれないか? 俺じゃなくて他の人の肩に」


 一颯さんはぐったりとした顔で私の顔を見ていた。

 

 「えっと、『アケロク』の対戦者募集していますので!」


 中にいる人たちに声をかけるも、手を挙げる人の姿はなかった。

 すぐに一颯さんを見て、首を左右に振ると、大きくため息をついていた。


 「おっ! 続投のようだぞ! カワイコちゃん! 俺らは応援しているぞ!」

 「せやせや! ワイらは君が勝つまで応援するのをやめない!」

 

 この状況は学園祭の終了の放送が入るまで続いて行った。

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 「おつかれさまー!」

 「ってか藤阪のやつすげーな! ずっとあの子に勝ち続けてたぞ」

 「すげーのはあの子だよ、負け続けても藤阪に挑み続けてたし」

 

 初日が終了するとクラスメイトの皆さんは制服に着替えてから話し込んでいた。


 「……一颯さん、大丈夫ですか?」


 そんな中、『アケロク』のブースの椅子に座ったまま、ぐったりしている一颯さんに声をかけた。


 「……気抜いたら真っ白に燃え尽きそうな気がする」


 一颯さんは顔を上げず、覇気のない声で呟いていた。


 「……なぁ、彩葉」

 「どうしました?」

 「教えてくれ……俺はあと何回、再戦を受ければいい? 俺はあと客を満足させるために何回対戦すればいいんだ、教えてくれ、彩葉!」


 一颯さんはよくわからないことを呟き、最後には大きくため息をついていた。

 疲れてるどころじゃなさそうだ……。


 「これに関しては大誤算でした……明日は対策を考えますので一颯さんは帰って休んでください」

 「……そうする」


 一颯さんはゆっくりと立ち上がると、フラフラしながら教室から出て行ってしまった。


 「ってか藤阪のやつあの子と何戦したんだ?」

 「10戦ぐらいまでは覚えてるけど、それ以上は数えるのをやめたぜ」

 

 ……私も50戦過ぎてから数えるのをやめました。


 気がつけば教室に残っているのは数人となっていた。

 明日もあるので、残っているクラスメイトに挨拶をして教室を出ていった。


 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 「……もうこんな時間」


 ふと、壁掛け時計を見ると日付が変わろうとしている時間だった。

 

 「……この分だと明日もすぐに終わっちゃいそうな気がする」


 約1ヶ月という長い期間、準備してきたにも関わらず……終わる時は一瞬なんだと感じてしまう。

 といっても、明日があるので今日は早めに寝ようかと布団に入るが、中々寝付くことができなかった。


 「……少しぐらいなら」

 

 すぐに体を起こし、ほぼ日課となっている『アケロク』を起動させる。

 

 「さすがに一颯さんはいないですよね……」


 フレンドリストを確認するが、彼の名前のところは灰色に表示されていた。

 ホッとする反面、寂しさも感じてしまう。

 オンラインモードに接続するとすぐに対戦相手が表示され、試合がはじまっていく……。

 

 「……楽しくない」


 オンラインで20戦ほどしたが、満足することができなかった。

 一颯さんと菜月さんと対戦しているのを見た時はプレイしたくてずっと我慢していたのに……。

 

 「やっぱり、一颯さんとじゃないと……」


 私はそのままゲームを終了させてから、もう一度布団の中に入っていったのだった。

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コミュ障ぼっち、最強剣客として無自覚にバズる〜最弱魔物を真っ二つにしただけなのにバズってしまいました。え、実はS級モンスター? いやいやご冗談を〜
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