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第32話 やっと会えました!

 「一颯さんはアッシュさんじゃないですか……?」


 彩葉の発した言葉に俺の鼓動はドクドクと音を立てていく。

 

 「昨日、郁奈さんから話を聞いた時に、昔、アッシュさんが似たようなことを話していたのを思い出したんです」


 彼女の言う通り、幼馴染から言われた時、ゲーム内でイリスに話したことは確かだけど、そんなことを覚えているとは……

 しかもそれをリアルで言われるとは思いもしなかった。

 過去に戻れるなら、その当時の自分に止めるように言ってやりたい。


「あの時のアッシュさん、友達に酷いことを言われて……辛いと話していました」


 彩葉は真剣そのものといった顔で俺を見ていた。

 これが単なる興味本心とか揶揄うために聞いてきたのであれば適当に誤魔化すけれども……

 目の前で俺を見る彩葉を見てると、そんなことをする自分が悪いことをしてるように思えてしまう。


 「……彩葉」

 「どうしました?」

 

 自分でもわからないぐらいに緊張していて、うまく声を出すことができずにいた。

 コップにのこっていたお茶を一気に飲み干す。


 「もし……仮に俺が彩葉のいう『アッシュ』の中身だったらどうする?」

 「どうする……ですか?」

 「例えば……幻滅するとか」


 これは俺の予想になるけど、彩葉はアッシュという人物に対してものすごい理想があるんじゃないかと思っている。

 それが俺のような趣味がゲームしかない人間と知った時、どう感じるのか……。

 アイツの時みたいに拒絶されるのではないか……

 そう思ったら、彼女と初めて会ってDPOの話をした時に怖さが先にでてしまい、別のキャラだと誤魔化すことにした。


 「幻滅なんてしません、むしろアッシュさんが一颯さんであって欲しいと思ってます!」


 彩葉は毎度の如く、こちらに身を乗り出してはっきりとそう告げる。

 

 「……その言葉信じるからな」


 彼女にそう告げると、スマホから画像アプリを立ち上げてから1枚の写真を表示して彩葉に見せた。


 「アッシュさん!」


 彩葉は写真を見ると、すぐに写っているキャラの名前を呼んだ。

 画面にはDPOでのメインキャラクターである『アッシュ』のスクリーンショットが映し出されていた。

 イリス……というか彩葉とちがって俺は写真撮影には興味なかったが、SNSのアイコンのために唯一撮ったものだ。

 

 「アッシュさんは……一颯さんだったんですね!」

 「そうだよ……」


 ため息を交えながら答える。

 けど、後悔とか罪悪感といったネガティブな感情はなく、やっと言えたと言った清々しさを感じていた。


 「それならどうして、言ってくれなかったんですか? あの時、別のキャラクターを言っていましたが」

 「あの時は彩葉がどんな人間なのか、知らなかったからだよ……」


 今になって思えば、さっさと言ってもよかったと思えるが。


 「……それに中身が趣味がゲームしかないどうしようもない男だと知った時、幻滅するんじゃないかってのもあったよ」

 「もしかして、私も菜月さんみたいなことを言うのでは? ってことですか?」


 彩葉の言葉に俺は黙って頷く。

 その直後、彩葉は大きくため息をついていた。


 「そんなことしないです! むしろ私は一颯さんがゲームが好きな人で良かったと思ってます! じゃなければ今回みたいにリアルで遊ぶことなんて出来なかったですから」


 力強くはっきりと彩葉はそう言ってくれた。

 それを聞いた俺は目頭が熱くなるような感覚がしたので、わざと欠伸をするそぶりをして誤魔化す。


 「……私は一颯さんにはものすごい感謝しています! だから一颯さんはゲームが好きなことに自信を持ってください!」


 次第に彩葉の目尻に大量の水が溜まっていた。


 「おいおい、泣くことないだろ……」

 「一颯さんも泣いてるじゃないですか、欠伸で誤魔化しているの気づいてますよ」


 絶対にバレてないと思ったのに……。

 気づいていないだけで俺って誤魔化すのが下手なのか!?


 「実はこれ涙じゃなくて別の成分で——」

 「……それ、DPOで誰かが言ってたセリフですよね?」


 彩葉の鋭いツッコミに思わず笑い出してしまう。

 それに釣られるように彼女も笑っていた。


 「安心したら、ゲームしたくなってきました! 一颯さん寝起きの運動のために『アケロク』やりませんか!」

 「……寝起きの運動どころか、そのまま疲れて二度寝になりそうだけどね」


 そう言いつつも俺はコントローラーを取って電源を入れていった。

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 「おっはよー!」


 『アケロク』を開始してからどれくらい経ったわからないが、リビングのドアが開くと同時に姉の声が聞こえてきた。


 「……おはよ」


 俺はテレビを向いたまま姉に声をかける。


 「あれ、彩葉ちゃんは? もしかして帰っちゃった?」


 その直後、ガチャっという音が聞こえてきたので、冷蔵庫を開けているのだろう。

 たしか、昨日の夕飯買い出しの時にカフェオレを買っていたし。


 「……ここにいるよ」


 俺は姉にわかるように、自分の膝を指差した。

 姉は「どういうことー?」と眠そうな声をあげながらこちらへとやってきた。


 「うわお、彩葉ちゃん大胆なことするね〜!」


 姉は目を開けて、俺の膝の上で寝ている彩葉を見ると、大声をあげていた。

 寝起きの運動と言っていたのだが、対戦をしているうちにそのままこちらに倒れてしまった。

 嬉しさもあるが、ずっとこの体制でいるのが辛くなってきてもいる……。


 「……そういえば郁奈ちゃん、彩葉に抱きついて寝ていたんだって? そのせいで寝れなかったんじゃないか?」

 「可愛い子は抱きつかれる義務があるんだよ? もちろん抱きつくのは女の子の特権だから!」


 屁理屈にも程がある。

 これ以上言っても堂々巡りになりそうなので俺はため息で返した。


 「それにしてもさ一颯」

 「何だよ……」

 

 姉は俺の顔を見ると、ニコッとした表情を見せていた。


 「何か吹っ切れたみたいな顔してるけど何かあった?」

 「……いや全くいつも通りだけど?」


 姉の発言に心臓が跳ね上がりそうになったが、平静を装って淡々とした口調で返した。

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 「菜月、せっかく友達紹介してあげたのに振ったってマジ!?」


 私は友人に呼び出されて、ファミレスに来ていた。

 大型連休のお昼時ということもあってか、店内には大勢のお客がいるのもあって賑わっていた

 そして席につくなり、呼び出した相手から怒られる始末。


 「ん〜、見た目は良かったんだけどね」

 「それなら何で、振ったのよ! あっちは菜月のことかなり気に入ってたのに」


 友人は注文したフライドポテトをつまみながら話していた。


 「この前、買い物付き合って言われたからオッケーしたんだけど、言った場所がどこだと思う?」

 「どこだったの? ビビリのあいつが変なところに行くとは思えないけど」

 「ゲームショップ」

 「え?」

 「ゲームショップ! その日予約していたゲームの発売日とか言ってた! ってか女の子をそんなところに連れて行く普通!?」

 「……別にそれぐらいいいんじゃない? まさかそれだけで振ったの!?」

 「それぐらいって、振るには充分すぎるでしょ!」


 私の言った理由に友人は呆れたと言わんばかりに肩をガックリと落としていた。


 「ったく、菜月のそう言ったところを否定するつもりはないけどさ、一応紹介したこっちの身にもなってよ」


 それから友人による小言が始ってしまう。

 最後には私には誰も紹介したくないまで言われてしまう始末。

 売り言葉に買い言葉で私が怒り出してしまい、勢いのままファミレスを飛び出してしまう。


 「はぁ……」


 自分のしたことに若干後悔を覚えながら歩く。

 正直、振った男に関しては顔が良くてもどうでもよかった。

 どのみち付き合うつもりはなかったから、告られても断るつもりだった。

 ゲーム云々は単なる口実にすぎなかった。


 「……一番いいのは」


 一人呟いた私は足を止めて振り向いた先にある家を見ていた。

 門に『FUZISAKA』と書かれた表札が貼られている。


 「一颯だけ……」


 ため息をつきながら藤阪家を後にする。

 たしか、カナ姉はバイトでいないし。


 「昼は適当にコンビニでいいよね?」

 「大丈夫ですよ!」


 ある程度歩き出したところで、藤阪家から声が聞こえてきた。

 振り返ると、一颯と女が楽しそうに話していた。


 「……誰?」


 電信柱に隠れながら一颯と一緒にいる女を突き刺すように睨みつけていた。

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コミュ障ぼっち、最強剣客として無自覚にバズる〜最弱魔物を真っ二つにしただけなのにバズってしまいました。え、実はS級モンスター? いやいやご冗談を〜
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