9
道東自動車道をゲレンデは得意げに雪煙を巻上げ帯広を目指していた、ハンドルを握る薫は慈照に聞いた。
「しかし何故帯広なのでしょうか?」
「難しい問題ですがいつもの様に滞りなく納めるまでです」
忘れていた訳ではないが改めて慈照の清め方を再確認した薫は先ずは帯広の市立図書館、カウンターにいる書士の氷像を頭に浮べながらナビを操作した、車両は帯広市郊外に敷かれる規制線を越え帯広市内へ入った通常ならば規制線内は巡回する警官がいるのだが二次被害を防ぐ為警官の姿はなかった、ただ氷像が立ち並ぶゴーストタウン、図書館の位置はナビによればかなり近くなのだが横断歩道上には氷像があり思う様に前に進めないでいた元は生身の人間である温めれば元に戻るなどないであろうが破壊して進む訳にもいかないゲレンデを傷付けるのも困ると右左折、Uターンを繰り返し一向に近付けないでいた。
「これ以上はダメですね先生、後は歩きましょう」
『氷のダンジョンはパーティを馬車から下ろした』RPGゲームであればこんな具合だろうか薫はゲレンデを道路端へ停めた、車外は雪がチラつく普段通りの冬の帯広の風景、気温は-2℃薫は後部扉へ周り慈照に付き添った、巌と裕二は道路端へ駆け出すと呑気に用を足しだした。
「昭和を思い出しますね」
慈照は2人の素行に怒っているのか感心してるのか、とりあえず薫は慈照に詫びを入れた。
「申し訳ありません先生、後でキツく言っておきます」
「いえいえ、本当に最近見掛けないので言ったまでで他意はありませんよ、さっ参りましょうか」
慈照の言葉は更に薫を困惑させるに十分だった、そしてその思考を更に逆撫でる様に巌が肩を叩くと言った。
「薫、お前もしてこいや、あの震えはたまらんで」
典型的な中間管理職の重圧をコンサルタント企業を辞め久々に味わう薫は顔をひくつかせ苦笑いを浮かべていた。
「図書館なんざいつ以来や」
「何言ってんですか兄貴、図書館に行った事なんかないでしょ兄貴が読む活字はエロ本くらいじゃないですか」
先生、今すぐこの2人を祓って頂けませんかと薫は眉間に皺を寄せていた、慈照は先頭を薄ら笑みを浮かべながら歩いていた。




