第18話 ハプニングの末に……
「車内は大変混雑しております。 1人でも車両の奥へ詰めていただくか……」
電車が発車してから10分ほどで停車する駅へと到着し、予想通り大勢の人たちが一斉に乗って来た。
乗った直後は隣同士にある程度の感覚を空けることができたが、今は左右の人から挟まれる形になってしまう。
「……大丈夫?」
俺と隣の女性に挟まれ、辛そうな表情を浮かべていたので声をかけた。
「何とか耐えてますけど……これ以上はないですよね?」
「いや……」
俺たちが降りる終点駅まで、4駅ほどある。
しかも全て別の路線が走っている駅ばかりだ。
「……後、40分ほど我慢しよう」
俺の言葉に姫島さんの顔が若干青ざめていった。
そして、次の駅に到着してさらに人が乗って来たことにより、所謂、鮨詰め状態になった。
隣にいた姫島さんは人の波に飲み込まれるように俺の方へ抱きつく形になってしまっていた。
「ぐおっ」
思いがけないことで変な声が出てしまっていた。
「ご、ごめんなさい、大丈夫ですか! すぐに離れますので!」
「い、いや……別に痛いとかじゃないから平気」
変な声が出たのはこの状況になったからだ……
そりゃあ、姫島さんのようなスタイルのいい人に抱きつかれたら変な声も出るだろう。
ってさっきから、柔らかい感触が腹部から伝わってくるし……。
「でも、さっきから藤阪さん苦しそうな顔してますし……!」
「……苦しいけど、その中にある喜びを噛み締めてるともいえなくもないかな」
ゲームやアニメに親しんできた男子高校生ならこんな状況に一度は夢見たり憧れるのではないだろうか。
まさか本当にこんなことを体験するとは思ってもみなかったが……。
目の前にいる姫島さんにどうやって説明するか悩んでいると、心配そうな顔でこちらを見ていた。
一旦、心を落ち着かせるためにわざとらしく咳払いをした。
「うんまあ、この状況で離れるのは無理だと思うから、もう少しこのままを維持しよう」
「わかりました……でも苦しかったら何とかしますから、無理しないでくださいね……」
何とか誤魔化すことができたようだ。
ちなみに次の駅で大量に乗客が降りていったことで自分たちが乗っている電車内に平穏が訪れた。
……それと同時に俺の幸せな時間がなくなったわけなんだけど。
「……幸せはずっと続かないもんだな」
終点駅に向かう電車に揺られながら俺は独りごちていた。
ちなみにその声が姫島さんの耳にも入ったようだが、不思議そうな顔で俺を見ていた。
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「やっと到着した……」
「疲れましたね……」
最初に乗った電車で終点まで辿り着き、フラフラになりながら乗り換える路線に飛び乗った。
その電車では2人揃って座ってしまい危うく乗り過ごしそうになったが、何とか目的の駅へと到着した。
改札を出て少し歩いたところに、コラボカフェが行われる建物の前に到着した。
集合してから、1時間ほどしか経ってないが、様々なことがありすぎて俺も姫島さんも必要以上に疲労困憊していた。
「でも、念願のコラボカフェに来たんですから楽しみましょう!」
そう言って姫島さんは店の中へと入っていったので俺も続いていく。
「いらっしゃいませ、こちらの時間は予約制になっております」
店に入ると、すぐに店のスタッフがやってきた。
「え、よ……予約ですか?」
スタッフの言葉を聞いて驚く姫島さんだったが、すぐにスマホを取り出し、画面をスタッフに見せた。
「予約しました藤阪です、たしかこのQRコードが必要なんですよね?」
「それでは、こちらの機会にかざして頂いてもよろしいでしょうか?」
スタッフが出してきた読み取り機にスマホの画面をかざすとピロリンと軽快な音が鳴りだした。
「確認できました、藤阪様2名でよろしいでしょうか?」
「はい、そうです」
「それではお席までご案内いたします」
スタッフに案内され、店の奥へと進んでいく。
店内はDPシリーズのメインテーマが流れていたり、作品に登場した武器や防具のレプリカが飾られていた。
非売品だが、撮影にご利用くださいと看板が立てかけられていた。
後で写真を撮るのもいいかもしれないな。
「お待たせいたしました、こちらの席になります」
案内されたのは、2人用の席で、正方形のテーブルを挟むように背もたれの長い椅子が置かれていた。
「姫島さん、奥どうぞ」
「ありがとうございます!」
姫島さんは奥の椅子へ向かうとゆっくりと椅子を引いて座っていく。
それに合わせるように俺もすわっていった。
ほぼ立ちっぱなしだったので、座った瞬間一気に疲れが押し寄せてきた。
「メニューはこちらになりますので、決まりましたらお呼びください」
スタッフは俺と姫島さんにメニューを渡してから、一礼して去っていった。
「いつの間に予約してたんですか?」
スタッフの姿がなくなると、姫島さんが話しかけてきた。
「帰ってから場所を探すのにネットで見てたら予約が必要ってテキストを見つけたんだよ。 すぐ電話したらちょうどよくこの時間にキャンセルが出て予約できたんだよ」
「そうだったんですね、ありがとうございます……」
姫島さんは申し訳なさそうな顔でこちらに頭を下げていた。
「別に大したことしてないから、それよりも注文しちゃおうか」
メニューを開き、彼女にも見れるようにテーブルの上に置いた。
「『デンジャラスミミックの舌』だって、気になるからこれ頼もうかな」
俺は目についた商品の画像を指差すと姫島さんも注文したいものをじっくりと探していた。
「あ、私はこれ頼みたいです!」
そう言って姫島さんは商品の画像を指さしていた。
「『だ、ダークスッピーの黒胡椒炒め』!?」
「そうですよ、イベントで戦った時に何度もやられたので、ここで雪辱を晴らします!」
「ふっふっふー」としたり顔で笑う姫島さんを見て、DOPのイベントの時にイリスがものすごく腹を立てていたことを思い出したのだった。




