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第33話 一颯は私のだから!

 「カナ姉! どういうことなの!」


 大型連休も中盤を迎えた頃、バイトが休みなので昼直前に起きて、何しようか悩んでいたところ、電話が鳴り出した。

 画面を見ずに出ると、耳に突き刺さるような大音量が聞こえてきた。


 「菜月、いくら付き合いが長いからって主語がないこと言われても理解できないよー」

 「えっと……昨日カナ姉の家の前通って帰ったんだけどさ!」

 

 菜月の家は藤阪家がある通りの奥にあるため、別に通ることに関しては何も問題ないのだが、どうしたんだろう……。


 「カナ姉の家のドアが開いて一颯がでて——」

 「——まあ、私の弟だからいてもおかしくないでしょ?」

 「一緒にわけのわかんない女が出てきたんだけど!!!」

 

 最後に菜月のトーンが一気にあがっていったため、思わずスマホを耳から離した。

 女というのは彩葉ちゃんのことだろう。

 一颯の話では夕方ぐらいまで2人でゲームをやってみたみたいだし。


 「そりゃ一颯は私の自慢の弟だからね! 女の子の1人や2人家に連れてきても……」

 「こっちは真面目に聞いてるの!!」


 適当にはぐらかそうとするも菜月の声は益々ヒートアップして行くだけだった。

 耳が痛くなったので、スピーカーモードして通話を続けることにした。


 「……あのさ、菜月」

 「な、なに……?」


 私が声のトーンを低くすると菜月の声が震え出していた。

 私がこうなると言うことはどういう状況なのか、この子は充分すぎるぐらいわかっている。


 「別に一颯が誰と一緒にいようが、菜月には関係ないんじゃないの?」

 「そ、そんなこと……」


 菜月の声は益々小さくなっていく。

 

 「それに一颯はもう菜月とは会う気はないよ……もちろん理由はわかってるよね?」


 追い討ちをかけるように、話を進めて行くとついに菜月は何も言わなくなった。

 この子が一颯を気にかける理由はわかっている。

 そして、過去に一颯に対してやったことも。


 「で、あの時は……一颯のために——」

 「菜月……」


 菜月の言葉を遮るように名前を呼ぶ。

 今、言おうとしたことは嫌と言うぐらい聞いている。

 これ以上自分良がりな言い訳は聞きたくもなかった。


 「人間なんて完全じゃないからミスることもあれば間違ってことをしてしまうこともあるよ。 もしそうしちゃった時は反省したり謝ったりすることは必要だと思ってるよ」


 反省や謝罪をして二度と人を傷つけるようなことをしなければいい。

 この言葉は父や母から教わったことで、弟の一颯や妹同然の付き合いである菜月にも言ってきた。


 「何が言いたいの?」

 「昔のように一颯と一緒にいたいなら、自分を見つめ直しなさいってこと」

 「もしかして、あのことを言ってるの……?」

 「それは自分で考えることじゃない?」


 冷たく言い放つと菜月は今にも泣きそうな声をあげていた。


 「でも、これだけは言っておくね」

 「……なに?」

 「一颯は今、すごく楽しい日々を送っているよ」

 

 菜月は今にもかき消されそうな声で「何でよ」と呟いていた。


 「菜月がどんな行動をとるのかわからないけど、一颯のことをもう一度傷つけるならタダじゃおかないよ?」


 そう言ってこちらから通話を終了させた。

 自分でも驚くぐらいドスの効いた声がでてたから、怖くて電話はしてこないだろう。


 「私の大事な弟を傷つけたんだから、これぐらいは……」


 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 「見てください、一颯さん!!」

 「ちょ……彩葉、近いって言うか色々マズいから!」


 彩葉はスマホを俺の方へと向けながら俺の方へと体を寄せていた。

 あまりに急なことだったので、俺は後ろに倒れてしまう。

 座っていたのがソファで良かったと安心したいところだが……

 

 「どうしました?」


 彩葉は不思議そうな顔をして俺をみていた。

 しかも、ソファの上に乗っかる形で、両膝をついて、手は俺の顔の真横にあった。

 人によってはとんでもない方向へ勘違いしそうな絵面である。

 しかも、今日は夏みたいな気温なので、彩葉はそれなりに薄着である。

 

 「い、いや何でも……それよりどうしたの?」

 「すごいもの発見したんです!」


 彼女がずっとこちらへ向けているスマホの画面を見ると、新作のゲーム発表のお知らせ画像だった。


 「あー、ツブヤキったーでもトレンド入りしてたね」

 「そうなんですよ! 今から楽しみです!」


 彩葉が見せてきたのは、DPOのスタッフが制作しているという新作のネットゲーだった。

 DPOとは違ったものになるようだが、長年楽しませてくれたスタッフによるものなので俺も楽しみではある。


 「早く稼働日が知りたいですよね!」


 画像には稼働日は未定と書かれていた。

 

 「この会社だと、クオリティ高くするのに制作期間長くするから、早くて来年とかだろうね」

 「来年までは他のゲームで繋げないといけないですね!」

 「今の状態なら充分来年まで持つと思うけど……? 『アケロク』だってまだアプデあるみたいだし、それこそ『ドラゴンイーター』だってアプデあるって公式サイトで載ってたし」


 彩葉のことだから、『アケロク』だけで来年まで持ちそうな気がするけどな……。


 「そういえば、『アケロク』で思い出しました! 一颯さん今からヤナギバシカメラ行きませんか?」

 「別にいいけど、何買うの?」

 「コントローラーです、ずっと使ってたのがあるんですけど、最近調子が悪くなってしまったので」

 

 そういえば、ずっとコントローラーの調子が悪いと言っていたような気がした。

 『アケロク』やっている時に言っていたので、負けた時の言い訳だと思っていたが。


 「それじゃさっさと行こうか、郁奈ちゃんに留守番任せてばいいし」


 俺はスマホと財布をズボンのポケットに押し込むと彩葉と一緒に家を出た。



 「あ、ごめんちょっとコンビニ寄っていい?」


 駅へ向かって歩いている途中で近所のコンビニが目に入ると、財布の中にお金がないことを思い出した。

 何も買うつもりはないけど、もしかしたらと言うこともあり得るので、少しは入れておきたい。

 

 「いいですよ、外で待ってますね」

 「悪い!」


 飛び込むようにコンビニの中に入り、ATMがある場所へと向かった。


 「とりあえず3千円おろしておくか……」


 金額を入力してすぐにお金がでてきた。

 すぐに外で待っている彩葉の元へ向かおうとした時、窓の外の光景を見て俺はその場で立ち止まっていた。


 ——外では彩葉と……アイツが話していた。

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コミュ障ぼっち、最強剣客として無自覚にバズる〜最弱魔物を真っ二つにしただけなのにバズってしまいました。え、実はS級モンスター? いやいやご冗談を〜
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