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第48話 有能プレゼンター

 「……えっと、彩葉、サン?」

 「どうしました? 声が硬い感じがしますが」

 「……これ、どういうこと?」


 彩葉から送られてきたファイルはスライド形式になっており、ページ数は20枚あった。

 そこにはコンセプトや企画意図など、会社の経営を題材としたドラマに出てきそうな内容が書かれている。


 「ただやりたいことを言っても、説得力がないと思いましたので、作ってみたんです!」


 声からして彩葉がやりたいという気持ちが十分に伝わってくるのだけれども……


 「ファイルに関しては無理矢理、理解したけど……何でゲーム喫茶?」

 「学校で一颯さんが仰ってたみたいな、お化け屋敷とかカフェなどもいいんですが、定番なものは被ってしまうので面白くないなと思っています」

 「被ったとしても味とか接客とかで勝負することもできそうだけど」

 「料理とかに自信があればそれはありですが、現実的ではないかとおもいまして、少し視点を変えた結果、この案がでました」


 動画サイトで企画を説明していく……プレゼンテーションだっけかな、それと似た様なことを彩葉は話していた。

 話を聞きつつ、スライドを見ていくことに。


 「ちょっと気になったけど、ゲームってこっちで全部用意するのか?」


 スライドには様々なゲームで遊ぶことができると力強く書いてあった。

 ゲームセンターみたいなイメージだと思うけど、全てこちらで用意するのは厳しいかと思う。


 「パソコンのゲームなら学校で借りれたりしないでしょうか? パソコン部があったと思いますので」

 「部活でも何かするから厳しいと思う、それにゲームができるためのスペックのパソコンはないと思うぞ」

 「言われてみればそうですね……」


 彩葉は大きくため息をついていた。


 「となると、この企画はなしにした方がいいでしょうか?」

 「……とりあえず言ってみてもいいと思うけどね、どれくらい納得してくれるかだけど」

 「そう言われると自信がなくなってきますね」


 彩葉の話を聞きながら似た様なことをやった学校がない『学園祭』、『ゲーム』などのワードを中心に調べていた。

 だが、『学園祭』や『文化祭』というワードが入るためなのか、お化け屋敷や飲食店など定番なものがほとんど。


 だが、その中に唯一違うものが引っ掛かっていた。

 

 「……彩葉、もしかしたらさっきの問題解決策できるかもしれないぞ」


 彩葉にそう伝えながら見つけたサイトのURLを送る。


 「一颯さんこれってなんですか?」

 「ここで説明するよりも実際に行った方がわかりやすいとおもうから、明後日の予定空けといて」

 「わかりました……」


 まるで、腑に落ちないと言わんばかりのトーンで彩葉は返事をしていた。

 

 「ちなみにですが、明日の説明はどうしたらいいでしょうか?」

 「……たぶんだけど」

 「な、なんですか?」

 「彩葉が言えば大丈夫じゃないかな……たぶん」


 俺の返答にスマホのスピーカーから猫のように唸る声が聞こえていた。


 

 「あ、一颯さんおはようございます!」

 「……おはよう」


 約束の土曜日の朝、目的の場所に向かうため、彼女の乗り換え駅で待ち合わせにしていた。

 

 「一颯さん、どうされたんですか? すごく不機嫌な顔をしていますが」

 「……理由わかってるだろ?」


 ため息混じりに答えると、彩葉は満面な笑みでこちらを見ていた。

 

 「昨日までは俺がそちら側だったのにどうしてこうなったのやら……」


 それは昨日の午後に遡る。

 彩葉が告げた通り、学園祭のクラスでやることを決める会にて、彩葉は送ってきたファイルの内容をクラスメイトに告げていた。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 「私はゲーム喫茶をやりたいとおもいます!」


 教卓の上に力強く両手を乗せ、はっきりとした口調で自分の思いを語り出す彩葉。

 その直後、騒がしかった教室内が静寂に包まれた。


 「ゲームというのは私にとっては大事であり——」


 彼女を表面上しか知らない人にとっては『ゲーム』という言葉が振り合わないと思ったのかもしれない。

 彩葉の話の途中で『ひ、姫島さんが!?』『ゲーマー女子なんてリアルでいるのか!?』などといった声が上がり始めていた。

 それでも彩葉は、自分の思いを言葉にしていき、最後には裁判を題材の主人公のように教卓をバンと叩いた。


 「私は自分の好きなゲームで学園祭を盛り上げたいと思っています!」


 この言葉に教室内で拍手喝采が始まっていった。

 後にも様々な意見が出たものの、インパクトが強すぎたのか、クラスでやるのは彼女が出した『ゲーム喫茶』に決定した。

 それまではよかったのけども……


 「姫島さん、藤阪と付き合って完全に染められちまったか……」

 「これ以上は言うなって、俺たちは姫島さんの選択が正しかったと……信じるしかないんだ」

 「でもまあ姫島さんがいうことに意味があって、藤阪が言っても効果は薄いよな」


 なぜか、矛先は俺へと向けられることになってしまった。

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 「はぁ……」


 昨日のことを思い出すたびにため息しか出てこない。

 彩葉の意見が無事に通ったからいいんだけど。

 

 「あ、一颯さん電車きましたよ!」


 俺の隣に立っていた彩葉がこちらへとやってくる電車を子供のように指差していた。

 昨日の昼過ぎまで緊張していたのが嘘のように思える。


 「どうしたんですか? 顔が笑っていますけど……」

 

 彩葉は首を傾げながら俺の顔を見ていた。

 ……しかも、結構近い距離で。


 「いや、なんでも……それよりも早く電車に乗ろう」


 俺は彩葉に声をかけるとすぐに電車の中へと入っていった。


 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 「一颯さん、ここですか?」

 

 電車を乗るこ20分、マップアプリを使いながら10分ほど歩いて到着したのは雑居ビルの前。

 元々は真っ白だったであろう外壁は黒が混じったためか暗い印象を醸し出している。

 

 「だね、たしかこのビルの3階だっけかな」


 中に入り、階段前の案内板で目的の場所を確認すると階段を上がっていく。


 「ここが……そうなんですか?」

 

 彩葉は食い入るように入り口に書かれた店名を見ていた。

 入り口には『ゲーミングカフェ マッチング』と書かれていた。


 「そうだね、とりあえず中に入ろうか」


 ゆっくりと扉を押し込んでから中に入ると、雑居ビルからは想像できないほどの木造をイメージした装飾がされていた。

 まるでファンタジー系のゲームに登場するようなギルドのような感じだ。


 「いらっしゃいませー!」


 俺たちが来たことに気づいたのか店員がこちらにやってきた。


 「え……!?」

 「な、なんで!?」


 俺と彩葉、そしてやってきた店員もほぼ同時に驚きの声を上げていた。

 目の前に現れたのは……


 「菜月さん!?」


 幼馴染の天見菜月だった。

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コミュ障ぼっち、最強剣客として無自覚にバズる〜最弱魔物を真っ二つにしただけなのにバズってしまいました。え、実はS級モンスター? いやいやご冗談を〜
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