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「あかんあかん、なんやねんあれ」
巌は手を振り戻ってきた、そして中での様子を聞かせてくれた。
「裕二、お前は絶対あの中に入ったらあかんで」
「何でです兄貴」
「そりゃお前、あれやあれ」
そう言うと巌をは小指を立てた、巌の話では雪煙の中には得も言われぬ美しい女性がいたと、しかしその女性は巌の拳を躱わすでもなく受けるのだがまるで手応えがなかったと言うのだ“ホログラム”薫は考えた、怪異が害星人の支配下にあるとすればそれも十分考えられる、巌の拳は素粒子レベルまで届くのだそこに実体があれば気体であろうともダメージを与えられる、即ちそれは実体のないホログラムであると考えに至るのは当然だった。
薫達は札幌へ戻ると慈照の元、対策を練ると同時に慈照は庄崎に連絡を入れ帯広の状況と封鎖の継続を頼んだ、報道官制も敷いていたが報道はもっぱら九州の災害に掛かり切りで帯広に興味を示す事はなかった。
「そうですねぇ、もし清井君の言う通り敵が手っ取り早く国民に恐怖を植え付けたいのであればわかりやすく“雪女”でしょうね」
「しかし先生、帯広市民は氷像と化しそれを伝える事は誰も出来ませんよ」
恐怖は伝えてこそ伝播し拡がってゆく、しかしそのソースが中心から出なければそれは何もなかった事と同じ、ただ帯広の人々が凍死した痛ましい災害が発生したで終わってしまうのだ、裕二が最もらしい事を言った。
「でも向こうは僕らの事知ってるよ、現に先生は庄崎さんに連絡入れたし」
敵は怪異を使い薫達を帯広に呼び寄せ怪異と対峙させてそれを報告させる事を目論んでいたのだ、報告はリークされ小出しに漏れるだろう呪いというものは大々的に公にするより違和感程度を小出しにした方が効果は高いのだ耳にした者が自ら恐怖を膨らまし人伝に広がる、まんまと敵の術中にハマったと言う事だった。
どの道一網打尽にする迄と巌は強がっていたが前線へ復帰した慈照は複雑な展開に正直戸惑っていた“鎮める、祓う”の次元ではないこれは侵略戦争ではないかと、自分は目の前の人は救えても多くを救う救世主ではない、それどころか裕二の言う通りであれば自分は図らずして敵に助力した事になるのだと、ここら辺で自分は身を引くべきではないかと人生で初めて弱気になっていたが途中で投げ出す程人間は出来ていないとこの案件を納め進退を思案しようと頭を切り替えた。
「ではガンさんと裕二さんで雪女と対峙し私と先生でどこかにいるであろう害星人を叩く段取りでどうですか?」
「薫さん逆じゃないかな、雪女なら先生が対応できるけど連中の相手は流石にどうだろう」
「そうか、では私と裕二さんで害星人、先生とガンさんで雪女なら戦力差も解消できます、どうです先生?」
薫と裕二は意見を戦わしていた、すると慈照はゆっくり立ち上がると冷静に言った。
「いえ、どちらでもありません4人で雪女に挑みましょう、自ずと現れたのでしょう押上では」
押上では役に立たぬと害星人が焔の精霊を制裁していたそれを踏まえた慈照の案であった、怪異が害星人によるものであれば当然それは期待できるし害星人は関係なく純粋に雪女単体の行動であればそれもまた良し、ダブルミーニングの良案だった。
「ほな決まりや、薫ダウン買いにいこや」
「ガンさん、あの中に入って大丈夫なんだから要らないでしょ」
「アホぬかせ、こんな薄着でおったらアホな人と思われるやろ」
「そんな事気にする人でしたか?」
「ボクちんはこう見えて繊細なんやで」




