第41話 ゲームの影響
「……また連敗記録が更新されました」
スマホのスピーカーからは彩葉の嘆く声、目の前のディスプレイには『YOU WIN』と書かれた画像。
今日はずっと紹介したギャルゲーをやっているのかと思っていたが、いつも通り、夜に彼女から連絡が入り……
『これは日課であり、連敗記録を終わらせるのが私の務めです!』
と、言ってきたので『アケロク』の対戦をしていたのだが、連敗記録は絶賛更新中だ。
「そういえば、ギャルゲーの方はどう? そんなに難しくないと思うけど」
「さっきまでやっていました! たしか一颯さんが恋華さんと——」
「……頼むから主人公っていってくれないか?」
彩葉は主人公の名前を事もあろうに俺の名前にしていた。
少し席を外していた時に思いついたのが俺の名前だったと話していたが……何であのタイミングでもよおしたんだ俺の体!
「もう『藤阪 一颯』さんの名前で慣れてしまいましたし、変えるにしても誰の名前を使えばいいのか……」
「いや、誰かの名前じゃなくて適当に考えたり、好きな作品のキャラの名前とかあるだろ?」
「決める時に考えたんですが、出てきたのが全てカタカナの名前だったんです。 DPOの時は簡単に決まったんですよ! 好きなゲームのキャラが使えましたので」
「そっか……」
その後も話をしつつ、彩葉の記録が更新されたところで日付変更の時間になったので、終わらせることにした。
いつもならそのまま布団に入るところだが、気になったことがあり、ウイッチの電源を入れ、『小夜ナイトカム』を起動させた。
タイトル画面が表示されたあと、セーブのロード画面を見て俺は大きくため息をついていた。
「……やっぱりな」
ロードできるデータは2つあり、そのうちの1つは俺の名前が入っていた。
そして2つ目のデータには……
『天見 菜月』と表示されていた。
このゲーム、初回プレイでは男主人公だが、2周目から女主人公を選択することができる。
だが、この時名前が思いつかず、その時一緒にいた菜月の名前をそのまま使っていた。
「たしか序盤だったし……消すか」
このデータを作った当時の自分に微かな怒りを覚えながらデータを消去していった。
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「一颯さん、おはようございます!」
眠気とのバトルにギリギリ勝利して教室に入り、席に向かうと彩葉が笑顔で挨拶をしてきた。
日付変更までゲームをしているのに、彩葉からは眠たいと言ったものが全く感じられない。
ショートスリーパーの体質が羨ましく思えてくる。
「眠そうですけど、あれからすぐに寝てないんですか?」
「寝たけど、朝が弱いのか寝てもスッキリしないんだよね〜」
話していると欠伸が止まらなくなり、手で抑える。
「そういえば、目が覚める方法を教えてもらったんですが、試してみてもいいですか?」
「別にいいけど……?」
「それでは、椅子に座って私の方に背中を向けてください」
何をするのだろうかと若干不審に思いながらの机の上にカバンを置き、彩葉の言われた通りに座り、彼女の行動を待っていた。
すると、背中に柔らかい感触がしたのと同時に……
「一颯さん、目が覚めましたか?」
耳元で彩葉の囁き声が聞こえてきた。
まったく想像できなかったことに俺は大声で叫びだしてしまう。
それを聞いたクラスメイトたちは一斉にこちらをみていた。
「おーおー、朝からいいもの見せつけてくれるよなあ」
「ちょ! 藤阪いますぐ俺とかわりやがれください!」
「こんど彼ぴにやってみようかなぁ!」
毎度の如く俺たちをみていたクラスメイトたちは好き勝手に話していた。
「……彩葉、とりあえず離れようか?」
背中の心地よい感触をもっと楽しみたいと思いつつも彩葉に離れるように伝える。
一度大きく深呼吸をしてから彩葉の方を向き、こんなことをした理由を聞いていく。
「昨日のゲームで、恋華さんが一颯さんに——」
「——お願いだから主人公って言ってくれ」
彩葉が口にしているのは恋華というのは『小夜ナイトカム』にて一番最初に仲間になるヒロインの1人で、主人公に対して積極的に接してくれるキャラだ。
先ほど彩葉がやったことはそのキャラがしていたことだった。
「たしか、ゲームの一颯さんもそれで目が覚めたと言っていたので、やってみようと思ったんです」
ゲームと現実を一緒にするなと言いたくなるが、屈託のないキラキラと輝く笑顔で答える彩葉をみたら、何も言い返せなくなってしまう。
「……わかったけど、これだけは約束してくれ」
「約束ですか……?」
「……できればこう言うことは2人の時にしてくれ」
小声で言ったのだが、近くにいたクラスメイトに聞こえたらしく、教室内が再びざわめき出していた。
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「『小夜ナイトカム』ってウェードさんが作曲してるやつだよな?」
「作曲者でしかゲームを認識してないのか……」
昼前の体育の授業にて、男子は外でサッカー女子は体育館でバレーボールとなっていた。
4チームに分かれて試合をしており、先ほど試合が終わって適当に休んでいると天王寺がやってきた。
「でもさ、ゲームで起きたことをやってくれるなんてめちゃくちゃ羨ましいだろ、いいなあ……俺も姫島さんのメロンを感じたかったぜ」
「……手が動いてるぞ」
天王寺は話しつつ両手で何かを掴む動作をしている。
指摘するとわざとらしく驚いて手を後ろに下げていた。
「ってことは今から体育館倉庫に2人で行けば閉じ込めイベント起きるんじゃね? もちろんその後は……」
「……顔が歪みまくってるぞ」
天王寺の顔を見て俺は大きなため息をついた。
ちなみにあのゲームに天王寺の言う、体育館倉庫の閉じ込めイベントはあるが……口に出したら楽しみにしてると思われそうなので黙っていることにした。




