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未登録放送  作者: NoNaMe
13/33

聞くたびにはっきりする

 その夜、美緒から三枚目の文字起こしが届いた。


〈もう一度だけ聞きました〉


 誰の音源を使ったのか訊くと、自分の携帯電話へ残した喫茶店での録音だと答えた。イヤホンから漏れた音を録ったものだった。


 劣化した録音の、さらに劣化した複製。


〈おかえり、ではなく、私の名前かもしれません〉


 遼は電話をかけた。


「もう聞かないでください」


「水城さんは何度聞きました?」


 答えられなかった。


「聞くたびに、はっきりするんです」


「音が良くなるわけじゃない」


「分かってます。でも、前に聞こえなかったところが聞こえる」


「それは、知っている言葉を当ててるだけかもしれない」


「じゃあ、最初に聞いた母の声は、私が当てたんですか」


 美緒の声は怒っていなかった。


 本当に答えを求めていた。


「分かりません」


 遼は言った。


「分からないから、これ以上聞かないでください」


「分かりました」


 美緒は素直に答えた。


 通話が切れる直前、食器の音がした。


 遼は五枚の文字起こしを机へ並べた。


 同じ時間位置に、違う言葉が置かれている。


 違う言葉の周囲に、似た文型がある。


 同じ音を聞いたとは言えない。


 違う音を聞いたとも言えない。


 文字にした時点で、全員が似た文章へ寄った可能性がある。


 遼は比較表の下へ、その一文を書いた。


 野辺が赤ペンで囲み、余白へ記した。


〈「似た文型」を最初に示したのは誰だ?〉


 遼は答えを書けなかった。


 自分ではないと思った。


 だが、その確信を証明する記録もなかった。


【記録照会問題 02】

紗季の録音に混じった声は、沢道のどこで返事をするよう求めていたでしょうか。


答えは、本文に記された「漢数字+つ目」の形で照会端末へ入力してください。

ヒント:場所の名前ではなく、順番を示す三文字です。


正しく照合されると、複数の聞き手が残した文字起こしが開示されます。

https://nonamenonowork.github.io/narushiro-archive/

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