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第35話 知りたいんです、あの人のことを……!(SIDE IROHA)

 「……どういうつもりよ」


 大型連休も終盤を迎えた頃、私は菜月さんと一緒に彼女が指定したファミレスに来ていた。

 直接連絡をとったのではなく、郁奈さんに菜月さんと会ってみたいとお願いしていた。

 

 「菜月さんとは一度お会いしてみたいと思いましたので、郁奈さんにお願いしました」


 私の話に、菜月さんはドリンクバーのミントティーを口につけながら、こちらをじっと見ていた。

 いや、見ていたと言うよりかは、睨んでると言った方があっているかもしれない。


 「そもそも、あなたの名前知らないんだけど? カナ姉も教えてくれなかったし」

 「姫島彩葉と申します」

 「……天見菜月よ」


 私が自分の名前を伝えると、菜月さんがぶっきらぼうに答えていた。

 言ってくれるとは思ってなかったので、少し驚いてしまう。


 「それで、何を話すって言うの? つまらない話なら帰るわよ、暇じゃな——」

 「一颯さんについてです」


 今すぐにも帰りたいといった顔をしていた菜月さんだったが、一颯さんの名前を出すと一変していた。


 「私、一颯さんとは高校で知り合いました、きっかけはDPOっていうゲームで」

 「『ドラゴンファンタシーオンライン』でしょ、一颯がずっとやってたから知ってるわよ」

 「それじゃ、菜月さんもDPOを?」

 「一颯に誘われたけど、めんどくさいからすぐにやめたわ」


 そこまでシステム面倒だったかなと思いながら、ドリンクバーの緑茶を飲んでいく。


 「それからは一颯さんといろんなゲームをして遊びました」


 『機神』から始まり、『アケロク』をやっていることを知り、毎晩のように対戦を申し入れ絶賛負け記録更新中。

 あまりにも熱が入りすぎて体調を崩したこともあった。それもあって一颯さんが自分の家に来てくれたこともあった。

 

 「ふーん……」


 菜月さんは興味がないのか、スマホを見始めていた。


 「そのほかにはDPシリーズのコラボカフェに行ったり……」


 そういえば、その後に郁奈さんに出会ったんだった。

 最初は一颯さんの彼女さんだといったら驚きつつも笑っていたことを思い出す。


 今まで友達が全くいなかった私にとって、一颯さんと出会いは私の人生を大きく変えてくれたと言っても過言ではない。

 他の人が聞いたら大袈裟と言うかもしれない。けれど母親のせいで遊ぶことを許されず、友達を作ることを知らなかった私からしたらそう思ってしまうほどの出来事だ。


 「あのさ……」


 話を続けていると、ずっとスマホを見ていた菜月さんが大きくため息をつきながら、私を睨みつけていた。


 「もしかして、あなたの自慢話を聞かせるために呼び出したってわけ?」

 「そういうつもりではありませんよ」

 「そう言うつもりはないって……さっきからずっと一颯とのことを話してるじゃない! それでマウントを取ってるつもり!?」


 菜月さんは次第に声を荒げて行くと、他の席にいた人たちがこちらを見ていた。

 午前中ということもあり、お客さんの姿は少ないのが良かったと言うべきか。

 

 「マウントって意味はよくわからないですが、私は自慢をしたつもりはないですよ」

 「じゃあ、何なのよ……!」

 「今の一颯さんを菜月さんに教えてあげようと思ったからです」

 「は?」


 予想外の答えが返ってたと言わんばかりに菜月さんは目を大きく開けていた。


 「別に教えてくれなんて言った覚えはないんだけど!」

 

 そう言われれば、私から一方的に話してしまったので、これに関しては彼女に向けて頭を下げた。

 でも、決して一颯さんとのことを話したいからじゃなかった。


 「もしよかったら、菜月さんもお話ししてくれませんか?」

 「話すって何を?」

 「これまでの一颯さんとの出来事です」


 私が一颯さんのことを知ってるのは、高校に入ってからのことでそれ以前のことは知らない。

 DPOでアッシュさんと接した時はたまに話題に出すものの、そこまで話すことはなかった。

 だから、もっと一颯さんのことを知りたいと思うようになっていた。

 

 ——友達のことをもっと知りたい


 暫く菜月さんは何度かため息をつきながら、考えているようだった。

 そして……


 「わかったわよ、そんなに私と一颯のことを聞きたいっていうなら聞かせてあげるわよ!」


 息巻いてそう話した菜月さんだったが、表情はさきほどよりも柔らかいというか嬉しそうにも見えてしまった。

 

 「その前に飲み物取ってくるから、ちゃんと待ってなさいよ!」


 そう言って菜月さんは底が見えたカップを持つと、立ち上がってドリンクバーコーナーへと向かっていった。

 

 「……緊張したぁ」


 菜月さんの姿が見えなくなると、安堵の息をつく。

 一颯さんや郁奈さんは好意的なので、話しやすいけれど菜月さんの場合は一颯さんとの件があるのでうまく話せるか不安だった。


 「郁奈さんの言うことは本当でしたね……」


 呟きながら自分のスマホをバッグから取り出してLIMEを起動させ、郁奈さんとのメッセージを開く。

 そこに表示されているのは……


 ——話に困ったら、一颯の話題を振ってみるといいよ、嫌そうな顔しながらも喜んで話すから!

 と書かれていた。

 郁奈さんは一見、軽い感じにも見えるけど……きちんと人を見ることができる方なんだなと尊敬に値するほどだ。


 「戻ったわよ……」


 考えごとをしているうちに、菜月さんが戻ってきた。

 昔の一颯さんはどんな人だったのか楽しみになると同時に……


 私は菜月さんという人にも興味を持ち始めていた。

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コミュ障ぼっち、最強剣客として無自覚にバズる〜最弱魔物を真っ二つにしただけなのにバズってしまいました。え、実はS級モンスター? いやいやご冗談を〜
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