↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/56

第16話 天王寺の挑戦

「あ、藤阪さんおはようございます!」


 いつも通り教室の中に入り、席に近づいていくと来たことに気づいた姫島さんがこちらへ手を振っていた。

 鋭い視線を感じつつも小さく手を振りつつも自分の席へと向かう。

 

 「おはよう……って随分と機嫌がよさそうだね、理由はわかってるけど」


 姫島さんは輝くような笑顔で俺を見ていた。


 「昨日の夜は素晴らしい夜でした! もう天に昇るような……」

 「……それは流石に大袈裟な気がするけど」

 「藤阪さんに勝つって言うことはそれに近いことなんですよ!」

 「って姫島さん、近いから!」


 毎度の如く姫島さんは興奮気味に体を俺の方に寄せていた。

 姫島さんがこうなっているのはいつも夜に行われていた『アケロク』の対戦で俺に勝つことができたからだ。

 彼女に取って相当嬉しいことなのだろう。

 

 そのおかげで昨日は早く寝ることができたんだけど……。

 姫島さんが風邪を治してからほぼ毎日日付変更まで相手をしていたので正直辛すぎた。


 「まだ1勝ですから、まだまだ特訓しないとですね! これからも対戦お願いします!」

 「……ほどほどにね」


 一方、一颯と彩葉の会話が盛り上がる中、一部のクラスメイトたちというと


 「何かさっき姫島さんが藤阪に昨日は素晴らしい夜とか言ってたんだけど……!?」

 「しかもその後に手に昇るようなとか言ってなかったか?」

 「あぁ……姫島さんはやっぱり別世界の人間だったのか」

 「ちくしょう、ふじさかぁぁぁぁぁぁ!」


 こんな不毛なやり取りが行われていることなど2人が知る由もなかった。


 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 

 「おっす藤阪!」


 昼休みに入り、いつも通り昼食を済ませて2人で『機神』をプレイしていると俺の前の席に座った天王寺が声をかけてきた。


 「思ってた以上にダメージでかいな……姫島さん防御バフいける?」

 「もう4段階まで上げてるのでこれ以上は無理ですね……さっき覚えたリジェレートつかってみます?」

 「たしか、自動回復するやつだよね? じゃ、それお願い!」

 「わかりました!」


 天王寺が来た時がちょうどよくボス直前だったので、相手をすることができなかった。

 

 「悪い、手が離せないから待っててくれ」

 「……べ、別に悲しくなんてねーし」


 目の前で天王寺が自身の鼻を啜る音が聞こえたが、それに気を取られてる余裕は俺も姫島さんも持ち合わせていなかった。

 苦戦しながらも目の前のボスを撃破することに成功。


 「おつかれ、姫島さんのおかげで助かったよ……」

 「藤阪さんお疲れ様でした! ……あれ?」

 

 お互いに労いの言葉を掛け合っていると、姫島さんが不思議そうな顔をして、目の前の天王寺を見ていた。


 「姫島さん、おひさしぶ——」

 「——えっと、どちらさまでしょうか?」


 笑顔で挨拶をしようとしていた天王寺だが、姫島さんの言葉で一瞬にして悲壮感漂う表情へと変化していった。

 小学校、中学校と同じはずなのに覚えられていないことが相当ショックだったのだろう。


 「え、えっと……同じ中学の天王寺だけど……覚えてない??」

 「ごめんなさい……中学の時はほとんど1人でしたので」


 今度は肩をガックリと落とす天王寺。

 それにしても姫島さんも容赦ないな……。


 「ま、まあいいや! これから知り合えばいいんだから! ってことでよろしく!」

 「はい、宜しくお願いします!」


 天王寺は半ばヤケになりつつもこの場を乗り切っていた。

 普通なら確実にメンタルがやられると思うけどな……。


 「で、何でここに来たかというと……!」


 天王寺はブレザーのポケットからスマホを取り出し、俺たちに画面を見せてきた。

 画面にはQRコードが表示されていた。


 「前に藤阪には話したんだけど、俺、ゲームの曲を聴くのが好きなんだけどさ」

 

 自信たっぷりに話す天王寺を姫島さんはじっくりと聞いていた。


 「そうなんですか! でも、それとこのQRコードとの関連性は?」


 首を傾げながら姫島さんが問いかける。

 

 「で、聴くだけじゃ満足できないから最近はDTMを始めたんだ」

 「DTM?」


 姫島さんに取って馴染みのない言葉だったのか、すぐに俺の方を見ていた。

 

 「Desk Top Musicの略でパソコンで曲を作ったりすることだよ」

 「初めて知りました……」

 

 姫島さんは目を大きく開けて驚いていた。

 

 「もしかして、このQRって天王寺が作った曲のアップ先か?」

 「そういうこと、ちなみにオリジナルは無理だったから、元ある曲のアレンジだけどな」

 「なるほど……」


 俺と姫島さんはスマホのカメラアプリを起動させてQRコードを読み込むと、動画投稿サイトへと接続した。

 タイトルには『DPOのメインタイトルをアレンジしてみた』と書かれていた。


 「画面タップで再生されるけど、恥ずかしいからヘッドフォンつけてから頼むぜ」


 聞いてもらえることが嬉しいのか天王寺の顔が少しニヤついていた。

 俺と姫島さんは互いにヘッドフォンをスマホに接続するとほぼ同時に画面をタップした。


 イヤホンを通じて、聴き慣れたDPOのメインテーマが流れてきた。

 使っている音が違うのか、違和感を感じるが、原曲を意識した編曲となっており個人的には悪くはなかった。


 「ど、どうだった?」


 俺がイヤホンを外すと天王寺は恐る恐る聞いてきた。


 「音が違うから違和感はあったけど、聞いていくうちに良くなった感じだな」


 俺が答えると、天王寺はホッとした表情を浮かべていた。

 その間に姫島さんが耳につけていたイヤホンを外した。


 「ひ、姫島さんど、どうだっ——」

 「まずは音をどうにかしないとダメかもしれないですね」

 「ひっ!?」


 姫島さんの言葉に引き攣った声を出す天王寺。


 「音一つでこうも変わるなんて、さすがかぎやまそういち先生は素晴らしい作曲者ですね」


 その後も間髪入れずに次々と指摘していく姫島さん……。

 話をしていくうちに天王寺は少しずつ萎れるように崩れていく。


 「姫島さん! それ以上はやめよう、もう天王寺のライフはもう0だ!」

 「う、うわぁぁぁぁぁん! かぎやませんせい申し訳ございませんでしたー!」


 色々と限界を越えてしまったのか、天王寺は大声をあげて教室から出ていってしまった。


 「かぎやませんせいを目指すならこれぐらいの指摘は必要かなと思ったんですが……」

 「……姫島さん、容赦ないね」

 

 ちなみに天王寺は昼休み終了のチャイムが鳴ると同時に、戻ってきたが午後の授業中、死んだような目をしていたことは言うまでもない。

 姫島さん、恐るべし。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


↑の☆☆☆☆☆評価欄↑をポチっと押していただけると作者への応援になります!

執筆の励みになりますので、ぜひよろしくお願いします!



↓↓↓新作投稿しました! お時間があればぜひ!↓↓↓
コミュ障ぼっち、最強剣客として無自覚にバズる〜最弱魔物を真っ二つにしただけなのにバズってしまいました。え、実はS級モンスター? いやいやご冗談を〜
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。