第22話 2人の関係にリザレクション!
「お、おじゃまします……」
姉が帰ってきたので、リビングに向かおうと階段を降りると、いるはずのない人物を見て一瞬、世界が停止したような感覚に襲われる。
「……何で姫島さんが郁奈ちゃんと一緒に?!」
「あまりにも可愛かったからナンパしちゃった」
ぶりっ子のようなポーズをとりながらウインクする姉。
いつもなら何か返すところだが、予測しない出来事が起きたため、ため息でしか返すことができなかった。
「ほら、こんなところで話さないで暖かいご飯でも食べながら駄弁ろうよ!」
そう告げた姉は後ろから姫島さんの体を押しながらリビングへと向かっていった。
「ほら、一颯もはやくー!」
リビングから姉の声が聞こえてきた。
「わかったよ……」
俺は大きくため息をついてからリビングへと向かっていった。
正直きまづいんだけど……。
「一颯、今日のご飯はどこー?」
リビングに入ると、姉が忙しそうに動き回っていた。
姫島さんは椅子に座りながら動き回る姉の姿を追っていた。
「えっと……郁奈さん、私も手伝います!」
「大丈夫だよ、彩葉ちゃんはお客さんなんだからゆっくりしてて!」
立とうとする姫島さんを静止させてから、再度動き回る姉。
「……夕飯はレンジの中に入ってるよ」
「オッケー! あとはこのお姉ちゃんに任せて一颯も座って彩葉ちゃんと話してなよ!」
姉は俺の方を見てウインクしていた。
いつもなら俺に用意させようとするのに、どんな風の吹き回し……っていうか魂胆は見え見えだった。
「わかったよ……頼むから皿とか割るなよ」
「まかせろり!」
何故か敬礼の姿勢で意味不明なことを言ってきた。
不安な気持ちに駆られながらもいつも座る椅子に腰掛けると目の前に座っている姫島さんと目があった。
多分、姉がここに座るように言ったのだろう。
いつもなら何かしら会話が始まるのだが、今回に限ってはお互いずっと黙りっぱなしだった。
何かきっかけがあれば……。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「いっただきまーす!」
「……いただきます」
「い、いただきます……」
夕飯の準備ができたので、俺を含めこの場にいる全員が手を合わせていた。
「彩葉ちゃん遠慮しないでじゃんじゃん食べて!」
隣に座る姉が姫島さんに声をかけていった。
まるで自分が作りましたと言わんばかりに言っているが、今日の夕飯は近くのスーパーで買ってきた惣菜だ。
唐揚げや豚カツ、ポテトサラダなど適当に目についたものをカゴに入れただけなので、何を買ったのか俺もわかっていない。
「は、はい……!」
姫島さんは震えた声で答えていた。
いつもは目の前の席にいるのが父親なので、彼女がいることに違和感しかない。
「郁奈ちゃん、ゆっくり食べさせてあげなよ……」
「美味しいものは早く食べないと、じゃないと一颯がすぐに食べちゃうし」
「……むしろ好きなものをさっさと食べるのは郁奈ちゃんだよね?」
「あれ〜そうだったかな〜カナわからなーい」
普段よりも甲高い声をだして誤魔化す姉。
これ以上相手にするのも疲れるので、黙々と食べることにした。
緊張しているのか、姫島さんも姉に声をかけられなければ黙ったままだった。
「……もう、何で2人とも話さないのよ」
何度か隣からため息混じりに不満を漏らす声が聞こえていた。
その度に俺の顔をじっと睨んでくるが、俺は無視していた。
というか、何もできないと言った方が正解かもしれない。
「まったくもう……」
そんなやりとりを何度かしているうちに姉が痺れを切らしたようだ。
そしていつものトーンで俺の名前を呼んだ。
「……なに?」
「彩葉ちゃん……私を一颯の彼女と思ってたみたいだよ!」
「え! なっ……!!」
俺が返すと当時に姫島さんからこれまで聞いたことのない声が聞こえてきた。
見てみると目を見開いて姉を見ている。
「たしかに一颯はそこら辺の男よりカッコいいからね! 実の弟じゃなければ付き合ってたかもしれないよ」
「……飯食ってる時に気分が悪くなるようなこと言わないでくれ」
「むぅ……いくら優しいお姉ちゃんでもそこまで言われると傷ついちゃうんだけど」
「そんな繊細なメンタルじゃないだろ……」
そう答えつつも俺の視線は姫島さんへ。
隣が変なことを言い出したことに驚いたのか、ずっと下を向いていた。
「……姫島さん、郁奈ちゃんは適当な性格だから気にしなくても——」
「——とうなんです!」
「え?」
「郁奈さんが言ったことは本当なんです!」
姫島さんは持っていた箸と茶碗をテーブルに置いてから顔を上げ、じっくりと俺の顔を見ていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「……なるほど、それで俺のことを避けていたのか」
「……ごめんなさい」
夕飯を済ませたあと、姉が冷蔵庫から出してきたカップアイスを食べながらDPOで彼女が受けてきたことを話してくれた。
DPOは男性ユーザーが多いと言われるネットゲームの中で比較的、女性が多いと言われていた。
それもあって、男女のもつれ話は耳にしていたし、それが原因でDPOから離れたフレンドもいた。
「なので、最初に郁奈さんから声をかけられた時はまた言われるんだって思ってました」
「可愛い女の子にそんなことしないって」
姉は姫島さんと同じカップアイスを大きなスプーンで掬いながら彼女を見ていた。
「……だからっていきなり避けるようなことしなくてもいいのに」
「そうだよ、よく考えてみなよ、家に引きこもってる一颯に彼女ができるはずないじゃん」
「……郁奈ちゃん、ややこしくなるから黙ってて」
「むぅ……」
姉は口を上に尖らせていた。
「……でも、理由がわかってよかったよ」
俺は安堵の息をついていた。
「……藤阪さん」
「なに?」
「……また一緒に遊んでくれますか?」
姫島さんは真剣そのものな表情でこちらを見ていた。
なんか今にも泣きそうな感じにも見えてしまう。
「俺はずっとそのつもりだよ、ゲームで盛り上がれるのは姫島さんだけだし」
そう答えると絶望そのものを現していた表情が一気に明るくなっていった。
ようやくいつもの彼女らしくなったようにも思えた。
「よかったです……」
それからは以前のようにゲームの話で盛り上がっていた。
つい数日だけなのに何年振りにあったような感覚でずっと話をしていた。
「そうだ! 今日『ドラゴンイーター』買ったんですよ!」
「やっぱ姫島さんも買ったか……どうしようか悩んだけど、買っといて正解だったな」
「えぇ、ちなみに藤阪さんは武器何を使います? 私は前作だとランチャー使ってました」
「俺はずっと槍で、今回もそれでいくつもりだよ」
「それじゃちょうどいいかもですね!」
しばらく新作ゲームのことで盛り上がっていると、姉が不思議そうな顔でこちらを見ていた。
「……郁奈さんどうしました?」
「ずっと思ってたんだけど、それだけ仲がいいのに何で苗字で呼び合ってるの?」
「「え?」」
姉の言葉に俺と姫島さんは同じタイミング且つ同じ言葉を出していた。
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