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第29話 頭によぎる昔の記憶

 「準備できてますよ。一颯さん!」


 俺が風呂を済ませた後リビングに戻ると彩葉がウイッチをモバイルディスプレイに繋げていた。

 人災と言っても過言ではないハプニングがあったが、そんなことがなかったかのようにいつも通りの表情でこちらをみていた。


 「モバイルディスプレイもってたの?」

 「はい、前にお祖父ちゃんが使ってたものでしたが最近大型のゲーミングディスプレイ買ったので頂いたんです」

 「本当に機械類が好きなんだな」


 自分の両親や祖父母は機械類に詳しくないため、昭三さんのような祖父がいることが羨ましく思える。

 彼女の場合、色々と事情があるのでそんなことは言えないけど。


 「ちなみにキャリーバッグの中にはノートPCも入ってますので『アケロク』もできますよ!」

 「今日やったら本当に寝れなくなりそうなんだけど……」

 

 俺の返答に彩葉は頬を膨らませていた。

 ってか彼女のキャリーバッグを姉の部屋に運んだ時に異様な重さだと思ったらノートPCが入ってたからか。


 「仕方ないのでまずは『ドラゴンイーター』からでいいです……」


 若干不貞腐れ気味にウイッチのゲームを起動させていった。

 何でそこまでして『アケロク』がしたいのか……

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 「お、やってるねー!」

 

 俺が欲しい素材を持っているボスを討伐中のため、声の方を向くことはできないが、声からして姉だろう。

 台所の方でガチャと何かを開く音が聞こえてきたので、飲み物でも取りにきたのかもしれない。

 

 「さっきケーキ買ってきたから一緒に食べない?」

 

 ちょうどよくボスを倒すことができたので、出てきたアイテムを取ってから姉がいる台所へと向かった。


 「彩葉ちゃんは何がいい?」


 テーブルに置かれた大皿の上にはショートケーキやチョコケーキ、モンブランなど6種類のケーキが置かれている。


 「ショートケーキいいですか?」

 「いいよー、フォークと小皿はこちらを使ってね!」


 トングを使ってショートケーキを装っていく彩葉。

 次に取ろうと思ったが、先に姉に取られてしまう。


 「一颯、こう言う時はレディを優先するべきだよ」

 「この場にレディなどいないから問題ないだろ」


 姉はすぐに自分を指さしていた。

 本当のレディ……淑女はそういう主張をしないと思うんだけど。


 「わかったからさっさと取ってくれ……」


 そう告げると姉は勝ち誇ったような顔でプリンケーキを取ると、彩葉の隣に座った。

 

 「モンブランでいいか……」


 他に食べたいものが見つからなかったので、目についたモンブランを取って自分の定位置の椅子に座る。

 俺が座る頃には既に食べ終わった後のようで、スマホで何かを調べているようだった。


 「彩葉ちゃん、もう1つ食べてもいいよ?」

 「あ、いえ……もうお腹いっぱいですので」

 「マジで!? これ食べたらもう1個いくつもりだよ、ついでに一颯の分も食べようと思ってたのに」

 「さらっと人の分を食べようとするな……こんな時間によくそれだけ食べようと思えるな」

 「女の子には甘いものは別腹って魔法の言葉があるんだよ? ね、彩葉ちゃん!」

 「そ、そうなんですか……?」


 彩葉に話を振るも、求めていた答えが返ってこなかったようで、姉は悲しそうな顔で次に食べるケーキを選別いしていた。


 「そういえば、さっき調べていた時に発見したんですよ!」


 彩葉はそう話を切り出しつつ、俺の目の前にスマホの画面を見せてきた。

 画面を見る限り、『ドラゴンイーター』の攻略サイトのようだ。


 「さっき倒したボスですけど、角を破壊すれば雷に弱くなるみたいです!」

 「どの攻撃も聞きづらいと思ったらそういうギミックになってたのか……」

 「弱点がわかれば、早く倒せて素材が集まるかもしれません! 食べ終わったら試してみませんか?」

 「オッケー、郁奈ちゃん残ったケーキ食べていいから」


 小皿に残ったケーキを口の中に押し入れると、リビングに戻ってゲームを再開させ、先ほど戦ったボスと戦って行く。


 「一颯さん、まずは角を集中攻撃しましょう!」

 「狙う箇所が小さいから近距離武器だときついな」

 「それじゃ私が遠距離で攻撃しますので、フォローお願いします!」

 「オッケー、まかせろ!」


 彩葉と話しながら、ボスに攻撃を与えていくうちに狙っていたツノが吹き飛んでいった。


 「一颯さん、ツノがなくなりました! 雷属性の武器に変更しましょう!」


 先ほど彩葉が見つけてくれた攻略サイトのやり方を試していき、先ほどよりも早く倒すことができた。


 「やりましたね!」

 「そうだね、どれだけツノを早く破壊できるかによるけど、それは慣れしかないのかな……」

 「それじゃ慣れるまでやりましょう! 明日もお休みですしまだまだこれからです!」

 「……そ、そうですね」


 この瞬間、『アケロク』を朝方まで付き合わされた記憶が脳裏に巡り出していく。


 「なんか、この感じ久しぶりだね」


 台所の方で、姉が話しかけてきた。

 まだケーキを食べているようで、小皿にはチョコケーキが乗っていた。


 「……そうだな」


 姉の言葉に俺はため息混じりに答える。

 まだ中学入ったばかりの時、当時の『友達』と泊まりがけでゲームを攻略サイトを見ながらやっていた。

 その時も姉は後ろで見ていた。


 「欲しい素材が出なかったからもう一度いくぞ!」

 「はい!」


 過去のことを吹き飛ばすかのように俺は彩葉に声をかけてもう一度ボスを倒しにいった。


 「やっぱ一颯が楽しんでる姿を見てるのは姉として嬉しいものがあるよね〜」


 姉が話しかけてきたような気がするが、ボスを倒すのに夢中になってしまい、理解する前に耳の中を通り過ぎていった。

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コミュ障ぼっち、最強剣客として無自覚にバズる〜最弱魔物を真っ二つにしただけなのにバズってしまいました。え、実はS級モンスター? いやいやご冗談を〜
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