第34話 菜月との接触(SIDE IROHA)
「ねえ、そこのあなた!」
コンビニの前でスマホを見ながら一颯さんを待っていると、声をかけられた。
「どうしましたか?」
スマホをカバンにしまい、声をかけてきた人の方へ視線を向けた先にはサラッと腰まで伸ばした金ともいえるぐらいの明るい茶髪の女の人が立っていた。
前に郁奈さんが見ていた雑誌に載っている人たちのような服装をしているので、年齢は郁奈さんぐらいかもしれない。
「……何で、一颯はこんな地味な女と」
女の人は目の前にやってきて、私のことを上下に見ながら何かブツブツと呟いていた。
それにしても、この人どこかで見たことあるような……
「彩葉!」
そんなことを考えていると、一颯さんの声が聞こえてきた。
私と一緒に女の人もコンビニの入り口にいる一颯さんを見ていた。
「ごめんごめん、それじゃ行こうぜ」
「えっ……一颯さん!?」
女の人のことをまるで見なかったかのように一颯さんは私の手を掴んで歩き始めて行く。
後ろでは一颯さんの名前を呼んでいるが反応する素振りはなかった。
「い、一颯さん、呼ばれていますけど——」
「——さあ? 『いぶき』なんていくらでもいるから違う人を呼んでいるんじゃない?」
「そ、そうでしょうか……?」
口調は柔らかいが、ふとした時に一颯さんの顔を見ると、今までにみたことのない怒った表情をしていた。
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「……どうやら着いてきてはないな」
駅に到着すると一颯さんはいつも通りの表情に戻っていた。
「あの一颯さん……」
「どうしたの?」
「あの……腕」
一颯さんはコンビニからずっと私の腕を掴んでいた。
引っ張るほどではなかったので、痛みとかはなかったけれども……。
「ご、ごめん!」
掴んでいることに気づいた一颯さんは顔を真っ赤にしながらすぐに手を離した。
「一颯さん、本当によかったんですか?」
「何が?」
「さっきの女の人のこと……」
「……さぁ? 俺は知らない人だし」
そう言って一颯さんは改札にスマホをかざして中へと入ってしまう。
「もしかしてあの人って——」
「——3番線に電車が参ります、白線の内側まで……」
一颯さんに思っていることを伝えようとすると、案内放送によって私の声はかき消されてしまう。
「お、いいタイミングだな、早く来ないと乗り遅れるぞ」
一颯さんは改札前に立つ私の方へ向けて大きく手を振っていた。
モヤモヤとする感じは残るものの、電車に乗り遅れるわけにはいかないためスマホをかざして改札の奥へと入っていった。
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『彩葉、そろそろ限界……』
あれから家電量販店で目的のコントローラーを購入して、一颯さんが気になるゲームソフトを見ているうちに夕方になっていた。
そこで一颯さんと別れ、いつも通り、夕飯やお風呂などを済ませてから『アケロク』の対戦をしていたが、日付変更とともに一颯さんがそう告げた。
「次で勝ちますから!」
『今日だけでそのセリフ10回ぐらい聞いてるぞ……明日もまだあるんだし続きは明日ってことで』
そう言って一颯さんは一方的に通話を終了させた。
それと同時にゲームで使っているディスプレイには『通信が解除されました』という無機質且つ無情なテキストが表示されていた。
「今日も負け記録が更新されました……」
悲しく呟きながらゲームを終了させていく。
一颯さんの言う通り、明日も休みだからいいのだけれども……。
コントローラーをケースにしまってから、そのまま寝ようとしたがずっと昼間のことが頭から離れずにいた。
対戦中も一颯さんに尋ねてみたが、うまい具合にはぐらかされてしまう始末。
そんな時、スマホからポンと軽快な音が流れ出した。
画面を見てみるとLIMEアプリの通知が来ていて、送信相手は郁奈さんの名前が表示されていた。
Kana.Fuzisaka
『昨日こっそり撮った写真おくるねー』
メッセージと共に送られたのは、一颯さんと……彼の膝で気持ちよさそうに眠ってる私の写真だった。
たしか『アケロク』やっていた時に寝落ちしてしまった時のものらしい。
目が覚めた時には申し訳ない気持ちでいっぱいだったことは今でも忘れない……。
「そうだ……」
もしかしたら郁奈さんなら……
そう思いすぐにメッセージを送った。
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『うん、菜月だね』
「やっぱそうですか……」
メッセージにてこれから通話できるか郁奈さんに返すと、着信がきた。
『もしかして嫌なことされた?』
「いえ……私のことをじっと見ていたぐらいです」
『彩葉ちゃんのスタイルが羨ましく思ったのかもね、あの子自分のスタイルに自信持ててないし』
自分のスタイルが良いのか分かってはいないけど、私からしたら菜月さんは小さくて可愛らしい感じがしたけれども。
『で、その後どうしたの?』
「一颯さんが来て、腕を掴まれてそのまま駅へと行ってしまいました。 菜月さんは何度も一颯さんの名前を呼んでいましたけど」
『だろうね、一颯は完全に菜月のこと嫌いだからね』
「そうですか……」
『ってかこんなこと彩葉ちゃんが気にすることはないって、菜月には私から釘を刺しとくよ、自分のやったこと考えろって』
郁奈さんは軽快な口調で話していたが、彼女のことが気になり始めていた。
「あの郁奈さん……」
『どうしたの〜?』
私は郁奈さんに1つお願いをしたのだった。




