第27話 楽しいことがまだまだいっぱい
「まずはこれを渡しておかないとな」
あの後すぐに2人で職員室に行き、担任の席に向かうと、2枚のカードを渡してきた。
真っ白なプラスチック製のもので、表には『半額』とか『このカードを会計で提示ください』といった内容の文字が書かれている。
「これを渡すのをすっかり忘れててな、去年までは会計で名前を言えばよかったんだが、名前を騙る連中がでてカード提示式になったんだ」
担任は笑いながらそう話していた。
学級委員が決まってからそれなりに日にちが経っているが、基本的に俺も彩葉も家からもってきた弁当を教室で食べているので、実害はなかったのだが。
「……もしかして、これを渡すためだけに?」
「それもあるが、6月に学園祭があるのはこの前話したから覚えてると思うが……」
そう言って担任は机の上に立てかけられたクリアファイルの中から一枚のプリント用紙を取り出してこちらに渡してきた。
用紙には学園祭と書かれていた。
「5月の終わりに中間テストがあって、それが終われば次は学園祭だ」
担任の話では中間テストが終わったら学園祭のムードになり、クラスや部活での出し物の準備をやっていくらしい。
「その学園祭が終わったら7月頭の期末テストが待っているんだけどな」
「……そんな天国から地獄に落とすようなスケジュールですね」
「学生にとってはそれぐらい刺激があったほうが楽しいだろ?」
そういう刺激はゲームの中だけで充分だ……。
「なので、連休が終わったらクラスでやる学園祭の準備を学級委員の2人に仕切ってもらうから、頼むぞ」
「でもそれって、学園祭実行委員がやるんじゃないんですか?」
先週のホームルームにて学園祭実行委員がくじ引きによって決められた。
もちろん、学級委員である俺と彩葉は除外されたのだが。
「学園祭実行委員は学園祭全体の準備で忙しくなるから、クラスの方は基本的に学級委員が仕切るだ」
「……なるほど」
「まあ、そこまで気を張ることはない、何かあればこっちを大いに頼ってくれ!」
担任は自身たっぷりに自分の胸をドンと叩いていた。
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「失礼いたしました」
担任からの話が終わり、職員室から出る際に挨拶をして扉を閉めた。
「一颯さん!」
職員室からでるなり、大声で俺の名前を呼ぶ彩葉。
なんかものすごく楽しそうな顔をしているのだが……。
「学園祭がすごく楽しみになってきました!」
いつものようにこちへと体をグイッと寄せていた。
「学園祭といったら、クラスでお店を出したりするんですよね! 今からどんなお店にするとか考えたらワクワクしちゃいました!」
「……職員室でまったく話さなかったのはそういうことだったのか」
「一颯さんはどんなお店がやりたいですか! 私はですね——」
俺のぼやきが聞こえなかったのか、彩葉はクラスでやりたい出し物を次々と挙げていた。
「一番やってみたいのはメイド喫茶ですね、『軌道』シリーズでやっていたのを見て、羨ましく思ってたんです!」
「そういや最初の学園編でそんなイベントがあったね……」
彼女の言う『軌道』シリーズと言うのは長く続くシリーズの学園RPGのことだ。
そのイベントで学園祭があり、主人公のクラスではメイド喫茶をやっていた。
だが、クラスでメイド喫茶をやるとなったら彩葉がメイド側になるのだが、この様子だと気づいてなさそうだ。
「まだ先のことってのもあるし、決めるのは俺たちだけじゃなくてクラスで決めることだからね」
俺の一言に彩葉はハッとした顔をしていた。
「言われてみればそうですね……。 まずは明日からの連休を楽しまないとですね!」
そう言って彩葉は軽快な足取りで歩き出して行った。
「……連休終わってもバタバタしそうな気がするな」
彼女の後を追いかけながらそう思う俺だった。
その中に嫌という感情は一切ないのだけれども。
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「一颯さんおはようございます!」
窓から眩い日の光が差し込む、晴天の朝。
枕元でブーブーと音を立てて震えるスマホに触れると元気は声が聞こえてきた。
「……おは……よ」
布団の中でモゾモゾと芋虫のように動きながら話すも声が掠れてしまっていた。
「一颯さん、朝ですよ! 起きてください!」
言われるがままにゆっくりと体を起こすと、窓から差し込んできた光が顔に直撃する。
そのおかげか、眠っていた脳が動き始めたような気がするが、部屋の壁掛け時計を見てため息が出てしまう。
「……いくら何でも早すぎない?」
壁掛け時計は長針も短針も真下を刺していた。
学校でもこんな時間に起きたことはない。
「そうですか? 祖父母は日が昇る前に起きて、さっきゲートボールをしに行きましたよ」
どうやら彩葉もそれに合わせているので朝が早いようだ。
ってか、昨日も日付変更まで遊んでいたのに、こんな早朝から元気にいられるんだ?
「彩葉、お願いがある……」
「はい、何でしょうか?」
「後、3時間ほど寝かせて……」
そう言って俺は布団の中へと潜り込んでいった。
ちなみに、3時間後ピッタリに連絡をしてきたのは言うまでもない。
こうして俺たちの大型連休が始まったのであった。




