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第44話 魅惑の女教師

「……ふあ?」


 眩しい光が顔に直撃して、変な声が出てしまう。

 目の前にはしわくちゃになった真っ白の用紙、途中まで英語の文章が書かれていたが、最後の方はみみずが通ったような線が書き綴られていた。

 赤点を取らない程度にノートに書いてあったことを頭に叩き込んでいたが、少し休もうと思って机に置いた枕へ突っ伏したまま、熟睡してしまったらしい。

 

 「ふわぁ〜! 朝か……」


 ゆっくりと立ち上がってカーテンを開けると、空は赤く染まっており、1日は終わりを迎えようとしていた。

 

 「突っ伏したのが朝方だし、そんな都合よくいくことはないよな……」


 独りごちながら、1日を無駄にしてしまったことを後悔する。


 「……起きたら腹減ったな」


 ずっと食べてなかったからか、急に腹の虫が喚き出してきた。

 大きな欠伸をしながら部屋を出た。


 「静かってことは郁奈ちゃんは出かけてるのか」


 部屋を出ると、シーンと静まり返っていた。

 そういや、父親が遅い連休に入ったとかで、夜中に車で出掛けてしまった。

 これがテスト期間じゃなければ有意義に過ごせたのに……


 リビングへのドアを開けて中に入ると、テーブルの上に近くのコンビニの袋が置かれていた。

 中を見てみると、チョコレートクロワッサンと付箋の貼られた蒸しパンが入っていた。

 付箋を見てみると、誰が書いたかわかる丸文字で『勉強ガンバ! カナ』と書いてあった。


 「……たまには姉らしいことするんだな」


 両手を合わせて姉に礼を述べながら、2つのパンを頂くことにした。

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 「……LIMEがこんなにきてたのか」


 パンを平らげて部屋に戻ってから、ベッドに置かれたスマホをみるとLIMEメッセージが来ていたことに気づく。

 10件来てそのうち3件は公式サイトからで1件は姉、残りは全て彩葉からだった。


 『睡眠時間を削って勉強しても逆効果なので、きちんと睡眠はとってくださいね!』

 『それと、脳を動かすには甘いものがいいんですよ! 休憩をとるようにしてください』

 『もし疲れていたら、少しだけ一緒に休憩しませんか?』


 他にも俺を心配したり、遠回しに対戦の申し込みのメッセージが送られていた。


 「ったく、言うなら堂々と言えばいいのに」


 送られてきたメッセージを見て、笑ってしまう。

 いつもは思ったらすぐに通話してくる彩葉だが、テスト期間ということもあってか遠慮しているのだろう。


 「ホント、テスト期間じゃなきゃいつでも相手になるんだけどな」


 スマホを布団の上に放るとテスト勉強の続きをすることにした。

 この時間に帰ってこないってことはもう少し遅くなると思うし、集中するなら今しか——


 「ただいまー!」


 こちらの行動を読んでいるのかと思えるぐらいの絶妙なタイミングで玄関のドアの開く音と、姉の叫ぶ声が聞こえてきた。

 もう一度集中するためにヘッドフォンをつけて音楽を流して今度こそと思っていると……


 「一颯起きてたのー?」


 勢いよく自分の部屋のドアが開き、姉の声がヘッドフォンを貫通していた。

 大きくため息をついてからヘッドフォンをゆっくりと外して、椅子を反対側へと回す。

 

 「昨日も言ったけど、テスト勉強して——」

 

 姉に向かって話そうと思っていたが、目の前にいたのは……


 「お、おじゃまします……」


 ジーンズ系のジャケットにワンピース姿の彩葉が立っていた。

 俺の声に驚いたのか、大きく目を開けて体を震わせている。

 ちなみに姉は彩葉の後ろに立ち、彼女の肩から顔をひょっこりと出している。

 しかも何かを含んだようにニヤけた表情で。


 「……何で?」

 「あまりにも暇だったから彩葉ちゃんとデートしてきちゃった、どうだ羨ましいか!」

 「そんな誇らしげにいうなら、彩葉の後ろに隠れてないで、堂々と前に出てこい」


 姉のことを睨みながら言ってみるが、悪びれた様子を見せることなく俺の前に立つと、手を口元にあてながら話しかけてきた。


 「これでも私、満足できると思ったんだけどさやっぱり彩葉ちゃんは一颯じゃなきゃ満足できないんだってよ?」

 「か、郁奈さん……!」


 姉の声が聞こえたのか、彩葉は顔を真っ赤にしながら叫んでいた。


 「それじゃ、邪魔者はご飯作りに行ってきますよ〜! それまで楽しんでてねー!」


 そう言って姉はそそくさと部屋を出ていってしまう。

 この場に残されたのは俺と彩葉……。


 「……なんかまた、郁奈ちゃんが迷惑かけたみたいだね」

 「そ、そんなことないです! 私から来たいって言いましたし!」

 「わ、わかったから近いって……」


 いつもはすぐに引き下がるのだが、今日に限っては俺の顔をじっと見ていた。


 「……一颯さん、全然寝てないんじゃないですか?」

 「いや、バッチリ寝たよ? 起きたの夕方だったけど」


 俺の言葉に彩葉は呆れたと言わんばかりの表情でため息をつき、机に置いていたノートを手に取ってじっくりと見ていた。

 

 「……『compose』意味は?」


 ノートを見ながら、彩葉は問題を出してきた。

 その単語は用紙に書きまくったから覚えている。


 「作曲するだっけ?」

 「『it's composed of something』は訳せますか?」

 「そ、それは何かを作曲……するとか?」

 「『compose』って単語は構成するって訳し方もするんですよ、なのでさっきのですと、『これは何かから構成されている』っていうふうに訳するんです」

 「そ、そうなんだ……」


 説明が上手すぎて思わず拍手をしていた。


 「英語は単語だけを覚えるよりかは、文章で覚えた方がわかりやすいんです」

 「そ、そうなんだ……」


 そう言えば前に授業で先生に言ってたような気がする。


 「その前に一颯さんはゆっくり休んだ方がいいかもしれません」

 「けどさ、テストまで日にちもないし頭の中に叩き込まないと——」

 「——わかりました」

 

 続けてノートを見ていた彩葉は俺の言葉を遮っていた。


 「……わかりましたってなにが?」

 「テストまで、私が一颯さんの先生になります!」


 興奮気味にまたこちらへと体を寄せる彩葉だけど、なんか楽しそうに見えたのは気のせいだろうか?

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コミュ障ぼっち、最強剣客として無自覚にバズる〜最弱魔物を真っ二つにしただけなのにバズってしまいました。え、実はS級モンスター? いやいやご冗談を〜
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