第17話 今度こそデートですか? いえ、お出かけです
「藤阪さん、明日予定ありますか?」
誰もが待ち望んだ金曜日の放課後、カバンを持って帰ろうとしていると姫島さんが声をかけてきた。
「空いてるよ、どうかしたの?」
「では、明日一緒に行って欲しいところがあるんです!」
やや興奮気味に大きな声を上げながら、自身のスマホをこちらに向ける姫島さん。
残っていたクラスメイトたちの視線を感じつつも彼女のスマホの画面を覗き込む。
「そういや、コラボカフェやるの明日だっけ、放送みてたのにすっかり忘れてた」
姫島さんのスマホ画面にはDPシリーズのコラボカフェのペー図が表示されていた。
DPシリーズは元々コンシューマー機にてシリーズが出ており、俺たちがやっていたのはオンライン版だ。
先週の終わりに、話題になっていたリメイクが発売記念としてコラボカフェを開催すると公式の生放送で発表されていた。
「俺も気になってたし、行こうか!」
俺が答えると姫島さんの顔がパーっと明るくなっていた。
そして毎度の如く、こちらに体を寄せてきた。
「近いから! ってか場所わかる?」
「調べてみたんですけど、わからなかったんです……」
「ちょっと、スマホ貸して」
姫島さんからスマホを借りて、ページをスライドしながら場所が記載されている箇所を探す。
ゆっくりスライドをしながら探していくうちに地図らしきものを発見した。
「随分遠いな……」
ページに書かれていたのはアニメやゲームなどのサブカル文化発祥の地とも言える場所だった。
俺の家どころか、姫島さんの家からでも1時間以上はかかるだろう。
「ちなみに姫島さんこの駅に行ったことある?」
「ないです。だからちょっと楽しみでもあるんですよ!」
彼女の顔を見るだけでも楽しみなのが受け取れた。
ちなみに俺は中学の頃に一度だけ友人たちと行ったことがあるぐらいだ。
興味本心でメイドカフェに行って雰囲気に慣れず、1時間もしないうちに店を出たのだが。
「店は10時からだから、こっちは9時ぐらいに隣の駅に集合しようか」
隣の駅なら姫島さんが乗り換える駅だし、そこで快速急行に乗っていくのにちょうどいい。
「9時ですね!」
姫島さんは今なら目をキラキラと輝かせることができるんじゃないかと思えるぐらい、嬉しそうな表情をしていた。
それを見ているだけで、こっちも嬉しくなってくる。
「それじゃ、明日は楽しみにしてますね!」
あの後、一緒に帰ることになり学校がある最寄り駅まで話しながら歩いていった。
改札で彼女と別れる際に嬉しそうにそう告げると自分とは反対の乗り場へと向かっていった。
「誰かと出かけるなんていつぶりだろうな……」
そんなことを考えているうちに、自分が乗る電車の到着アナウンスが流れたので、乗り場のある階段を降りていった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「おはようございます!」
眠い目を擦りながら待ち合わせ場所で待っていると、姫島さんが俺の名前を呼んでいた。
声のする方へ視線を向けると、いつもとは違う姿を見て驚きを隠せなかった。
「お待たせしました!」
俺の元へやってきた姫島さんは深く頭を下げ、すぐに姿勢を戻す。
白いブラウスに紺色のロングスカートと、アニメやゲームに登場する清楚系キャラのような服装。
肩には茶色のカバンがかけられており、まだ春先だからだろうか、手に薄手のジャケットを手にしていた。
この前は寝巻き姿を目にしたが、目にするのが制服姿なのでいつもとは違う格好に驚きはしたものの……
——一番驚いたのは彼女のスタイル。
この前も不可抗力で確認できたが、今日は白いブラウスということもありそれが顕著に出てしまっている。
「どうかしましたか……?」
何も言わない俺を見て姫島さんが不安そうに声をかけてきた。
「い、いや……何でもないよ、ちょっと驚いただけ」
苦し紛れに答えるも姫島さんは理解できなかったのか首を傾げていた。
「……少しぐらい格好気にした方がよかったかもな」
店の鏡にうっすらと映る黒のパーカーに少し色の薄れたジーパン姿の自分を見て、後悔の念に駆られていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
3番線に快速急行が到着いたします。白線の内側までお下がりください。
姫島さんと会ってから乗る電車の改札を抜けるとアナウンスが聞こえてきたので乗り場へと向かうと電車がやってきた。
……やってきたのはいいんだけど。
「すごい人ですね……」
乗ろうとしていた電車は大勢の人でごった返していた。
さすが土曜日にしてはしても多すぎだと思うけど。
しかもまだ午前中だっていうのに……。
そんなことを考えているうちに電車が停車し、ドアが開くと吐き出されるように乗客が次々と降りてきた。
結構降りたかと思ったが、電車の中にはまだまだ乗客がたくさんいた。
「……とりあえず乗るしかないか」
姫島さんに声をかけて来た電車の中に入っていく。
「姫島さん、こっち!」
できることなら座りたかったが、吊り革があるところを確保することに成功したので急いで彼女を隣に連れて来た。
「ありがとうございます、それにしてもすごい人ですね……」
「ホントだね、なんか今日あるのか?」
「あそこに何か書いてませんか?」
そう言って姫島さんが上の方を指さしていた。
「……あー、そういや朝のニュースで言ってた気がするな」
彼女が指さしていたのはドアの上にあるディスプレイ。
そこに映し出されていたのは、アイドルのコンサートの案内で、その日がタイミング悪く今日だった。
そういえば、それっぽいファンの人たちもいるような気がして来た。
「姫島さん……」
「どうしました?」
「……終点駅に着くまで覚悟決めた方がいいかもね」
ため息混じりに彼女に伝えるが、首を傾げていた。
そして、次の駅に着いた時、俺の予想は的中することに……。




