第37話 離れてしまう時まで……(SIDE NATSUKI)
「菜月ちゃん、服のセンスが独特だよね」
それは中学2年に行われた2泊3日の自然教室にて、これから移動するにあたり、部屋で着替えをしていたところクラスの女子たちから一斉に言われた言葉だった。
この日はこれから山に登ると朝食の時に担任が言っていたので、私服での行動が許されていた。
「そうかな? 動きやすくていいんだけどなあ」
私はそう言ってパーカーのファスナーをしめていった。
そのなんか異様な目で見られているんだけど気のせいだろうか?
この時の私の服装は基本的にパーカーと適当なTシャツ、下はジーパンが主流だった。
さっき言った通り、動きやすいのもあるけど、一番の理由は一颯と同じだから。
「天見さんってお小遣いとか何に使ってるの?」
「うーん、面白いゲームが出てたらそれ買うし、なければそのまま貯めちゃうかな」
「げ、ゲーム……?」
聞いたきた女子は顔を引き攣らせていた。
なんか変なこと言った?
「天見さん、中学になってもゲームなんてやってるの?」
「まあね、昔からずっとやってるしね」
「女の子なんだから、服とか気にした方がいいよ!」
「そうだよ、ゲームなんてものすごくオタクくさいし!」
気がつけば周りにいた女子が一斉にざわつき出していた。
「そうかな? 別に困ってもいないけどね〜」
リュックに財布やスマホ、充電器などを放り込むと集合場所へと向かっていった。
周りも一時的に言っているだけだろうし、言ったことすら忘れるだろうと思っていた。
けど……
「天見の格好どう見ても男みてーじゃね?」
「ねー、この年になってファッションに興味ないってちょっとね」
「やっぱ女は綺麗な格好してるほうがよくね?」
夕飯前の自由時間に、朝話しかけてきた女子たちと一部の男子たちが私を見て話していた。
好きなように言わせておこうと思い、無視をしていた。
「おいおい、女の部屋に来たのに男の服が置いてあるぞ、誰だよ女になりすましてるやつ!」
私が少し席を外している間に、遊びに来ていた男子たちが私のキャリーバッグを勝手に開けて服を見ていた。
その後ろでは今朝、一番に話しかけてきた女子たちが薄ら笑いをうかべている。
「ちょっと何勝手に見てるんだ!」
率先してバッグの中を漁っていた男子に蹴り飛ばす。
しかもそいつの手には私の下着の入ったポーチが握られていたがそれを他の男子に投げ渡していた。
受け取った相手はすぐに中身を開けていた。
「何だよでてきたのはスポブラかよ、これじゃ盗む気も……ぶげっ!?」
嬉々として話している男の股下を蹴り上げるとそのまま前のめりに倒れていった。
よく一颯が言ってるが、これは女にはわからない痛みだそうだ。
「あ、せんせい! 天見さんが!」
先ほど薄ら笑いを浮かべていた女子がわざとらしく先生を呼んでいた。
倒れ込む男子たちを見て、事情を聞かれる始末。
最後に倒れた男が私のポーチを手にしていたので、その場にいた男子は説教部屋に行く羽目になった。
私は被害者ってことで何も怒られることはなかったが、周りにいた女子は……
——格好も男見たいならやることも男そのものね
——やだー! 私、一緒におもわれたくないー!
わざとこちらへ聞こえるように話していた。
その日の夜は悔しくて布団を頭を被り、一人で泣いていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「その場にいた女子も叩きのめしちゃえばよかったのに!」
自然教室から帰ってきた次の日が土曜ということもあり、朝から藤阪家に行きカナ姉に事の経緯を話すと自分が受けたかのように怒っていた。
「でも、菜月もそろそろ、服装とか気にした方がいいかもね、菜月は元々可愛いから、そういうところを磨いたらもっと良くなるよ!」
「えー、めんどくさいー!」
そう言いながら、カナ姉のベットの上に倒れ込む。
その上を覆い被さるようにカナ姉が笑顔で私をみていた。
「可愛くなったら一颯の菜月を見る目が変わるかもよ?」
「ほ、ホント!?」
大声で言いながらすぐに体を起こした。
この時の自分は単純だなと思えてしまう。
「一颯も男の子だからね、いつも一緒にいる女の子が突然可愛くなったら、勢いで告白してくるかもよ!?」
「そ、そっかな……」
その時、私の脳内には壁ドンしながらゆっくりと唇を近づけてくる美化された一颯の姿が映っていた。
「おーい、なつきー??」
私を呼ぶカナ姉の声がすると映像は一瞬にして消え、目の前には困惑した表情で私の顔の前で手を振るカナ姉の姿。
「で、でもさ……そういうのってどうやって知ったらいいの?」
私の質問に答えるようにカナ姉は本棚から大量の雑誌を取ると私の目の前に置いた。
表紙にはテレビとかで見かけるような綺麗な女性が載っていた。
「まずはこれを読んでみようか! 後で菜月に似合いそうな服探してみるのもいいかも!」
その日からカナ姉のファッションの勉強会が始まった。
最初は意味不明なことが多すぎたけど、素晴らしい先生のおかげで覚えていくことができいき、中学3年になった時は学年でも上位に入るファッションリーダーと呼ばれるようになった。
——けれどもそれと同時に一颯と距離が離れていったのもこの頃だった。




