第21話 私の勘違い?(SIDE IROHA)
「私はアーモンドチョコクリームマシマシカフェオレにしようかな、あなたはどうする?」
駅の改札で会った女の人の勢いに流されるままに駅ビルの中にあるコーヒーチェーン店に連れてこられたのはいいけど、メニューを見ても見たことのないカタカナが並んでいて、どんな商品か想像できないものばかり。
その中でも何とか見つけたのが、アイスティだったのでそれを注文することにした。
すぐにお金を出そうとするも……
「あ、誘ったのは私だからお金は出すよ」
そう言ってスマホを取り出して会計を済ませてしまった。
「あそこ空いてるから席確保しよ!」
そのまま受け取り口から注文したものを受け取るとそのまま席へと向かっていったしまった。
ペースに巻き込まれることに不満を覚えつつも、女の人の後をついていくことにした。
「はい、アイスティここに置いとくね!」
席に着くと私の目の前に注文したアイスティを置いてくれた。
そして女の人の前にはチョコレートやアーモンドの上に大量の生クリーム。
生クリームは嫌いではないけど、あんなに食べたら気持ち悪くなりそうな気がする。
「そういえば自己紹介してなかったね、私は藤阪郁奈っていうの」
そう名乗った女の人……郁奈さんはストローを口につける。
「……え、藤阪……さん?」
「うん、そうだよ?」
「もしかして……藤阪一颯さんは」
「うん、私の可愛い弟だよ」
満面な笑顔で答える郁奈さん。
もしかして私、とんでもない勘違いをしてしまったことに気づいた。
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「つまり私を一颯の彼女だと思い込んでたってこと?」
「はい……」
かき消されそうな私の声に郁奈さんは笑っていた。
「なるほど……ここ数日、一颯が元気なかったのも理解できたよ」
「すみません……!」
「別に謝ることじゃないから」
頭を下げる私を見て、郁奈さんは顔を上げるように言ってくれた。
「それにしても私と一颯がそういう風に見られてたなんてあの子が知ったらどんな顔するか」
郁奈さんは1人で何か呟くと再度ストローに口をつけていった。
「ちなみにさ、学校での一颯ってどんな感じなの?」
「藤阪さんですか……?」
「うん、聞いても全然話してくれないし、ご飯食べたらさっさと部屋に籠って出てこないんだよ」
話を聞いてる限りだと、学校で見せる藤阪さんとはかけ離れてるような気がする。
それからも郁奈さんから聞かれたことに答えていくうちに、結構な時間が経っていることに気づく。
「ごめん、一颯からLIMEきたからちょっと待ってて!」
それでも郁奈さんの質問は止まることなかったが、LIMEの通知で質問攻めは終わりを迎えることに。
「パパもママ、今日も仕事で外食なんだ……」
本人が気づいてるかどうかわからないが、思っていることが口に出ていた。
すぐに何か閃いたと言わんばかりの表情で私を見ていた。
「そうだ彩葉ちゃん! よかったら今からうちに来ない?」
「い、今からですか……? でも、夜遅くにお伺いするのはちょっとご迷惑かなと」
「気にしなくても平気だよ、今日うちの両親夜遅くまで帰ってこないし!」
「そ、そうなんですか……」
「それに彩葉ちゃんが来たら一颯も喜ぶと思うよ!」
そもそも自分が勝手に勘違いして、藤阪さんを変な風に避けてしまったのに、喜んでもらえるのだろうか。
「よし、そうと決まったら行動あるのみ! 彩葉ちゃん行くよ!」
郁奈さんは残っていた飲み物が空になるまで吸い上げていくとすぐに立ち上がり私の手を掴んでいく。
「え、あっ……ちょ、ちょっとまって——」
ずっと思っていたことだけど、郁奈さんって勢いがすごい……。
そう思いながら私は引っ張られていくのだった。
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「……さすがに何もかもお金を出してもらうのは申し訳ないので」
「いいのいいの! 私が好きでやってることだしね」
最寄駅に着き、藤阪家へ向かっているけれど……
さっきのカフェもそうだけど、ここまでの電車賃は全て郁奈さんが出してくれた。
返そうと思っても受け取ってもらえないので困っていた。
ちなみに祖父母には電話で藤阪家で夕飯をご馳走になると話したら快く許してくれた。
電話に出たのは祖母だったけど、近くにいた祖父の喜ぶ声が聞こえていた。
「ってかさ、彩葉ちゃんがいるってわかったら一颯どんな顔するかな!」
歩きながら郁奈さんはイタズラを仕掛ける子供のように含みのある笑みを浮かべていた。
それだけ仲がいいということなのだろうか……。一人っ子なのでわからないけど。
「って考えてるうちに、家に到着! 狭い家でごめんね」
足を止めた郁奈さんは自分の家をオーバーな動きで示していた。
狭いと言っているが、自分の家と比べても大きいと思えた。
「えっと、鍵は……あったあった!」
玄関前に移動すると郁奈さんが鍵を取り出してから鍵穴に差し込みと軽快な動きで回して解錠していくと勢いよく開けていく。
「たっだいまー!」
郁奈さんは大きな声でそう告げながら私を見て手招きをしていた。
「……やっと帰ってきたよ、早くしないと夕飯がさめ——」
ぼやきながら藤阪さんが階段から降りてきたが、言葉も動きも止まっていた。
その様子を見た郁奈さんはしてやったりと言わんばかりにニヤついていた。
「お客さん連れてきちゃった、せっかくだし3人で食べよ!」
そう言って私の肩をがっちりと掴む郁奈さんに対して私はというと……
「お、おじゃまします……」
震えた声でそう告げることしかできなかった。




