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第49話 菜月と一颯

 「菜月さん!?」


 彩葉と一緒に入ったポータブルゲーミングカフェに入り、俺たちを出迎えてくれたのは……幼馴染の菜月だった。

 最後に会った時は金髪に近い髪色をしていたが、今は所々が茶色になっているが、ほとんど黒く染まっていた。

 服装もパーカーにジーパン……昔に近いものだった。


 「……一颯はともかく、何であなたまで一緒にくるのよ、もう最悪!」


 菜月は彩葉を指差しながら大声を上げていた。


 「おや、お客さんかな」


 その直後、店の裏から男の人が姿を見せていた。

 年齢的には父親と同じぐらいだろうか、黒いTシャツの前に『マッチング』と書かれたエプロンをかけている。


 「あ、店長……!」


 菜月は男の人を目にするとお辞儀をしていた。

 

 「もしかして、天見さんの知り合い?」

 「そ、そんなところです……」

 「この時間はまだお客さんもいないし、天見さんにお任せするよ、僕はバックヤードで事務仕事してるから」


 菜月が店長と呼んだ男性は俺たちに会釈をすると店の裏側へと入っていった。


 「……もしかして、菜月さんここでアルバイトをしているんですか?」

 「そうよ、何か文句ある?」


 ムスっとした表情で菜月はレジに向かうと、用紙とバインダーを持って戻ってきた。

 そのまま俺と彩葉に持ってきたバインダーを突きつけるように渡してきた。

 

 「はい、うちは会員制だからこの紙に記入して!」


 きつい口調で話す菜月だが、耳が燃えているかのように真っ赤だった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 「……一颯さんは知っていたんですか? 菜月さんがここにいることを?」

 

 彩葉は店内にあるドリンクバーのアイスティーのボタンを押しながら尋ねてきた。


 「……そもそも俺がアイツと会いたくないのは知ってるだろ」

 「それでは偶然なんですね」

 「……そうだよ」

 

 彩葉が入れ終わったので紙コップをセットしてジャスミンティーを注ぐ。

 ちなみに菜月は突き出してきた用紙の記入を受けってから、レジに戻ると黙々と作業をしていた。

 

 「とりあえず座ってようか……」

 「そうですね」


 お互いにドリンクを持って、目についたソファへと腰掛ける。


 「一颯さんはなぜ、この店に?」

 「ゲーム喫茶やるのに、ゲームをどうするのか悩んでたでしょ?」

 「そうですが、それとこの店に来た理由は……」

 「ネットで調べたら、こういうゲーミングポータブルカフェって基本お客がゲーム機を持ち込むんだよ、ウイッチとか」

 

 持ってきたアイスティーを飲みながら、彩葉は何かに気づいたような顔つきになった。


 「なるほど! お客さんに持ってきてもらえれば、こちらで用意しなくても済みますね」

 「そういうこと、俺たちがすることは料理したりするぐらいかな……」


 彩葉には事前にウイッチを持ってくるようには伝えているし、俺も持参している。

 実際にお客としていってみれば学園祭での課題とかが、見つかるかもしれないと思っている。


 「……なんかお客さんとか言ってるけど、2人で何かやるの?」


 彩葉と話しているうちに、菜月が俺たちの目の前に立っていた。

 手にはネックストラップを持っていた。


 「はい、店にいる時はこのこれ首からかけといて、一応お客さん同士の交流も推奨してるから」


 菜月から渡されたネックストラップの先には厚紙が入ったプラスチックの名刺入れがついていた。

 中の厚紙には女子特有の丸文字で『いぶき』と書かれていた。

 しかも周りには小さなハートマーク……。

 

 「一颯さん見てください! すごいですよ!」


 彩葉は菜月から受け取ったストラップをこちらに見せてきたのはいいが……

 鋭利なナイフで削ったかのような鋭い字で『いろは』と書かれている。

 名前の周りには切り傷かと思える大量の線が書かれていた。


 「……何で、そんなんで喜ぶのよ、おかしいんじゃないの?」


 その直後、小声で菜月が呟いていた。

 内容は丸聞こえだったが、聞かなかったふりをしてよう。


 「で、どうするの? ウイッチとか持ってきてるなら遊んでてもいいし、なければこっちで適当に用意するけど?」

 「ゲームあるのですか?」

 「あるわよ、ほとんど『アケロク』しかやってないけど」


 『アケロク』の言葉を聞いた途端、彩葉の目がキラキラと輝いているように見えた。


 「もしかして、菜月さんも『アケロク』をやるんですか!?」

 「……やるわよ、言っとくけどこの店で私に勝てる人なんていないから」


 菜月は自信たっぷりに答えていた。

 一応俺の知ってる限りではコイツも過去は俺とずっと一緒にやっていたぐらいなので実力は確かだ。

 腕が衰えてなければだけど。


 「それじゃ対戦しませんか! 一颯さんには全然勝てないですがオンラインの相手にならほとんど負けてません!」

 「へぇ……」


 菜月と彩葉の間にバチバチと電撃がぶつかり合っていた。

 

 「そのまで言うなら、その自信へし折ってあげるわよ! さあアケコンでもコントローラーでも好きなの手にしなさいよ!」

 「私は負けませんから!」


 そんな二人を見て、脳内でゴングの音が鳴り響いていた。

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 「いい加減負けを認めなさいよ!」

 「諦めません! 諦めたらそこで対戦は終わりって誰かが言っていました!」


 最初は菜月が勝ち続けていたが、彩葉の不屈の精神によって徐々に負け続けていた。

 そして、お互いに同じ勝ち数になっていった。

 

 「……まだ、やるの? いい加減疲れたんだけど」

 「私はそのつもりですが……」


 そう告げた彩葉は徐に立ち上がり、周りをキョロキョロと見渡していた。


 「トイレなら入り口のほうよ、別に戻ってこなくてもいいけど」


 菜月の皮肉に臆することなく彩葉はお礼を言うとトイレへと向かっていった。

 

 「それじゃ次は……」


 菜月は彩葉が使っていたコントローラーを手にすると俺の方へと差し出していた。


 「久々に勝負しない?」


 彩葉に見せていた表情とは違う……久々に見たあの時の菜月の笑顔。


 「……しょうがないな」


 ため息混じりに答えると俺はコントローラーを受け取り、使用するキャラを選択していった。

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コミュ障ぼっち、最強剣客として無自覚にバズる〜最弱魔物を真っ二つにしただけなのにバズってしまいました。え、実はS級モンスター? いやいやご冗談を〜
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