第20話 彩葉の過去の記憶から……(SIDE IROHA&IBUKI)
——イリスさん、何でいつも私の相方と一緒にいるのよ!
先ほどクエスト行こうって誘われたから言っていただけで……
——あのさぁ、私と彼の関係性しってたら誘われても普通は断るでしょ?
同じチームメンバーですし……
——もしかして、私の相方を取ろうとしてるの!?
取るってどういう意味ですか?
——この期に及んでぶりっ子ぶらないでよ! 私知っているんだからあなたのせいで別れたプレイヤーがいるってことを!
突如目の前にはDPOにて以前所属していた時に、女性メンバーとの言い争いの場面。
違うことを説明をしたが、聞いてもらえるどころか、周りまで彼女の味方をしたことで居づらくなってしまい脱退することに。
「私はただ、みんなと楽しくゲームがしたいだけなのに……」
そして、一瞬にして辺りが真っ暗になっていった。
「姫島さん、起きないと乗り過ごすよ!」
辺りが真っ暗になった直後に突如、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
そしてゆっくりと辺りが明るくなっていき……
「もうすぐ……駅……お乗り換えは——」
目の前には電車の風景が映し出された。
あれ、なんか斜めになっているような……
「大丈夫?」
声がする方へ向くと心配そうな表情を浮かべていた藤阪さんの顔があった。
「も、もしかして私寝てました?」
「電車乗ってからすぐに、初めていくところだったし疲れてたんじゃない?」
こんなに遠出をすることもそうだけど、外出自体久々だったから楽しくて疲れを忘れていたみたいだ。
「そうかもしれないですね……それよりもごめんなさい」
「別に謝らなくても大丈夫だよ」
すぐに顔を上げると、目の前にいた女性が私と藤阪さんを交互に見て笑っていた。
「……何だよ」
「別になんでもないよ〜」
藤阪さんがその女性に声をかけると、こちらを見て微笑んでいた。
電車乗るまではいなかったけど、誰なんだろう……。
「お待たせいたしました、……駅! ……線はお乗り換えです」
電車が乗り換え駅に到着するとすぐに席を立ち上がった。
電車を乗る時は青空が広がっていたのに、すっかり夜空へと変わっていた。
「今日はありがとうございました! お気をつけて!」
藤阪さんにお礼を言ったからすぐに電車から降り、外から藤阪さんに向けて手を振っていた。
それに気づいたのか、藤阪さんも座ったまま小さく手を振ってくれた。
先ほどの女性も隣に座りながら一緒に手を振ってくれたのはいいけれど……
——イリスさん、何で私の彼と一緒にいるの?
その光景を見て突如、声が聞こえてきた。
嫌というほど聞いた言葉を……。
そして、乗ってきた電車はゆっくりと発車していき、瞬く間に姿が見えなくなっていった。
「……もしかしてあの人は藤阪さんの——」
ホームで1人、佇みながら自分のやってきたことを悔いていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「あれ、藤阪……今日も1人で昼飯か?」
昼休み、食堂でスマホを見ながら注文した五目チャーハンを食べていると前の席に天王寺が立っていた。
「……そうだよ」
あれから数日が経った。
いつもなら夜には姫島さんから連絡が入り、ゲームをするか駄弁るかしていたが、あの日を境に彼女から連絡が来なくなった。
また体調を崩したのかもしれないと思い、次の日も連絡せずにいたが週明けは普通に登校していたので、声をかけてみるもずっとスマホの画面を見ている始末。
「もしかして喧嘩でもしたのか?」
そう言いながら天王寺は目の前の席に座る。
「……した覚えはないんだけどな」
最後に姫島さんとまともに話したのはコラボカフェに言った日。
カフェだったりその後で店を回っている時にはそんな感じには見えなかったが、我慢していたのだろうか。
「教室ではずっと2人のことで話題が持ちきりだぞ、ついにあの2人も破局を迎えるのかってな」
「知ってるよ……」
いつもなら姫島さんと話しているので、そこまではっきりと聞こえては来ないけど、今回ははっきりと聞こえていた。
ずっと嘆きっぱなしだったのが歓喜の声をあげていたり、楽しみがなくなったという声も……。
「で、どうするんだ?」
「どうする……とは?」
「いや、姫島さんとはこのままでいいのかってことだよ」
天王寺は不満そうな顔で俺を見ていた。
そんなことを言われてもな……と思いながら黙々とチャーハンを口の中に運んで行った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「お買い上げありがとうございます!」
放課後、乗り換え駅にある家電量販店で予約していた商品をレジで受け取る。
「……別に買わなくてもよかったかな」
商品をカバンにしまいながら思っていることを口にしていた。
購入した商品は今日発売の多人数でドラゴンを狩っていくアクションゲーム。
全シリーズをプレイしたことあると藤阪さんに話したところ、新しいのがでるから一緒にプレイしようと言っていた。
けど……それはもうできないかもしれない。
「前作も1人でプレイできたし、これも1人でやればいいだけ……」
自分に言い聞かせるように、呟くが……納得することができなかった。
でも、また誰かに迷惑をかけるぐらいなら——
家電量販店を出て駅に向かって歩いていく。
夕方前なので、これから乗ろうとしている電車の改札にいる人の数はまばらだ。
スマホを取り出して改札を抜けようと思っていると反対側の改札に見覚えのある人影が……。
「あれ?」
どうやら、あちらも気づいたようだ。
「やっぱそうだ! この前の休みに一颯と一緒にいた子だよね!」
私の前に立ったのはあの日、藤阪さんと一緒にいた女性だった。
「暇だったら、そこのスコバに行かない?」
女性は溢れんばかりの笑顔でそう告げた。
……私に取ってその笑顔が怖く感じていた。




