第14話 一颯の友達
「藤阪さんは私の初めての友達なんですから……私のことをもっと知ってほしいので!」
友達だからってそこまで言わなくてもいいんじゃないかと思ったが、彼女にとって『友達』というのは特別な存在なのかもしれない。
そういえば、小学校や中学校で仲がよかった連中はどうしているのだろうか。
中学の時はほぼ毎日、自分の家や他の家に行っては夜までゲームをずっとしていた。
だが、高校に入ったことで環境の変化もあったのだろうか、そうやって遊べる人は徐々に少なくなっていき、今では各々ゲーム以外でやりたいことを見つけていた。
——始めたバイトで可愛い子がいて、その子と会いたいからほぼ毎日シフトいれてるぜ!
——バンドでヴォーカルになって、毎日カラオケで練習してるんだ!
——レベルの高い高校に行ったから、周りについていくのにゲームしてる暇がない
中学の特に作った学年のLIMEのグループには高校生になってからも交流は続いており、高校生になって始めたことが書かれていた。
その中には……
——この前、ファッション通り歩いていたらモデルのスカウトされたんだけど、どうしたらいいと思う?
このメッセージを書いたのは俺の幼馴染。
家も近所で親同士の付き合いもあるため、気がつけば一緒に遊んでいた。
一緒にゲームもやってきた、アクションやシューティングでは試行錯誤をしながら、格闘ゲームにおいては自分に匹敵するぐらい強かった。
白熱しすぎて、時にリアルファイトにもなりそうになったが、一緒にゲームを楽しんでいた。
——この時がずっと続く物だと思っていた。
けど、中学2年の終わりになって、俺の姉から教えてもらったことがきっかけでファッションにこだわり出していった。
それによって、幼馴染は少しずつゲームから離れていったが、個人的には仕方ないと思っていた。
きっかけが周りからファッションセンスがないと言われて傷ついていたのを知っていたから……。
けど次第に……
「いつまでゲームなんかやってるの!?」
俺の部屋にやってきた幼馴染はそう言ってきた。
「ゲームは俺の趣味なんだよ、そうだ昨日考えたコンボを試したいから手伝っ——」
いつも通り、幼馴染にコントローラーを渡そうとした瞬間、コントローラーが吹き飛ばされ壁に打ち付けられていった。
一瞬、何が起きたのか理解できなかったが、手の甲にヒリヒリとした痛みがし始めていた。
「いい加減にしてよ、私たちはもう子供じゃないんだよ! 高校生になるんだからゲームなんか卒業しなよ!」
幼馴染は今にも泣きそうな顔で怒鳴り散らしていた。
「高校生になったらゲームをしちゃいけないと決まってないだろ、さっきも言ったけど俺の趣味なんだし、なんでそんなことをお前に言われなくちゃいけないんだよ!」
幼馴染の言葉にカッとなった俺は怒りを抑えることなく返した。
気がつけば互いに大声をあげて口論となっていった結果……
「もういい、一颯がゲームをやめないならここにはこないから!」
「そうかよ! 別に来てくれだなんて言った覚えはない! さっさと出ていけよ!」
「……ッ!」
俺の言った直後に頬にパチンと乾いた音が響き、徐々に痛みが生じて手で抑える。
「……一颯のバカッ!」
最後にそう告げて幼馴染は部屋から飛び出していった。
それに気づいた隣の部屋から姉が姿を見せ、色々聞かれたが怒りのあまり俺の耳に入ることはなかった。
それ以来、その幼馴染とは会っていない。
姉と同じ女子校に通っているので、姉がよく話してくれるが聞く気もなかったので、その話題になった時はすぐに部屋に行くようにしていた。
この一件から俺はゲームが好きな女はいないと思うようになった。
そのため、イリスの時もそうだし、姫島さんとゲームをしたり話をしてる時も半信半疑だった。
幼馴染の時のようにいつかはゲームから離れてしまうのだろうと……。
そんな過去があったから、彼女に俺がアッシュであることを伝えることができなかった。
でも……姫島さんなら——
「って藤阪さん聞いてますか!?」
姫島さんの大声に驚いてハッとする。
目の前には彼女の顔が映っていた。
「姫島さん……近いって」
いつもならまったく気にしないが、今日に限っていえば彼女はパジャマ姿のためスタイルがくっきりと出ているので必要以上に驚いてしまう。
……ってか、制服だと気づかなかったが、姫島さんって結構あるんだな。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ってもうこんな時間か……」
姫島さんの部屋にかけられた鳩時計の音で遅い時間であることに気づく。
「そろそろ帰らないと、姫島さんも寝ないとね」
「朝は頭痛あったんですが、いつの間にかなくなってますね! それじゃ今夜は『アケロク』を——」
「——ダメに決まってるでしょ、ぶり返したらどうするの……」
俺はため息混じりに答えると、姫島さんは嬉しそうに笑っていた。
「と、いうことは風邪が治ったらまた、対戦してくれるんですね!」
「……それならいいけど、日付変更までにしてよ」
「それはその時の状況と私の頑張り次第になりますが……」
「勘弁してくれ……」
俺は肩をガックリと落としながらそう告げる。
けど、嫌な気持ちは全くなかった。
姫島さんの部屋をでて、昭三さんときく江さんに帰ること伝えると玄関まで見送ってくれた。
その時も「またいつでもおいで」と言ってくれたのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「あれー、菜月じゃん!」
先ほどまで広がっていた茜空が真っ暗になろうとしている時間、改札で声をかけられた。
声をかけてきたのは私の先生とも言える人物だ。
「あ、カナ姉!」
彼女の姿を見かけるとすぐにそちらへと走っていく。
郁奈姉は腰まで伸びた赤みの入ったロングヘアで、昔からスタイルのいい人だ。
こんなかっこいい女性になりたいと思っているが、なかなかうまくいかない。
同じ制服を着ているのにどうしてこんなにも違うのか……
「今帰り?」
「うん、そうだよ! もしかしてカナ姉も?」
「そだよ、それじゃ途中まで一緒に歩こうか!」
「いいよー!」
改札を出てから、話しながら歩いていき、気がつけば住宅街の中へ。
カナ姉と会うのは久々だったので、お互いに起きたことなどを話していた。
基本的には最近できたコスメショップのことや、愛読しているファッション雑誌についてなど。
「ってもう家に着いちゃったよ!」
カナ姉が足を止めたのは住宅街に並ぶ、深緑の屋根が特徴的な一軒家。
入り口の門には『FUZISAKA』と書かれていた。
「あ、あのさ……カナ姉」
「うん、どうしたの?」
「……一颯、元気にしてる?」
私の問いにカナ姉は微笑んだまま何も答えることはなかった。
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