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第13話 初めての……

「ありがとうございます、これ彩葉ちゃんと藤阪さんの分ですのでよかったら召し上がってくださいね」


 昭三さんと話をしていたが、話の流れで俺が姫島さんの部屋に行くことになった。

 もちろん断ったのだが、昭三さんは「君がきたって分かれば彩葉も喜ぶ」など俺の意見を聞いてくれなかった。

 で、きく江さんを呼ぶ昭三さん。

 同じ女性であれば俺の言っていることは理解できるはず……と、思っていたが。


 「それなら、さっきお父さんが買ってきたケーキをだしましょうかね、よかったら藤阪さんも——」


 ……もしかして俺の考えがおかしいのか?

 そう思いながらも、きく江さんからケーキが2つ乗ったお盆を渡された。


 「彩葉ちゃんの部屋は2階にありますので、部屋の前に名前が書いてありますので」

 「あ……はい」


 屈託のない笑顔で言われ、断ることができなくなったので、覚悟を決めて2階へと登っていった。

 言われた通り、姫島さんのだろうと思われる部屋の扉には『IROHA』と書かれたネームプレートが貼られていた。


 「さてと、どうするかな……」


 これまでに女性の部屋に入ったことが一度もないわけじゃない。

 家には姉がいるし、用事があれば姉の部屋に入ることもある。 

 それに少し前までは互いの部屋を行き来するのもいたので、ゲームやアニメの主人公がやりそうな行動を取るつもりはない。

 もちろん、そうなるまでにはそれなりの付き合いが必要だ。

 姫島さんとは昼夜問わず話すようになったけど、まだ一月も経っていない。


 「……普通、そんな相手……しかも異性を部屋にいれようとはしないよなあ」


 部屋の前でため息を漏らす。

 

 「とりあえず、ノックだけして反応なければ戻るか」


 持ってきたお盆を一旦、床に置いてからゆっくりと扉をノックする。

 ここにいても何も聞こえないので、まだ寝ているだろう。


 「……よし、寝ているな」


 少し待って扉が開く様子もなく、中から音もしなかったので床に置いたお盆を持って戻ろうと思った瞬間。


 ガチャと音がしたと同時に目の前の扉がゆっくりと開いた。

 もちろん、扉の奥にいたのは淡いピンク色のスウェットタイプのパジャマを着た姫島さんだった。

 

 「あ……」


 姫島さんはこちらを見て目を大きく開けていた。

 なんでお前がここにいるのかと言わんばかりに……。


 「……なんで藤阪さんが???」


 ようやく出てきた言葉がそれだった。

 多分、逆の立場でも同じことを言うだろうと思いながら俺は大きくため息をついた。


 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 

 「本当にごめんなさい、まったくおじいちゃんは……!」


 あの後、姫島さんは下の階に行き、祖父母に事情を聞いたようだ。

 その間、俺は部屋の前で渡されたお盆を持ったまま立っていた。


 少しして、飲み物を持ってきた姫島さんが戻り、今は彼女の部屋の中にいる。

 もちろん、流れに任せて入ったわけではなく、彼女から俺を部屋に招き入れた。

 姫島家ってそういうことにオープンなのか……?

 以前、姉が友達を連れてきて、その中に男友達がいた時には大騒ぎしたのに。


 「ごめんなさい、ちょっと汚れてますけど……」

 「汚れてる……?」


 姫島さんの部屋は六畳ぐらいの部屋で中はベットや机、本棚が置かれていた。

 それ以外にも花が置かれたり、キャラクター物の人形が置かれたり、ごく一般的な女性の部屋といった感じだ。

 ——机の上を除けば。


 机の上は周りの雰囲気をぶち壊すほどの黒一色で固められたディスプレイやキーボード、マウスが置かれていた。

 その横にはノートタイプのPCやウイッチなどのゲーム機とコントローラーが設置されたサイドデスク。


 「どうかしましたか?」


 机の周辺がきになってしまい、気がつけないうちにじっくりとみていたようで姫島さんが声をかけてきた。


 「……いや、結構揃えてるなって」

 「それ、おじいちゃんが買ってきたものなんです」

 「……なんか納得」


 少し話しただけだが、昭三さんなら無骨な色が好きそうな感じがした。


 「あ、すみません……テーブル出しますね」


 そう言ってベッドに腰掛けていた姫島さんが立ちあがろうとしていた。

 まだ熱があるのか、少しふらついていた。


 「無理しなくていいから、言ってもらえれば俺が出すよ」

 「すみません……机の横に小さな折り畳みのテーブルがありますので」


 彼女のいう通り、机の横を見ていくと足を折り曲げるタイプの小さな机が置かれていた。

 ベッドの前に持ってきてから、足を広げ、持ってきたお盆を置いた。


 「ありがとうございます、よかったら藤阪さんも召し上がってください、ここのショートケーキとても美味しいんですよ!」


 姫島さんはそう告げると置かれたケーキを食べていく。


 「……それじゃ、いただきます」


 フォークで少し縦に切ってから食べると、濃厚なミルクかの甘味が口に広がっていく。

 彼女のいう通り、美味しいのは確かなようだ。

 そのせいもあってか、黙々と食べ続けてしまい数分で食べ切ってしまっていた。

 それは姫島さんも同じようで、彼女の皿も空になっていた。


 「私、ずっと友達がいませんでしたので……誰かを家に入れることなんてなかったんですよ」


 テーブルの上に皿を置いた姫島さんは嬉しそうな表情で話し出した。


 「実は家に来てくれたのは藤阪さんが初めてなんです」

 「……そ、そうなんだ」


 それに関しては天王寺や彼女の祖父母から聞いてはいたものの、本人目の前で知ってるとは言いづらかった。

 コソコソと周りから聞いていった感じにとれてしまっていた。


 「体調崩してなかったら、今からアケロクの対戦をしたかったんですけど」

 「……悪化するからそれだけはやめとこうか」


 俺の返答に姫島さんは少し不満そうな顔をしていた。


 「もしかしたら祖父から聞いたかもしれないですけど、小学校の時は遊ぶことが許してもらえなかったんです……でも、中学になってようやくできるようになったんです」

 

 姫島さんはそこで言葉を詰まらせていた。

 

 「辛いなら言わなくてもいいから……」

 

 耐えきれなくなった俺はそれ以上、そう伝えるが姫島さんは首を左右に振る。


 「これは藤阪さんに聞いてもらいたんです……! 藤阪さんは私の初めての友達なんですから!」


 彼女の力強い言葉を聞いた俺は彼女の言葉を黙って聞くことにした。

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コミュ障ぼっち、最強剣客として無自覚にバズる〜最弱魔物を真っ二つにしただけなのにバズってしまいました。え、実はS級モンスター? いやいやご冗談を〜
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