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第28話 嬉し恥ずかし心臓バクバクの日

「はぁ……」


 大型連休に入って2日目の午前。

 彩葉に起こされてから、『ドラゴンイーター』でお互いが欲しい素材を集めるためボスを狩り続けていた。

 いつもなら楽しそうに話しかけてくるけれども、今日に限っては彼女のため息がよく耳に入った。


 「……ちょっと疲れたし、休憩しようか?」


 朝からずっとプレイしていたので、疲れたのかもしれない。

 そう思って声をかけるとため息混じりの返事が返ってきた。

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 「明日まで彩葉1人?」

 「はい、そうなんです……」


 遅めの朝食を取りながら、彼女のため息の理由を聞くと、どうやら昭三さんときく江さんが知り合いと一緒に温泉旅行に出かけたと話していた。


 「毎年誘われていたみたいですが、私が1人になってしまうので断っていたみたいです……」


 彩葉も一緒に行こうと思ったようだが、昭三さんからスマホの電波も入らない場所で、娯楽施設もないからつまらない場所だと言われたらしい。


 「私のせいで、断らせるのも悪いと思ったので、高校生になったから1人でも大丈夫と言ったんです」

 「それで2人は旅行に出かけたと」

 「はい、家を出る直前まで2人とも心配そうな顔をしてましたが……」


 本人は大丈夫だと言っても、女の子1人にさせると言うのは心配になるのだろう。

 ……うちの姉のような性格なら心配は微塵もしないのだが。


 「ただ、1つだけ問題があるんです」

 「問題?」

 「私、料理がまったく出来ないんです」

 

 内容が意外すぎて、言葉が詰まってしまい何も返すことができなかった。

 才色兼備の雰囲気がでていたので、できるものだと思っていたが。


 「今日だけでいいなら、コンビニの弁当で済ますとかありだけどね」

 「それしかないですよね……後で買ってこようとおも——」

 「甘いわよ、一颯!」


 彩葉の声を消し去るかの如く、大きな声と同時にリビングのドアが勢いよく開いた。

 ドアの奥にいたのは、パジャマ姿の姉だった。

 何故か腕を組みながらドアにもたれかかっているし……。

 

 「ふっふっふ……話は全て聞かせてもらったわよ、彩葉ちゃん!」

 

 そう言いながら、リビングの中に入ってくる姉。

 冷蔵庫からいつも飲んでいるカフェオレを取り出すと、俺の前の椅子に座る。


 「もしかして郁奈さんですか?」

 「そうだよ! 彩葉ちゃんおはよー!」

 「おはようございます」


 軽い感じの姉に対して、彩葉は超がつくほどの真面目な挨拶で返していた。


 「……盗み聞きするなんて親の顔が見てみたいな」

 「北海道に行けば見れると思うよ!」

 

 俺の両親は急遽決まった短期の出張で今は北海道にいる。

 本来は父だけで良かったが、料理や掃除洗濯など家事全般ができないのを心配して母親も同行することになった。

 それを口実に北海道へ行きたかったからだと思うが。


 「ってか可愛い女の子が困ってるのにコンビニ弁当を勧めるなんて……お姉ちゃんは恥ずかしいよ!」

 「じゃあどうすればいいんだよ?」


 自慢ではないが俺も料理はからっきしダメだ。

 仮にできたらどうにかできるのかと思うけど……。

 ちなみに両親がいない時の料理は基本的に目の前でカフェオレを飲んでいる姉がやっている。

 ……見た目と性格に反して、母親も認めるほどの腕を持っている。

 

 「私より、頭のいい高校に行ってるのに何でこんな単純なことがわからないかなー」


 姉はわざとらしく大きくため息をつくと、ニヤついた表情で俺をみていた。


 「『彩葉、俺の家に来いよ』って言えばいいじゃない!」

 「はい!?」


 俺の返答に姉は大笑いしていた。


 「彩葉ちゃんにはわからないと思うけ一颯、顔真っ赤になってんだよ!」

 「なってねーよ!適当なこと言うな!」


 顔が燃え上がるように感じがするが、気のせいだ。

 

 「これ以上一颯をいじると叩き出されそうな気がするから、ここまでにして……冗談抜きで彩葉ちゃんがよかったら来ちゃいなよ、こっちも私と一颯だけだし」

 「ご迷惑じゃないですか?」

 「むしろ私は大歓迎だし、すごい顔で私のことを睨んでるけど、彩葉ちゃんがきたら一颯も大喜びすると思うよ、そうだよね?」


 姉は彩葉に話すとすぐに俺を見る。

 その状況で嫌とは言うことは出来ないだろ……。


 「まあ、彩葉がよかったらだけど……」


 俺が答えると、彩葉は少し間悩んでいた。

 

 「それじゃ、ご厄介になろうかと思います……」


 彩葉の返答に対して真っ先に喜んだのは姉だった。

 人を出しにしてるが、嬉しいのは姉じゃないかと思う。


 「それじゃ、今から部屋を掃除しないとね、一颯は部屋にあるえっち本はちゃんと隠しておくんだよ」

 「あるわけないだろ! 適当なことを言うな!」


 姉とどうしようもないやりとりをしていると彩葉の笑い声が聞こえていた。

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 「今日1日お世話になります」


 数時間後、キャリーバッグを持ってきた彩葉が家にやってきた。


 「彩葉ちゃんいらっしゃーい! こんなところで立ってないで中に入ってよ! 重い荷物は男の一颯に任せればいいから!」

 

 姉は彩葉の手を取って家の中へとあげる。


 「あ、いえ……さすがにご迷惑では——」

 「大丈夫だよ、郁奈ちゃんの部屋に持って行くから、彩葉はリビングでゆっくりしてて」

 「すみません……ありがとうございます」

 

 彩葉はペコリと頭を下げると姉に呼ばれて、リビングへと向かっていった。


 「さてと持って行くか……っておもっ!?」


 姉の部屋にキャリーバッグを持って行こうと、持ち上げると予想以上の重さに思わず声がでる。

 1泊2日なのでそんなに荷物はないと思っていたが……一体何が入っているんだ?


 「よっこらせっと……」


 両手で持ち上げるようにして、なんとか運ぶことはできたが……

 いつも以上に疲れていた。運動不足かな……。

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 

 「一颯、お風呂つぎいいよー!」


 夕食後、姉が彩葉を連れて風呂に入ると言い出したので、それまではリビングで皿洗をしてから自分の部屋で時間を潰していた。

 それから1時間ぐらいして、声がかかったので、寝巻きを持って部屋を出た。


 階段を降りるとリビングから賑やかな声が聞こえてきたので、2人で何か話しているのだろう。

 そんなことを思いながら、洗面所のドアを開ける。


 「え……!?」

 

 ドアを開けた先に彩葉の姿。

 しかも姉に借りたパジャマを着ようとしていたのか滅多に見ることのない、上下とも白の下着姿……。


 肝心の当の本人は、目を大きく開け、口をパクパクと動かしていた。

 突然のことだったので、驚きで声がでないようだ……。

 

 「ご、ごめん!!!」


 大声で謝罪の言葉を叫びながら勢いよくドアを閉めた。


 「一颯、ナイス、ラッキースケベ!」


 後ろで待っていたと言わんばかりにこちらに向けて親指を立てる姉の姿があった。


 「かぁぁぁぁぁなぁぁぁぁぁちゃあああああん!!!!」


 怒号をあげながら姉を追いかけまわしていたが、内心はラッキーと思っていた。

 しょうがない、だって男の子ですから。


 そして、3人の夜はまだまだ続く……

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コミュ障ぼっち、最強剣客として無自覚にバズる〜最弱魔物を真っ二つにしただけなのにバズってしまいました。え、実はS級モンスター? いやいやご冗談を〜
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